189 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-レイ: 黒き変貌
しおりを挟む
「……ぅ……」
ようやく目覚めた、しかし横たわった地面には、無数の大きな血痕が。
おそらく私だ、これは私が撒き散らしたのであろう。
何せあの時、私はヘキに———ヘキの出した変質型魔力障壁にて、その身体の大部分を貫かれ、蜂の巣にされたのだから。
じゃあ、なぜ生きているのか。
「黒……騎士、か」
自らの、黒く変質してしまった右手を見上げた時に確信したのだ。
この身体は、黒騎士のモノとして置き換わり始めている、と。
右手だけには、掌の面以外が黒く染まっていた事以外にこれと言った変貌点は無かったが、驚いたのはその右腕に目をやった瞬間である。
「———棘……?」
まるで鱗のように、右腕外部の至る所に生えてきていた黒き棘。
まさに、黒き甲冑の如く。
脚に目をやっても同じだった、服をも貫通して、黒き棘が鎧のように連なっている。
顔がどうなっているかなど見たくもなかった、触った感じ、形状的な変化は無さそうだが。
そうだ、私はその概念ごと『レイ』という者から『黒騎士』という最悪の敵に置き換わってきているのだ。
いつ私が、この力に呑まれるか分からない。
いつ私の意識が消え失せ、黒騎士が再臨するかも分からない。
———でも、これ以上、またとないチャンスだ。
まさか憑依概念法術の影響がここまで及ぶとは思ってもいなかったが、そんなことなぞどうでもいい。
「……やれる……この力……なら、確実に……!」
誇りを、胸に。
何者にも屈しない、魔王軍との戦火の中にあっても自由を追い続けたのが、我ら人界軍だ。
ならばその誇りを、ライから受け継いだあの誇りを胸に、私はもう一度立ち上がる。
「……っ!」
例え夢だろうと関係ない、押してもらった背中を、さらに前へと押し進めるだけだ。
目をやった右側には、サイドツーの銃撃に、ただ歩き続けるだけで拮抗しているヘキの姿が。
———が、サイドツーはその左腕だけ破損し消失していた。
……今の私と同じだ。
「ヤンスっ!……聞こえる?!」
『……いや、なんで生きてるんでヤンスかあっ?! どうすりゃいいでヤンスか、俺はもうこれ以上保ちそうにないでヤンスよ?!』
サイドツーのスピーカーの音声が、暗き部屋一帯に響き渡る。
「……じゃあ……その機体、この私に寄越して!」
『…………っ、いいでヤンス……けど、どうやって……?』
「どうやって私が乗るか?…………大丈夫よ、私はアイツにとって、いる事すら気付かれないぐらい存在が薄いようだからねっ!」
……とは言ったものの、今のはただの煽り文句。
乗る方法なんてたった1つ。
———強行突破のみに決まってる……!
たった一瞬、具体的な敵の行動など予測もつかないまま、それに対する何の対策も取らずに隙を晒す事になるが———、
それでも、このまま停滞するよりかは、幾分マシだ———!
ようやく目覚めた、しかし横たわった地面には、無数の大きな血痕が。
おそらく私だ、これは私が撒き散らしたのであろう。
何せあの時、私はヘキに———ヘキの出した変質型魔力障壁にて、その身体の大部分を貫かれ、蜂の巣にされたのだから。
じゃあ、なぜ生きているのか。
「黒……騎士、か」
自らの、黒く変質してしまった右手を見上げた時に確信したのだ。
この身体は、黒騎士のモノとして置き換わり始めている、と。
右手だけには、掌の面以外が黒く染まっていた事以外にこれと言った変貌点は無かったが、驚いたのはその右腕に目をやった瞬間である。
「———棘……?」
まるで鱗のように、右腕外部の至る所に生えてきていた黒き棘。
まさに、黒き甲冑の如く。
脚に目をやっても同じだった、服をも貫通して、黒き棘が鎧のように連なっている。
顔がどうなっているかなど見たくもなかった、触った感じ、形状的な変化は無さそうだが。
そうだ、私はその概念ごと『レイ』という者から『黒騎士』という最悪の敵に置き換わってきているのだ。
いつ私が、この力に呑まれるか分からない。
いつ私の意識が消え失せ、黒騎士が再臨するかも分からない。
———でも、これ以上、またとないチャンスだ。
まさか憑依概念法術の影響がここまで及ぶとは思ってもいなかったが、そんなことなぞどうでもいい。
「……やれる……この力……なら、確実に……!」
誇りを、胸に。
何者にも屈しない、魔王軍との戦火の中にあっても自由を追い続けたのが、我ら人界軍だ。
ならばその誇りを、ライから受け継いだあの誇りを胸に、私はもう一度立ち上がる。
「……っ!」
例え夢だろうと関係ない、押してもらった背中を、さらに前へと押し進めるだけだ。
目をやった右側には、サイドツーの銃撃に、ただ歩き続けるだけで拮抗しているヘキの姿が。
———が、サイドツーはその左腕だけ破損し消失していた。
……今の私と同じだ。
「ヤンスっ!……聞こえる?!」
『……いや、なんで生きてるんでヤンスかあっ?! どうすりゃいいでヤンスか、俺はもうこれ以上保ちそうにないでヤンスよ?!』
サイドツーのスピーカーの音声が、暗き部屋一帯に響き渡る。
「……じゃあ……その機体、この私に寄越して!」
『…………っ、いいでヤンス……けど、どうやって……?』
「どうやって私が乗るか?…………大丈夫よ、私はアイツにとって、いる事すら気付かれないぐらい存在が薄いようだからねっ!」
……とは言ったものの、今のはただの煽り文句。
乗る方法なんてたった1つ。
———強行突破のみに決まってる……!
たった一瞬、具体的な敵の行動など予測もつかないまま、それに対する何の対策も取らずに隙を晒す事になるが———、
それでも、このまま停滞するよりかは、幾分マシだ———!
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~
こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇
戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。
そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。
◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです
◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。
誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください
◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います
しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる