55 / 256
C・C・C(カーネイジ・クライシス・クラッシャー)
最適解
しおりを挟む
「……あっ、イデアさん、こんにちは……それと……はじめまして」
「パーティメンバーだろ、今更そんな挨拶堅苦しい」
「……そ、そうですよね、よろしくです、イデアさん」
「…………ああ、よろしくだ」
まあイデアさんも、何もないのに僕に話しかけた訳ではなく。
「……それで、誰に魔王が潜んでいると踏んでいる?」
「聞いてたんですか?!」
「誰だと思うと聞いているはずだ」
「白さん……かサナさん……本人に自覚はないって言ってたからあなたも怪しい……かと」
「……そうか。……だが俺は、それより前の話の方が気になった」
「魔王軍が全世界に……宣戦布告する……まるで終末戦争のような———」
「……そうだ、まるで、終末戦争のような、全世界を巻き込んだ戦争が始まる。……お前は、どうする?」
「自分の強さに自信がないんだろ、だったらお前はどうするのかって聞いているんだ、戦場では1人の強大な敵に立ち向かうんじゃない。
———戦場では、アレンも俺も、等しくただの兵隊だ。だからこそ、今までサポートしかしてこなかったお前に何ができるのか、とそう思っただけだ」
「…………それでも、やっぱりどうしても、立ち向かうしかありませんよね」
「自分が弱いと……知っているのにか?」
「そうだろうと、僕には立ち向かう、以外の道が思いつきません」
********
……そうか、コイツも俺と同じだ。
戦う理由などいざ知らず、何かの為にひたすら戦って、ただ先へと。
……ならば、俺とコイツが違うのは、「気の持ちよう」、そして「力」。
後者に関してはどうしようもない問題かもしれない。しかし、「気の持ちよう」ならば話は別だ。
「お前は、戦う時に何をイメージし、何を思う?」
「……どうすれば死なないか、どうすれば効率よくサポートできるか……」
「ならばダメだ」
「……え」
「お前に足りないのは、自分のイメージだ」
「イメージ?」
そう、イメージ。
「……だったらお前は、戦う前にまず負ける姿を想像して戦うってのか?」
「……普段は」
「ならばその思考はすぐに捨てろ。考えるのは、勝って、勝って、勝ち誇った顔で戦場に立つ自分の姿だ。
負ける姿など、惨めに殺される姿など、想像する意味はない」
********
勝った……姿を……?
この僕が……?
「そもそも、魔術はイメージだ。俺の扱う『幻想模倣魔術』も、イメージが全てで成り立っている。……だからこそ、俺の勝つ為のモノ、と言えばイメージしか浮かばんのだ」
「あまりも強大すぎて戦慄してしまうような敵を前に、勝つ姿を想像しろ……って……?」
「……くだらない、自分が弱いなどと言う固定観念はすぐに捨て去れ。
———そして想像しろ、勝者の自分を。綿密に、徹底的に。そして勝った姿から、今の自分の最適解を導き出せ。
……それが、俺からのアドバイスだ。勘違いするなよ、お前の事を気遣った訳じゃない、パーティメンバーがこんな体たらくでは締まりがないからな」
「……あ、ありがとう、ございます……」
わかりやすいツンデレ(?)だ……
……それでも、そのアドバイスはとても的確だった。
敗北、敗北、どこまで行っても敗北続き。
「努力すりゃ報われる」そう言う人もいるけれど。
それでも僕はどうやったって報われなくって。
……でも、イデアさんは、僕の弱さについては触れなかった。
多分その事についてはあの人も分かってて、なおかつ触れなかったんだと思う。それでも、あの人は、僕の直すべき点を述べてくれたんだ。
…………今の自分の……最適解……
「セン。……ヤツはおそらく……アレンをも越える逸材だろうに。惜しいヤツだよ、ホントに」
———イデアは1人、誰にも聞かれないように呟いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『この概念武装は『逆転』の概念が付与されておるのじゃ。……まあ使う機会のないオンボロ品だしな』
数年前、じいちゃんが言ってたな。
『逆転』の概念武装、アンチバレル。
僕の家に伝わる2大概念武装の1つ。
展開長身逆転概念弾装填可能式狙撃銃、『アンチバレル』。
……いつ聞いても長すぎんだろとかいう名前だけども。
銃って、そもそもなんだって話だけども。
紅黒き銃身、その砲身に刻まれた水色の線。
僕の身体よりも数倍デカい銃身に、いつ使うかも見極められないその代物だが、ようやく使える時が来たのか……?
