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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
ゴルゴダ機関
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……そして、フツーにニトイと再会しちゃったわけだが。
俺はこの後、どのようにして過ごすべきなんだ?
今まで、普段通りに進んでいた(と思っていた)生活は、一瞬にして、たったの1日にして崩れ去った。
学校は嫌だ、自身の孤独が、より浮き彫りになるからだ。
……だからって、学校に行かなきゃマトモな仕事にも就けやしない。即ち金……パス通貨も稼げず、いずれ餓死するのみ。
親は———、
そんなもの、いたか?
……ならば?
「この刀、売るか」
最後の希望を刀(の金)に託し、今まで使ってきた———否、突然手に入れたこの刀……を売り払うことにした。そもそも刀って何だ、ってなるのだが。
……が、行くのは明日だ。……何より今は、動ける気がしない。
*◇*◇*◇*◇
帝都オリュンポス中央区、某所にて。
「い……痛い、痛い痛いいったい! 頭痛いの、もう刀は見たくないのぉっ!」
「……少しは落ち着け———」
「落ち着けるわけないじゃないっ!」
ジタバタと暴れる赤髪の女を押さえつけるのは、後に『レイン』と呼ばれることになる黒装束の中年男性だった。
女は———少し前、ツバサとニトイたちを襲った、あの女。
「ならば薬を出そう。君のためだ」
「くす……り……? のみぐすり?……粉はイヤよ!」
「大丈夫、錠剤だ」
優しい声で、レインは女に語りかける。まるで親のように。
「薬を処方したら———アレに乗ってもらう。ヤツらの反抗の兆候が見えてきたのでな。
……コレは必要なんだ、君の未来のためにも。
———そうすれば、カレン。……ようやく、再会が果たせるからな……」
それは、ある母子の思い出。
無念のうちに悲痛な別れを遂げた、ある親子の再会が、ようやく果たされようとしていた———のだが。
*◇*◇*◇*◇
「……おはよう……ア……ニトイ」
やっぱり、夢なんかじゃない。
あまりにも無機質なその少女は、まるで一晩中寝ていなかったかの如く、床にぺたりと足をつけ座っていた。
「……で、今日は学校には行かないからな」
「どうして?」
「……あんな事がありゃ、学校なんか行きたくなくなるのも当然だろう?」
「…………ツバサ」
「何だよ?」
「そもそも、学校って、何……? ニトイ、知らない。教えて?」
…………転校生、じゃなかったのか。
いや待て。そもそもコイツ、出自は分からないが、家族構成とかは何とか分かったりするもんだろうか?
「……なあ、ニトイ。お前のお母さんって誰なんだ」
「しつもんをしつもんでかえすなーーっ」
ポカポカと、どこかぎこちない、機械的な動きで頭を叩かれる。
「……すまん、だけど、知りたいんだ。教えてくれ、お前の両親は……パパとママは、誰で、どこにいるんだ」
「覚えて、ない」
「はい?」
どういう、事だ……?
「ニトイは、パパとママ、知らない」
何、だと……?
つまりコイツは、家出じゃない……?
……じゃあなんだ、考え得る可能性を全て導き出せ。
でも、記憶喪失……なんだよな。
だけど、転校生で……保護者は?
コイツの保護者も……多分いないだろ……?
すると。
「……ニトイのことは、何も考えなくていい。ツバサは、ニトイをアイすることだけを、考えて」
響き渡る甘美な声に、感化される。
何も考えなくて、いい。
……そうだよな、知って何になる、余計なことには首を突っ込まない事が一番だ。
それにしても、ここにいるコイツが一番余計なんだが。
「……はいはい、分かったよ、……んで、お前何か食べたいものあるか? 金はないが一応言ってみろ」
「ニトイ、食べなくて、いい。何も」
「食べなくていい?……あっそ、おい、金銭的にも冗談じゃ済まさないからな」
「じょーだん、じゃない」
……もういい、俺は考えないぞ、お前に関しては、何も。
俺はこの後、どのようにして過ごすべきなんだ?
