Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
上 下
182 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-レイ: 予期せぬ———

しおりを挟む
*◇*◇*◇*◇

 同時刻。
 オリュンポス内βポイント、ある通路から入った大部屋にて。

『不死身……でヤンスか、コイツは!』

 鳴り渡る幾重の銃声。
 響き轟くは巨体の脚音。

『残り弾数———』
『んああっもういいでヤンス! こうなったら———!』

 ……と、場を駆け巡っていたヤンス機のサイドツーが一瞬動きを止め、背から何やら刃を取り出す。

 取り出した剣———回転刃剣は、取り出した瞬間、サイドツーとの接着点が無くなった直後に回りだす。

『接近戦でやってやるでヤンスよぉぉぉおっ!!』

 その刃をもって、サイドツーはソレに対して斬りかかる。が。





「そんなもので———そんなおもちゃで、この私を倒せるとお思いですか?」

 そう、斬りかかってはいた、確実に刃は当たったのだ。のだが。


『刃が……止まっている……でヤンスか……?』

 その刃は、茶色のフードに包まれた男の脳天にて、完全に静止していた。
 始まったばかりの刃の回転も、確実に止まっていた。

「———では、さようなら。どなたかご存じではありませんが、名前を聞く必要は———」
「やあああああっ!!!!」

 あまりの衝撃に耐えられず飛び出してしまった。



『レイさん、隠れておくって言ったでヤンしょう?! 俺の事は見捨てて隠れとくって———』

「今はそんな事———どーだっちゃいいのよ!……とにかくコイツを殺す、ソレが今の目標なんだからあっ!」

「おやおや、乱暴ですねぇ……」


 しかし、私が全力で振りかざしたも———このザマ。

「何よこの『千断村正』、『千に勝る全てを断つ』がコンセプトじゃなかったっての?! それにしちゃああまりにも……斬れなさすぎじゃない?!……っつーか、アンタ誰よ!」

「私———私ですか、そうですね、そろそろ明かしておかねばなりませんか」

 そう告げると男は、何事も無かったように一歩下がり、そのフードを投げ捨てた。




「うっっっっっっそ、でしょ……? だってアンタ……私たちが殺した———はずでしょ?!」
『レイさんコイツ知ってるんでヤンスか?!』

 


「———そう、ですとも。確かに私はあなた方に一度、殺された。消し炭、とまでは行かずも、上半身はボロボロ。脳天から肋まで、ゴッソリと持っていかれましたとも。、ね」

 絶対に、見るはずのない顔であった。

「なぁんで生きてんのよ、っ!」

『ヘキ……?……結局コイツ誰なんでヤンスかっ?!』

「……殺戮や強奪を繰り返した暴力集団、カーネイジ。……その幹部だった魔族よ、私たちの手で焼き払ったはずだけどねっ!」

 断崖絶壁の異名———皮膚の硬さなのかは分からないが、圧倒的な硬さ———もとい防御力を誇った敵であり、生物として成り立っているのかすら分からない魔族、それがこのヘキなのだ。

 最後までその正体は分からずじまい、そのまま終わるかと思いきや、まさかこんなところで出てくるなんて。



「なんで生きているのか、ですか……救ってもらったのですよ、ある赤髪の女にね」

『じゃあ残念だったでヤンスね、その命、今日ここで俺たちが奪うでヤンスよ、俺たちの前に立つと言うのなら、でヤンスがね!』

「もちろん、この私もあなた方を木っ端微塵に吹き飛ばすつもりで望みますよ、容赦などハナから、する気はありませんので」


 ……そう、こっちも時間なんてないし、早めにケリをつけたいところだったし———それは好都合よ……!
しおりを挟む
感想 203

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~

こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇ 戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。 そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。 ◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです ◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。  誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください ◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います  しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...