Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅰ〜アローサル:ラークシャサ・ラージャー〜

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*◆*◆*◆*◆

 
 3日目、朝。

 禁止ゾーンもかなり広まってきており、残された許可ゾーンは大陸中腹の砂漠、そしてかつてセンの村があった地帯、そして王都を含む大陸東部あたりのみであり、白たちのいる森は明日になれば禁止ゾーンになるところまで来ていた。



「な……ない、ない、ない?! 神威が、ない?!」

 ……白は慌てていた。慌てふためいていた。

「ど~したの、何がないっれ……?」

 続いてサナも起きるが、やはり寝ぼけていて周りの様子が掴めていないよう。



 ……そう、白の愛刀、神威が一晩にして消えてしまっていたのである。

 なぜか?……そう、センが勝手に持ち出したからであって。
 だが、当のセンはというと。




◇◇◇◇◇◇◇◇

「ヤバいヤバいよ……こっそり神威返すの忘れちゃった……どう、どう言い訳すればいいんだ……?!」

「大人しく諦めるでヤンス。そして窃盗罪を償うでヤンス」

「盗んでない借りただけだから!!」

「……何、言っても……無駄……大人しく……死になさい」
「ぅ嘘だーーーっ!!」

 ……当のセンは、絶望していたのである。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「……で、俺の神威を持ってった、と」
「すいません……」

 バッタリと。
 行く先々で、僕たちはバッタリと出会ってしまった。

 こー言うのは普通どれだけ探したって合流できないもの……だが、こー言う時に限ってすぐに会えてしまうなんてどんなに皮肉か。

「…………そもそも何で俺の神威を持ってった? 理由だってあるはずだろ?」

「それは……」

 昨晩、起きた謎のことについて、そしてイデアさんの事についても全て話した。


「…………ああ、確かに、そりゃ俺の責任だ。……まさかこんな大会にて、殺人鬼がいるなんて誰も思うまい」

「白だって殺人鬼でs……」
「サナは黙ってろ」

 入れられた合いの手は、速攻で拒絶されてしまった。

「すいません、勝手に持ってって……」

「いいやセン、それはもういいんだ。それよりも、俺はお前のその勇気に感服した。……世界を救った、勇者だってのにな」

「……そうね、この大会が終わったらご馳走よ、みんな」
「アイ、肉しか……食べない」



 ……それよりも、そんな事よりも、僕は気になっていた。
 ずっと、ずっとだ。



 何で、何であのイデアさんは、僕のことばっかり気にかける……?

 昨晩もそうだった。……だけど、何でこの僕に、何の才能も力もない僕に、何でイデアさんは興味を持っている……?

 ……いや、それとも興味などないのか?
 ただ憐れんで、それで……
 ……イデアさんはそんな人じゃない…………と思うけど。


 今度会った時、聞いてみるのもいいかもしれない。



 移動開始と共に、全体チャットにて鎧から音声が流れる。


『……お、おい、殺すのは、殺すのは禁止だったはずだろう?! 何で、何でお前、トドメを刺して……は、あ、ああっ……! やめっやめ……』



 途中で途切れた音声が、その凄惨さを加速させる。
「……あ、アイツ……また……殺して……」
 


 本来はおかしいのだ、ただの娯楽だったはずだ。

「許せない……何で、そんな事……するんだ…」

「セン、気持ちは分かるが……とりあえずは落ち着け、俺たちはまだヤツの居場所すら分かってないんだ、だから……!」


 ———一方その頃、ある森にて———。
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