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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
巡礼/神託
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*◆*◆*◆*◆
時はすこし……かなり遡り、朝。
胸を張り、自信満々に出撃していった、最後の第7番隊を見送ったカレンとニトイは、今まさに暇な時間を迎えようとしていた。
その最中にて、ニトイは1つ呟く。
「……じゅんれー、したい!」
巡礼。
聖地、大神殿オリンピアに———そこに座する神に、祈りを捧げる作業。
数百年前までは義務付けられていたが、今となってはゴルゴダ機関ですら義務付けられてはおらず、大神殿は事実上無人の、寂しい場所となっていたのだが。
その空に浮かぶ黄金の神殿の前にて、手を合わせ祈りを捧げる人物が2人。
「神託」、女神アテナが行なっていたその神よりのお告げは、1年前———魔王の一撃によって、アテナのスペアボディが失墜すると同時に途切れたままであったが。
それでもなお、私たちは祈りを捧げる。
「……ありがとう、ございます」
「いえ、いいんですよ、ここは私のお気に入りの場所ですし」
細々と、照れるように感謝を述べるニトイに対し、私は少しばかり微笑みかけた。
上空3000mより見渡す帝都の景色は、それはそれは素晴らしく、ニトイもあまりの壮観さに感動を覚えるほどだろう。……そうに違いない。
「すごい……きれい……!」
「……偽りの、人工の都市神殿ですけどね」
「でもね、でも…………この景色は……ほんもの。……ニトイ、ここ来たこと、ある気がする」
「そう言えば……ニトイちゃんって、あのツバサさん……とはどういう関係なのでしょうか……?」
「ツバサ……運命の、人。何度生まれ変わっても、ずっとそばに居続ける……運命の、人」
「…………ああ、 なるほど……そういう……事。
……ねえニトイちゃん、貴方、自分の識別番号って、分かる?」
「ぅい?……os-43283、の、こと…?」
「本当は?」
「p-12……?」
「やっぱり。…………ふふ、そこにいたのね」
そう、ニトイが、この少女が「アレ」であることを。
いち早く察することができたが、それでも、言うのは少し躊躇った。
……そう、この子が……「アレ」……だった訳ね……
だけど、おそらく曝露すれば……この子の未来は……ない。
どうしよう、どうするべきか。
隠蔽しておくべきか、ちゃんと打ち明けるべきであろうか。
……でも、この子の保護者の……ツバサ君は第3だし……
「…………ぁい?」
やっぱし、ゴルゴダ機関失格かな、私。
そんな笑顔なんて見ちゃったら、そんな酷いコト、できる訳ないじゃない。
———元付き人として、私にできることと言えば……
「……ううん、なんでもないわよ、さ、本部に帰りましょう! 本部の探検とかどうでしょう……」
「ニトイ、見てまわりたい……! 色んなとこ、ぶき庫とか……」
「武器庫……とは、これまた物騒な……」
「おねがいっ!」
目を輝かせて飛び跳ねる可愛らしいその姿から、とても目を離すことはできなかった。
「……ええ、分かりました。こっちですよ、ニトイちゃん」
時はすこし……かなり遡り、朝。
胸を張り、自信満々に出撃していった、最後の第7番隊を見送ったカレンとニトイは、今まさに暇な時間を迎えようとしていた。
その最中にて、ニトイは1つ呟く。
「……じゅんれー、したい!」
巡礼。
聖地、大神殿オリンピアに———そこに座する神に、祈りを捧げる作業。
数百年前までは義務付けられていたが、今となってはゴルゴダ機関ですら義務付けられてはおらず、大神殿は事実上無人の、寂しい場所となっていたのだが。
その空に浮かぶ黄金の神殿の前にて、手を合わせ祈りを捧げる人物が2人。
「神託」、女神アテナが行なっていたその神よりのお告げは、1年前———魔王の一撃によって、アテナのスペアボディが失墜すると同時に途切れたままであったが。
それでもなお、私たちは祈りを捧げる。
「……ありがとう、ございます」
「いえ、いいんですよ、ここは私のお気に入りの場所ですし」
細々と、照れるように感謝を述べるニトイに対し、私は少しばかり微笑みかけた。
上空3000mより見渡す帝都の景色は、それはそれは素晴らしく、ニトイもあまりの壮観さに感動を覚えるほどだろう。……そうに違いない。
「すごい……きれい……!」
「……偽りの、人工の都市神殿ですけどね」
「でもね、でも…………この景色は……ほんもの。……ニトイ、ここ来たこと、ある気がする」
「そう言えば……ニトイちゃんって、あのツバサさん……とはどういう関係なのでしょうか……?」
「ツバサ……運命の、人。何度生まれ変わっても、ずっとそばに居続ける……運命の、人」
「…………ああ、 なるほど……そういう……事。
……ねえニトイちゃん、貴方、自分の識別番号って、分かる?」
「ぅい?……os-43283、の、こと…?」
「本当は?」
「p-12……?」
「やっぱり。…………ふふ、そこにいたのね」
そう、ニトイが、この少女が「アレ」であることを。
いち早く察することができたが、それでも、言うのは少し躊躇った。
……そう、この子が……「アレ」……だった訳ね……
だけど、おそらく曝露すれば……この子の未来は……ない。
どうしよう、どうするべきか。
隠蔽しておくべきか、ちゃんと打ち明けるべきであろうか。
……でも、この子の保護者の……ツバサ君は第3だし……
「…………ぁい?」
やっぱし、ゴルゴダ機関失格かな、私。
そんな笑顔なんて見ちゃったら、そんな酷いコト、できる訳ないじゃない。
———元付き人として、私にできることと言えば……
「……ううん、なんでもないわよ、さ、本部に帰りましょう! 本部の探検とかどうでしょう……」
「ニトイ、見てまわりたい……! 色んなとこ、ぶき庫とか……」
「武器庫……とは、これまた物騒な……」
「おねがいっ!」
目を輝かせて飛び跳ねる可愛らしいその姿から、とても目を離すことはできなかった。
「……ええ、分かりました。こっちですよ、ニトイちゃん」
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