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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-セン: 見失っていたモノ
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「…………もう、無理だ…………僕じゃアイツに勝てなかった、僕の全力じゃあ…………手も足も出なかった……それに、また、また僕は……油断した、油断したんだ……ケイが死んだあの日から、もう僕は油断しないって誓ったはずなのに…………!!!!」
ケイ。
ケイ・チェインズ。元々、僕の隊の下で働いていた、優秀な子だった。
……死んだんだ。
オリュンポス突入作戦、第二次真珠海作戦こと———オペレーション:ヴェンデッタにて。
「ならば———ならば、貴様は立て、立つべきだ」
「……もうダメなんだ、どうせ……僕1人じゃ、何も出来やしない、何も守れやしない……すぐに調子に乗って、こんなんじゃまた、また護るべき人を…………僕が殺して———!」
「…………黙れ、黙れ黙れ黙れっ!…………貴様が、貴様がここに来てその言葉を口にするか、セン!」
無理なんだ、どれだけ励ましたって、多分今の僕には何も出来やしない。
もう、だめなんだ。
僕1人では何も出来ないって気付いた時から、僕に隊を持つ権利なんて無かったんだ。
あの時だって———オリュンポス突入作戦の時だってそうだった、たった1つの僕の油断と、僕の慢心と、僕の弱さのせいで……第0機動小隊は僕を残し全滅した!
そして残ったのは……隊長だった僕だけ。
思い出してしまった、また油断してしまった、今と過去、2つをつなぎ合わせて考えてしまった!!!!
……だから、もうダメなんだ、僕に戦う気力は残ってない。
恐れじゃない、絶望じゃない、もう戦いたくなかったのだ。
……ああ、いつまでも誰かの下にいれたなら良かったのにな。
こんな、戦場にほとんど立ったことのないヒヨっ子が上に立ったから———第11小隊は全滅したんだ、僕のせいだ、全部全部僕のせいだった!
叶うならば、もう一度———貴方の背中を憧れていた頃に戻してほしい。
罪を犯す前の時間にまで巻き戻してほしい。
……なぜならば、僕はあの日の犠牲から何も学ぶことができなかったから。
あの日、油断はしないと、確かにそう誓ったはずなのに。
それなのに、結局僕はまた油断して、また勝てるチャンスを棒に振ったのだから。
だから、もっと過去から学べる人に行かせた方が良かったんだ、僕が行ったって何一つメリットはなかった。
どうせ次に戦ったってこうなる、油断してすぐに負けるんだ、今までたまたま負けた事がなかっただけで、今度こそは確実に僕は死ぬんだ。
だからもう嫌だ、僕は立ちたくない、もう2度とこんなところには———。
「…………セン!……貴様が今立っているここは、戦場だ!……いつまで作戦開始前のブリーフィングの気分になっている!……貴様がするべき事はただただ勝利への道を模索する事じゃないのか、違うのか?!」
「もう…………だから、僕は……どうせ無理なんだ、僕が勝てないんだ、イデアさんだって———2人でやったって勝てるかどうか……」
「……愚か者め。……そんなことは関係ないだろう。……あの者たちの、死に行った英霊たちの記憶を、想いを継いでいくと、突入前に誓ったはずじゃないのか、貴様は!」
「う……」
「貴様は仲間の死から何も学ばなかったのではない、ただそれを活かせなかっただけだ。
……だから次、次にちゃんとできるようにやればいいのみだ。……だからと言って、貴様はこの場から逃げ出すか?
……この戦場から、逃げ出すつもりか? 貴様の仲間———第0機動小隊が、誰1人逃げ出さずに命を託していったと言うのに、貴様はここで逃げて、全てを投げ出すつもりか?」
「誰1人逃げ出さずに……?……嘘を言うな、僕が、僕が逃げただろ?!
……あの時逃げたのは僕だ、目の前に迫り来る絶望から逃げようと必死にもがいたのは……僕なん———」
「ならばその貴様がここで全てを投げ出すのかと聞いているんだ! かの者らの意思に背くつもりか、隊長の分際で!
ロクな絶望も味わった事もないくせに……!」
「……なん……だと……!」
「ああそうだ、貴様はまだ絶望のドン底を味わってはいないだろう?!……アレンの———白の味わった苦しみ、痛み、怒り、恐れ、恨み……今の貴様にとってこれがどれだけの苦痛だったか、分かるか?……俺も想像できん、想像などしたくもない!
だがな……貴様は白からも教えを貰っただろう、あの過去の絶望と苦しみを乗り越えた白から、貴様は勇者とは何かについて教わったはずだろう?……だから立て、立つんだ……!」
「う……ふ……ぐ……!!」
「いつまでも気に食わんガキだ……貴様の気の持ちようでなんとでもなる問題だろう、くだらん事に時間を使わせやがって!」
「うぅ……ああぁ……!」
「泣いたって仕方がないだろう、立て!……立って、立って、泥臭く勝利への最適解を見つけ出す!
……俺が教えた勝利への道筋はどこへ行った、ヴォレイと戦った時の力は、貴様のほと走る溢れんばかりの想いはどこへ行った、セン!!!!」
「……ぐ……僕は、僕は……!」
「俺は白から、ヤツからもう1つ教わった事がある……それは協力することの意義だ、貴様の持った隊のように、誰かと一緒に何かに尽力すること、その意義と重要さをな……。
だからこそ俺は今、こうして貴様に喝を入れているんだ、貴様に期待しているからこそ……その行動だ……!」
「期待、なんて……しない方がいいんです、僕なんかには何も護れ———」
「貴様は護った!
……何千、何万、何十万とある王都民、人界軍の命を!
唯一の親友を! 愛すると決めた妻を!
俺を、黒を、アレンを、サナを!
