Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

接敵

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◆◇◆◇◆◇◆◇

 ここが……オリュンポス、外壁部。
 この浮遊神殿要塞都市、オリュンポスを覆うように形成された、円状の鉄の外壁か。

 3番隊メンバーと共に登ったその外壁の下には、渦巻く風の層と岩肌を見せた地面が広がっていた。

「落ちないように……気をつけて」

 風になびくフードを纏い、ただそこに立つイチゴ隊長を見た時、不意にかっこいいと思ってしまった。

「敵は~……いつ来るんすかね……あっし早く家帰りたいんすけど……今日は何もしたくないんすけど……」

「今日は確かに、なんか気分が乗らないわね……ツバサちゃんのケツでも見れたらアガっちゃうかも~?」

「サラッと本当に気持ちの悪いことを言わないでくれよ」



 戦っている兵士———ってのがいるそうだけど、今のところは全くもってそんなものは見えはしなかった。

 ただ、ただやはり、吹き荒れる風の音に混じって、若干ながら銃声や爆発音が流れてくる。
 ……戦いは、どこかで確実に起こっている。



 ———というか、そもそも。

「隊長。そもそも、何で俺たち……というかオリュンポスは、外敵なんかと戦ってるんですか?」





 何故だか、分からない。
 本当に何故だか分からないが、その言葉を発した瞬間、皆が一斉に息を飲んだ。

 ……そして、一拍間をおいて、隊長が語り始めた。

「…………オリュンポスと、ゴルゴダ機関は、昔、人外の討伐を専門とした……『殺生院』という名の、組織……だった。

 ……当時のリーダーの名は、刹那せつな…………と、言うらしい。

 その『殺生院』だった頃、ゴルゴダ機関は……人外、亜人らの住まう村を…………次々と根絶やしに、その痕跡すら、残さず……全てを蹂躙、してしまった。

 だからこそ、これは……人界軍、と、そして亜人の…………報復、の可能性……が、高い。……つまりは、そういう……こと」

 亜人……人間と魔族のハーフ、ってことだろ?

 ……ソレにしてはおかしくないか、敵は『人界軍』。

 名前から察するに、どー考えても人間の国なのに。

 なのに何でその国と、亜人なんかが結びつくんだ?



「……来る」

 え?
 来る……来るって、ロボットが?

「ディルとカーオは爆剣投擲用意、私とレイラとツバサは……近接戦用意、いける……でしょ?」

「……もちろん! パイルバンカーも準備オッケーっす!」

 近接戦……刀で斬りつけろってことか……!


「いくよ」

 


「サイドツー確認! 3……いや、16機、来ます!」

 先に跳び上がっていたレイラの報告———だが、なんで3機と16機を間違えるんだよ?!

「ツバサ、ぼさっとしない!……レイラ、神力を用いてできるだけ滞空時間を長くして! 落ちたら、死ぬ!」

 イチゴ隊長はいつもとは違い、どこか焦った表情で、素早く指示を出し続けていた。

 ぼさっとしない———そうだ、俺が今いるのは戦場だ、、命を賭けた戦いなんだ。




 ……その瞬間、外壁の下より、首のない、浮遊したまんまの人型の機械が姿を現す。
 その数、徐々に増加中。


 ———なら。



「敵サイドツー、散開! あっしは右をやります!」
「カーオ、ディル! 真ん中、上に行った! そっちの方はお願い!」


 
 上、右、左———なら、俺がやるべきは……


「起きてくれ、██———!」

 

 俺がやるべき敵は、下から追い上げてくる増援機だ!

「……っ!」

 地を蹴り、久方ぶりに全力で走り出す。
 右腕は、腰につけられた鞘に添えられていた。……いつでも、刀を抜けるように。

 次々と舞い上がるサイドツー各機。
 ———だが、簡単な話だ。

「撃って来ました、一斉掃射っす! めちゃくちゃやべーっす!!!!」
「止まるな、動き続けて!」


 撃ってこようと、話は同じだ。
 結局そこに浮遊しているだけなのだから、一瞬にして———ヤツらのブーストが追いつかないぐらいの一瞬で距離を詰めれば問題はない。



 足に、ほんの一瞬だけ力を込め、体を風に委ね跳び上がる。
 後はそのままだ、空中で姿勢を変える必要はない。

「うおぉぉぉぉおっ!」

 飛び上がりながら、その核を斬り裂くのみ。





 そのサイドツーを通過した瞬間、頭が下に来るように体を弧にして方向転換を図る。

 直後、真下では爆発が。
 ……できたんだ、俺。

 外敵———との戦闘だけども、俺って……通用するんだ……!!
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