187 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-レイ(過去): 信ずるモノ
しおりを挟む
「正す、救う、今はそんな事言っている場合じゃないはず……今まさに、終末を迎えようとしているこの世界を目の当たりにして、それでも貴公は……このようなくだらない内乱を続ける気か、ライっ!」
夢だからだろうか、やはり声は自由に出せない。そのくせ、たまにある症状なのだが意識だけはハッキリしている。
———結局、後の祭り。
今ごろ私が来ても、ただの傍観者、というわけか。
『…………ほお、くだらない、などとよくもまあ……貴様には解らぬか、この争いの意味が。……そんなことなど、我が小隊の者は誰でも分かっているとも』
「…………っ!」
その言葉の意味も、今となっては痛いほど分かる。
互いのサイドツーが大きく後退する。
そう、コレは邪魔者をも全て排除した一騎討ち。
『それもそうだ、国の、我ら人類の未来を憂えぬ貴様らに何が解ろうか! 我らが愛し、我らが尽くした人界王は既に死せり! 下手な東洋の国なぞに隷属して消え失せるほど、我らの誇りは甘いものだったか?!』
「……」
『答えられぬか、近衛騎士最上位でもあったはずの貴様が、答えられぬと言うのか?! 否、そんな事は許されぬ、答えてみせよ、答えてみせよ近衛騎士、レイ・ゲッタルグルトォッ!!!!』
「…………違う」
虚しい会話だった、と今になれば思う。
「違うとも、断じて———そうではない。……魔の手にも打ち勝った我ら人界軍、その誇りは永久に燃えゆく火之迦具の残照として民を照らし出す。……そのようなもので消え失せる誇りなどでは、断じてありはしない……!
…………しかし、我らは———このレイは、人界王と共に歩むことを魂にも刻んだ身!……例え貴公を、魔族を、人類を裏切ろうとも、我が主を裏切る事は決して、決してできはしない!
———だから私は、この誇りを胸に……そして貴公の屍を越えて、自らのやり方で国を正す!
だからこその介錯の一刃、王の剣たるこの一撃にて、王に仇なす一切合切全てを、そして人類の誇りとやらを歪曲させ、外道に走る輩を斬り伏せてみせる!
———来るがいい、近衛騎士、ライ!……貴公の誇りは、己が胸に押し留める!」
『火之迦具の誇り、か…………ならばこちらも容赦はせん、覚悟せよ……っ!』
そうだ、この言葉。
覚悟せよ、その言葉をも、私の本来の胸の内に向けられた言葉だった。
何せ、その言葉は、貴公———彼女がここで死ぬという事実を暗に示しているからだ。
思えば、私は変に本気だった。
あちらがその誇りとやらを大衆に目覚めさせる為に、トランスフィールドの掌で転がされる事も承知で叛逆に踏み切ったと言うのに。
「はぁぁぁぁぁあっ!!!!」
『だぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!』
その刃は、見事に。
敵機———に、深々と。
『ここで散り行くは……我が運命』
まるで最初から、何もかも分かっていたかのように、彼女はそう言い放つ。
『登る朝日———もう2度と見ることが叶わんとは、虚しいものだ』
「……さらば、誇りを胸に持つ騎士よ。……後はこちらに任せろ」
『せめて、仄かに燃え上がる灯火とならんことを祈って———』
夢だからだろうか、やはり声は自由に出せない。そのくせ、たまにある症状なのだが意識だけはハッキリしている。
———結局、後の祭り。
今ごろ私が来ても、ただの傍観者、というわけか。
『…………ほお、くだらない、などとよくもまあ……貴様には解らぬか、この争いの意味が。……そんなことなど、我が小隊の者は誰でも分かっているとも』
「…………っ!」
その言葉の意味も、今となっては痛いほど分かる。
互いのサイドツーが大きく後退する。
そう、コレは邪魔者をも全て排除した一騎討ち。
『それもそうだ、国の、我ら人類の未来を憂えぬ貴様らに何が解ろうか! 我らが愛し、我らが尽くした人界王は既に死せり! 下手な東洋の国なぞに隷属して消え失せるほど、我らの誇りは甘いものだったか?!』
「……」
『答えられぬか、近衛騎士最上位でもあったはずの貴様が、答えられぬと言うのか?! 否、そんな事は許されぬ、答えてみせよ、答えてみせよ近衛騎士、レイ・ゲッタルグルトォッ!!!!』
「…………違う」
虚しい会話だった、と今になれば思う。
「違うとも、断じて———そうではない。……魔の手にも打ち勝った我ら人界軍、その誇りは永久に燃えゆく火之迦具の残照として民を照らし出す。……そのようなもので消え失せる誇りなどでは、断じてありはしない……!
…………しかし、我らは———このレイは、人界王と共に歩むことを魂にも刻んだ身!……例え貴公を、魔族を、人類を裏切ろうとも、我が主を裏切る事は決して、決してできはしない!
———だから私は、この誇りを胸に……そして貴公の屍を越えて、自らのやり方で国を正す!
だからこその介錯の一刃、王の剣たるこの一撃にて、王に仇なす一切合切全てを、そして人類の誇りとやらを歪曲させ、外道に走る輩を斬り伏せてみせる!
———来るがいい、近衛騎士、ライ!……貴公の誇りは、己が胸に押し留める!」
『火之迦具の誇り、か…………ならばこちらも容赦はせん、覚悟せよ……っ!』
そうだ、この言葉。
覚悟せよ、その言葉をも、私の本来の胸の内に向けられた言葉だった。
何せ、その言葉は、貴公———彼女がここで死ぬという事実を暗に示しているからだ。
思えば、私は変に本気だった。
あちらがその誇りとやらを大衆に目覚めさせる為に、トランスフィールドの掌で転がされる事も承知で叛逆に踏み切ったと言うのに。
「はぁぁぁぁぁあっ!!!!」
『だぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!』
その刃は、見事に。
敵機———に、深々と。
『ここで散り行くは……我が運命』
まるで最初から、何もかも分かっていたかのように、彼女はそう言い放つ。
『登る朝日———もう2度と見ることが叶わんとは、虚しいものだ』
「……さらば、誇りを胸に持つ騎士よ。……後はこちらに任せろ」
『せめて、仄かに燃え上がる灯火とならんことを祈って———』
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~
こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇
戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。
そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。
◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです
◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。
誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください
◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います
しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…




サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる