Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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激震!勇魔最終戦争…!

魔王見参

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 目を開ける。
 先程まで拒絶されていた視界は、謎の黒いモヤは完全に晴れ、本当の敵がその姿を晒していた。

 ……俺は今まで、何を見ていたんだ。あの、魔王の子供のような姿は、一体———。






「……まずは礼を言おう。———もの長い間、救世主の身体に住まわせてくれたことに」

 ランスを片手に持ち、漆黒の鎧を身に纏う騎士。
 いや、アイツは騎士じゃない。

「アベル・セイバー」

「正解だ、よくぞ分かった」


「そして……魔王」
「そう、貴公のにして、神域に達した魔術師、そして魔王。アベル・セイバーである」


 互いに浮かび上がる。
 やはり神域。魔術的な浮遊法も何不自由なく使えるらしい。



 勝負は、空中で決着がつく。

「何が目的だ」

 暗黒の地上から、黄昏の空へ。

「余の、目的か……余は、人間の可能性を試していた」

「……はあ、そんなくだらない事で、いつまでもこの愚かな戦争を続けてきたってのか」



 陽の光すら下方へと落ち行く中、

「……いいや、人間と魔族、どちらが生き残るに相応しいか、という事だ。まあ、我々が戦争を行い続けることで多少のだが。

 たった1つの願いを奪い合う大戦は、1000年前に終わりを告げた。ならば、人類と魔族……その2つの種族、大戦時に決着の付かなかった対決に終止符を打つために。

 だからこそ余も、たかが少年に負けては、……いられん」



「そうか。……俺もだ」

 ……ぶつかり合う双星。
 それはまるで、開闢の神話のような———。



「俺も、受け継いだ思い出があるんだからなっ!」

「鏡を見ているような気分に……なるな、っ!」

 交わされる言葉と一撃。
 目にも留まらぬ速さで、1秒間に三千世界が激突する。

 それぞれの想い、それぞれのセカイ。
 互いを壊さねば生きてはいけない、生物の悲しい性。
 ……が、その者たちは互いに自分の覇道を貫かんとする者だった。



 敵の攻撃が擦れる。
 重力と共に落ちてゆく大量出血。
 下がり続ける魔力を使い果たし、これでもかという一撃を、食らわせる……!

「神威……五十三連撃、一極集中……!」
『承知いたしました』



「背水の、陣っ!」

 今まで使ってきた全てを、今まで積み重ねた全てを用いて、完勝のその瞬間まで……!

 急激な反転、下から上へ、身体の動く方向は変化する。

「……がぐ……っ?! 一撃……この余が……食らった……ふは、ふはは、素晴らしいな、人間は! ここまで昂ったのは千年ぶりだ、ッ!」



 鋭く、俊敏な突きが決まる。
 初めて見る魔王の血は、「魔族」には相応しくないだった。

「ああ、俺もだ、不思議と楽しくなってきやがった……!」

 感覚凌駕。
 限界突破。
 無我夢中。

 全てを用いて、何がなんでも手にするは、勝利……!
 余計な思考など全て捨て、無となり虚を突く!


「突・爆牙!」

 一瞬のみ生まれた隙を使い、ゼロタイムで突の構えをとる。



「起きよ———ガイア・コンソール!」

 魔王は既に大槍を構えている。

 既に飛び上がった後。
 もはや後戻りは叶わない……!

「最大最強の、一撃を……!」
「させるとでも思うかあっ!」




 互いに後退する。
 ……何が起きた……?

 完全なる事象飽和。
 どの、何の概念防護を用いても、防御のしようがない一撃を、ヤツは弾いた……?



「「まさか、お前貴公の武器は……!」」

 3秒、息を整え体力を回復する。
 4秒、迎撃開始……!

「ここで一歩も引くわけにはいかないっ!」
「余も同じだ……! ここで終わる訳にはいかぬっ!」

 繰り返される互角な攻防。

 これも全て、このアーマーありきのものなのだが、やはりそれでもこの時の高揚感は異常だった。

 あまりにも高速なそのランスの突きを、鍛え上げられた動体視力で見切り、受け入れる。
 幾度となく動転し行く陽の光をも、もはや全くもって気にならない。


「背水の陣、極ノ項……全開開放っ!」

 惜しみなく、ここで壊れる覚悟で全てを出し尽くす!



 元より死は覚悟の上、みんなには悪いが、生きては帰れない……かもしれない。
 それでも、ここで終わらせる……それが、俺の贖罪だ……!

「もう誰も、傷つかない、優しい世界を……!」
のような世迷言を口にするものだ!」
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