Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

月天使徒殲滅制圧用最終機神兵器・███

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「…………なあ」

 暗がりの道を進み続け、開けた部屋に出た直後、俺はニトイに問うた。

「…………俺は、どうすればよかったんだ……? あれで、あんな結末で、俺はよかったのか?」

「…………ちがう、…………違う、の、ニトイが……ニトイが全部悪くて…………全部……ぜんぶぅ、ニトイの……わがままで!!」

「………………だったら、そろそろ教えてくれ。お前は、お前は、本当は誰なんだよ」


 結局、疑問だった。
 機械だってことは、もう既に分かっていたが。

 ニトイがやはり、俺の記憶を奪った張本人だからこそ。

 なぜニトイが俺から記憶を奪ったのか、どうやって奪ったのか、何をする気だったのかを、聞くべきだと。




「…………ニトイ、にも、分からない…………けど、今、の、ニトイは……封印、してる」


「………………何を封印、してるんだ」
「記憶。自分自身の、ニトイの、記憶。ツバサ……白の記憶、も、ここで封印……してた」



 だったら教えてくれ、と告げようとした瞬間。
 ニトイはついに、その名を口にした。



「……



 …………機神、だった。
 その名は、やはり———機神の一柱の名であった。

 機神アテナ———その名が指し示すことは、この……ニトイが、機神ゼウスの娘だ、という事のみであった。

 感情を持った機械、など、ヒトの心を埋め込まれた機械コックか、機神しか存在しないというのなら、もうニトイの正体もある程度掴めていた。

 ……その、通りだった。


「わ、私、は……機神……アテナ……!」
「じゃあ……じゃあ何だよ、機神ともあろう者が、私利私欲の為に俺の記憶を奪ったってのかよ……!」

 木刀の柄をその胸に押し付け、ニトイを壁に叩きつける。

 ……違う、もうニトイなんかじゃなかった。

「ニトイ、は………………ちがう、アテナ……は、私は……何を、したくて……!」

「なあ、答えろよ……結局のところ、お前は何がしたくてこんなことを引き起こしたんだよ! なあ、教えてくれ……教えてくれよ、アテナっ!!」


********


 嫌、だった。
 ツバサ……白に、愛した女ニトイでもない、その名で呼ばれるのは。





 私は、永遠を生きてきた。

 1万年前……いいや、きっとそれ以上前の、気の遠くなるほど昔から生きてきた私にとって、もはやこの世界は退屈でしかなく、日常は「つまらない」で溢れていた。
 そんな私を変えたのが。

 ……他でもない、あの人。




 雪斬、宗呪羅だった。






 かつて、永遠を生きるカミに、平和の素晴らしさを説いた人間がいた。

 その者の名前は雪斬宗呪羅。
 永遠に愛され、永遠を呪う男である。
 結局のところ、オリュンポスはどうしてもアテナの為の国だった。

 しかし、それでもアテナの存在自体が、平和を許さなかった。

 月天使徒殲滅制圧用最終機神兵器・アテナ。
 それがゼウスの「娘」として生み出され、殺戮兵器として生まれてきた私の真名だった。
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