そして……散りゆく小隊共の———誇りを!
だから立て、貴様は立て、もう一度だけでもいいから…………いいから……立ってくれ!」
「……………………………………」
ケイ。
ケイ・チェインズ。元々、僕の隊の下で働いていた、優秀な子だった。
……死んだんだ。
オリュンポス突入作戦、第二次真珠海作戦こと———オペレーション:ヴェンデッタにて。
「ならば———ならば、貴様は立て、立つべきだ」
「……もうダメなんだ、どうせ……僕1人じゃ、何も出来やしない、何も守れやしない……すぐに調子に乗って、こんなんじゃまた、また護るべき人を…………僕が殺して———!」
「…………黙れ、黙れ黙れ黙れっ!…………貴様が、貴様がここに来てその言葉を口にするか、セン!」
無理なんだ、どれだけ励ましたって、多分今の僕には何も出来やしない。
もう、だめなんだ。
僕1人では何も出来ないって気付いた時から、僕に隊を持つ権利なんて無かったんだ。
あの時だって———オリュンポス突入作戦の時だってそうだった、たった1つの僕の油断と、僕の慢心と、僕の弱さのせいで……第0機動小隊は僕を残し全滅した!
そして残ったのは……隊長だった僕だけ。
思い出してしまった、また油断してしまった、今と過去、2つをつなぎ合わせて考えてしまった!!!!
……だから、もうダメなんだ、僕に戦う気力は残ってない。
恐れじゃない、絶望じゃない、もう戦いたくなかったのだ。
……ああ、いつまでも誰かの下にいれたなら良かったのにな。
こんな、戦場にほとんど立ったことのないヒヨっ子が上に立ったから———第11小隊は全滅したんだ、僕のせいだ、全部全部僕のせいだった!
叶うならば、もう一度———貴方の背中を憧れていた頃に戻してほしい。
罪を犯す前の時間にまで巻き戻してほしい。
……なぜならば、僕はあの日の犠牲から何も学ぶことができなかったから。
あの日、油断はしないと、確かにそう誓ったはずなのに。
それなのに、結局僕はまた油断して、また勝てるチャンスを棒に振ったのだから。
だから、もっと過去から学べる人に行かせた方が良かったんだ、僕が行ったって何一つメリットはなかった。
どうせ次に戦ったってこうなる、油断してすぐに負けるんだ、今までたまたま負けた事がなかっただけで、今度こそは確実に僕は死ぬんだ。
だからもう嫌だ、僕は立ちたくない、もう2度とこんなところには———。
「…………セン!……貴様が今立っているここは、戦場だ!……いつまで作戦開始前のブリーフィングの気分になっている!……貴様がするべき事はただただ勝利への道を模索する事じゃないのか、違うのか?!」
「もう…………だから、僕は……どうせ無理なんだ、僕が勝てないんだ、イデアさんだって———2人でやったって勝てるかどうか……」
「……愚か者め。……そんなことは関係ないだろう。……あの者たちの、死に行った英霊たちの記憶を、想いを継いでいくと、突入前に誓ったはずじゃないのか、貴様は!」
「う……」
「貴様は仲間の死から何も学ばなかったのではない、ただそれを活かせなかっただけだ。
……だから次、次にちゃんとできるようにやればいいのみだ。……だからと言って、貴様はこの場から逃げ出すか?
……この戦場から、逃げ出すつもりか? 貴様の仲間———第0機動小隊が、誰1人逃げ出さずに命を託していったと言うのに、貴様はここで逃げて、全てを投げ出すつもりか?」
「誰1人逃げ出さずに……?……嘘を言うな、僕が、僕が逃げただろ?!
……あの時逃げたのは僕だ、目の前に迫り来る絶望から逃げようと必死にもがいたのは……僕なん———」
「ならばその貴様がここで全てを投げ出すのかと聞いているんだ! かの者らの意思に背くつもりか、隊長の分際で!
ロクな絶望も味わった事もないくせに……!」
「……なん……だと……!」
「ああそうだ、貴様はまだ絶望のドン底を味わってはいないだろう?!……アレンの———白の味わった苦しみ、痛み、怒り、恐れ、恨み……今の貴様にとってこれがどれだけの苦痛だったか、分かるか?……俺も想像できん、想像などしたくもない!
だがな……貴様は白からも教えを貰っただろう、あの過去の絶望と苦しみを乗り越えた白から、貴様は勇者とは何かについて教わったはずだろう?……だから立て、立つんだ……!」
「う……ふ……ぐ……!!」
「いつまでも気に食わんガキだ……貴様の気の持ちようでなんとでもなる問題だろう、くだらん事に時間を使わせやがって!」
「うぅ……ああぁ……!」
「泣いたって仕方がないだろう、立て!……立って、立って、泥臭く勝利への最適解を見つけ出す!
……俺が教えた勝利への道筋はどこへ行った、ヴォレイと戦った時の力は、貴様のほと走る溢れんばかりの想いはどこへ行った、セン!!!!」
「……ぐ……僕は、僕は……!」
「俺は白から、ヤツからもう1つ教わった事がある……それは協力することの意義だ、貴様の持った隊のように、誰かと一緒に何かに尽力すること、その意義と重要さをな……。
だからこそ俺は今、こうして貴様に喝を入れているんだ、貴様に期待しているからこそ……その行動だ……!」
「期待、なんて……しない方がいいんです、僕なんかには何も護れ———」
「貴様は護った!
……何千、何万、何十万とある王都民、人界軍の命を!
唯一の親友を! 愛すると決めた妻を!
俺を、黒を、アレンを、サナを!
そして……散りゆく小隊共の———誇りを!
だから立て、貴様は立て、もう一度だけでもいいから…………いいから……立ってくれ!」
「……………………………………」
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