Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-セン: 一触即発(一触既発)

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 そうか、この男が———ゴルゴダ機関、その元締め———!


『つまり、あなたを倒した先の道は、機神へと繋がっている、と』

「———知りたいのならば、我が身を打ち砕き後試してみよ。もはやこちらも後へは戻れぬ。……手駒を、な」

「やはりゴルゴダ機関隊員をロストに使っていたか———全く、どこまでも気色悪いヤツらだ」

 ———場の空気が、鉄のように冷たく重く変貌する。
 それは誰かの覇気ではない、あの男———レインの重圧なのだ。

 眼前にてただ有るだけで、そびえ立つ山の如き威圧を放つ男。
 その覇気だけでも気絶してしまいそうなほどに、僕たち2人はそれに気圧されていたのだ。

 ……と。

「さあて……どうする?……貴様らは我が主に逆らった身———抗いには贖いを、どのような方法でその罪を拭う、人類よ?」

 

「どのような方法———そうだな、ちょうど俺も、どのような方法で貴様を嬲れば、機神への道を聞けるか模索していたところだ」

 イデアさんが———その口で反撃し始める。

「話がまるで噛み合っていないではないか、やはりマトモに意思疎通も叶わぬ野蛮な下等生物、東大陸のゴミ溜めが貴様らにはお似合いだ。

 ……もっとも、貴様らの首は全て、我が主へと捧げるのだが」


「同じ人間、本質的にはどこも変わらんと言うのに———機神らに植え付けられた優生思想によって、自分らの方が上だと思い込んで驕り高ぶりやがって……どこまでも傲慢で滑稽で、自分勝手なスィナー原罪人だよ、貴様らは」

「我が身体は既に魂の枷を越え、神への道へと至った聖体。……傲慢で滑稽とは、その神への道も侮辱することになるが———」

「ならばますます滑稽じゃないか、神への道へと至った誰かさんが、こんなゴミ溜めのカスとまともに話し合ってくれるとは!……どこまでも滑稽だ、呆れすぎて笑いも起きん」

「なぁらば殺り合うか、下等生物に相応しい敗北の道を、貴様には未来永劫見せ続けてやろうとも。

 貴様の首はお預けだぁ、なぜなら貴様はこの戦いにて敗北を期し、永遠にロストとして生き地獄を味わい続けるからだ……!」

「……っふ、ふはは、ははははははっ!!……ならばこちらも同意見だ、貴様のようなヤツとソリが合うなどとは俺ながら腹立たしいが……それでも貴様とはとことん殺り合いたい!

 一切合切全て確実に殺し切ってやるぞ、プリーストっ!!!!」

 気圧されていたのは、僕だけだったらしい。

 一触即発、そんな状況はたった今終わりを告げた。

「……セン!……俺は久々に血が激ってきた!……勝手に暴れさせてもらうぞ……!」

『いやいやいや、勝手に暴れ回って勝てるような相手じゃないでしょうアレ……!』

 さっとサイドツーの肩より飛び降りたイデアさんは、次の瞬間既にレインの爆剣と拮抗していた。

「ぎぃ……!」

 ———がしかし、組み合っているイデアさんの背後より迫り来る『』が。



『C-キャノン、次弾装填、砲身冷却完了』


 Cキャノンと魔力式伝道接続されたサイドツーの、その操作系より漏れ出す機械音声。
 ———がしかし、概念弾は使わない。
 操作系を少しばかり弄り、簡易換装の用意を進める。

『C-キャノン、自動小銃形態へ移行』

 わずか2秒。
 その間にも、イデアさんの背後よりには影が未だ有る。

『残り弾数:30』だのと曰う機械音声、次秒でディスプレイ上には、円状の残弾数表示が現れる。
 煙で敵が見えない———そんな些細な問題も、サーモグラフィーカメラで既に克服済だ。


 無駄な迷いはいらない、必要とあらば———イデアさんだって切り捨てる。

 だが、最善は尽くす。これはイデアさんがそれを察知するだろうと踏まえての攻撃だ。
 何の躊躇いもなく、その引き金をそっと引く。
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