今まで、普段通りに進んでいた(と思っていた)生活は、一瞬にして、たったの1日にして崩れ去った。
学校は嫌だ、自身の孤独が、より浮き彫りになるからだ。
……だからって、学校に行かなきゃマトモな仕事にも就けやしない。即ち金……パス通貨も稼げず、いずれ餓死するのみ。
親は———、
そんなもの、いたか?
……ならば?
「この刀、売るか」
最後の希望を刀(の金)に託し、今まで使ってきた———否、突然手に入れたこの刀……を売り払うことにした。そもそも刀って何だ、ってなるのだが。
……が、行くのは明日だ。……何より今は、動ける気がしない。
*◇*◇*◇*◇
帝都オリュンポス中央区、某所にて。
「い……痛い、痛い痛いいったい! 頭痛いの、もう刀は見たくないのぉっ!」
「……少しは落ち着け———」
「落ち着けるわけないじゃないっ!」
ジタバタと暴れる赤髪の女を押さえつけるのは、後に『レイン』と呼ばれることになる黒装束の中年男性だった。
女は———少し前、ツバサとニトイたちを襲った、あの女。
「ならば薬を出そう。君のためだ」
「くす……り……? のみぐすり?……粉はイヤよ!」
「大丈夫、錠剤だ」
優しい声で、レインは女に語りかける。まるで親のように。
「薬を処方したら———アレに乗ってもらう。ヤツらの反抗の兆候が見えてきたのでな。
……コレは必要なんだ、君の未来のためにも。
———そうすれば、カレン。……ようやく、再会が果たせるからな……」
それは、ある母子の思い出。
無念のうちに悲痛な別れを遂げた、ある親子の再会が、ようやく果たされようとしていた———のだが。
*◇*◇*◇*◇
「……おはよう……ア……ニトイ」
やっぱり、夢なんかじゃない。
あまりにも無機質なその少女は、まるで一晩中寝ていなかったかの如く、床にぺたりと足をつけ座っていた。
「……で、今日は学校には行かないからな」
「どうして?」
「……あんな事がありゃ、学校なんか行きたくなくなるのも当然だろう?」
「…………ツバサ」
「何だよ?」
「そもそも、学校って、何……? ニトイ、知らない。教えて?」
…………転校生、じゃなかったのか。
いや待て。そもそもコイツ、出自は分からないが、家族構成とかは何とか分かったりするもんだろうか?
「……なあ、ニトイ。お前のお母さんって誰なんだ」
「しつもんをしつもんでかえすなーーっ」
ポカポカと、どこかぎこちない、機械的な動きで頭を叩かれる。
「……すまん、だけど、知りたいんだ。教えてくれ、お前の両親は……パパとママは、誰で、どこにいるんだ」
「覚えて、ない」
「はい?」
どういう、事だ……?
「ニトイは、パパとママ、知らない」
何、だと……?
つまりコイツは、家出じゃない……?
……じゃあなんだ、考え得る可能性を全て導き出せ。
でも、記憶喪失……なんだよな。
だけど、転校生で……保護者は?
コイツの保護者も……多分いないだろ……?
すると。
「……ニトイのことは、何も考えなくていい。ツバサは、ニトイをアイすることだけを、考えて」
響き渡る甘美な声に、感化される。
何も考えなくて、いい。
……そうだよな、知って何になる、余計なことには首を突っ込まない事が一番だ。
それにしても、ここにいるコイツが一番余計なんだが。
「……はいはい、分かったよ、……んで、お前何か食べたいものあるか? 金はないが一応言ってみろ」
「ニトイ、食べなくて、いい。何も」
「食べなくていい?……あっそ、おい、金銭的にも冗談じゃ済まさないからな」
「じょーだん、じゃない」
……もういい、俺は考えないぞ、お前に関しては、何も。
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