……それと。
遥か昔、神域に達した魔術師がその概念を付与してみせた、概念防護『アルビオン・プロテクトアーマー』。
2大概念武装、そのもう片割れ。
……昔々、本当に気の遠くなるような昔。
「アベル・セイバー」なる魔術師が、こことは違う、遥か遠くの次元、この世界と平行にある世界より持ち出した、ある「伝説」を概念として刻んだ鎧。
どちらも僕には扱えないような代物であるが。
あの白さんならば扱いきれるかもしれない、と。
本当ならば、2人の力を1つにできる『融合』の概念装置、『フュージョンコイル』を使うのもいい……のだが、それは今どこにあるのかは全くもって分からない……から。
◇◆◇◆◇◆◇◆
今、僕が出せる最適解。
それは、大戦が、世界を巻き込んだ最悪の戦争が始まる前に、この2つの概念武装を白さんたちに届ける事。
……何の役に立つかは分からないけど、それでも戦場にいて、足手まといになるくらいなら。
……その為には、またあの村に帰らなきゃならない。
それでも。
「白さん」
「……どうした、セン?」
「ちょっと、パーティを離れようと思います。少し、やらなきゃいけない事ができて……」
「……そうか、何がなんだか分からないが、俺たちと一緒にいなくて……」
「……はい、大丈夫です。それじゃ、行ってきます」
********
……センに、どんな事情があるかは知らないが。
パーティを離れようと思います、って言ったからには、まあそのうち帰ってくるだろうな。
理由もなしにパーティを離れるわけもないしな。
……帰ってこなかったらマズいのだが。
「パーティメンバーだろ、今更そんな挨拶堅苦しい」
「……そ、そうですよね、よろしくです、イデアさん」
「…………ああ、よろしくだ」
まあイデアさんも、何もないのに僕に話しかけた訳ではなく。
「……それで、誰に魔王が潜んでいると踏んでいる?」
「聞いてたんですか?!」
「誰だと思うと聞いているはずだ」
「白さん……かサナさん……本人に自覚はないって言ってたからあなたも怪しい……かと」
「……そうか。……だが俺は、それより前の話の方が気になった」
「魔王軍が全世界に……宣戦布告する……まるで終末戦争のような———」
「……そうだ、まるで、終末戦争のような、全世界を巻き込んだ戦争が始まる。……お前は、どうする?」
「自分の強さに自信がないんだろ、だったらお前はどうするのかって聞いているんだ、戦場では1人の強大な敵に立ち向かうんじゃない。
———戦場では、アレンも俺も、等しくただの兵隊だ。だからこそ、今までサポートしかしてこなかったお前に何ができるのか、とそう思っただけだ」
「…………それでも、やっぱりどうしても、立ち向かうしかありませんよね」
「自分が弱いと……知っているのにか?」
「そうだろうと、僕には立ち向かう、以外の道が思いつきません」
********
……そうか、コイツも俺と同じだ。
戦う理由などいざ知らず、何かの為にひたすら戦って、ただ先へと。
……ならば、俺とコイツが違うのは、「気の持ちよう」、そして「力」。
後者に関してはどうしようもない問題かもしれない。しかし、「気の持ちよう」ならば話は別だ。
「お前は、戦う時に何をイメージし、何を思う?」
「……どうすれば死なないか、どうすれば効率よくサポートできるか……」
「ならばダメだ」
「……え」
「お前に足りないのは、自分のイメージだ」
「イメージ?」
そう、イメージ。
「……だったらお前は、戦う前にまず負ける姿を想像して戦うってのか?」
「……普段は」
「ならばその思考はすぐに捨てろ。考えるのは、勝って、勝って、勝ち誇った顔で戦場に立つ自分の姿だ。
負ける姿など、惨めに殺される姿など、想像する意味はない」
********
勝った……姿を……?
この僕が……?
「そもそも、魔術はイメージだ。俺の扱う『幻想模倣魔術』も、イメージが全てで成り立っている。……だからこそ、俺の勝つ為のモノ、と言えばイメージしか浮かばんのだ」
「あまりも強大すぎて戦慄してしまうような敵を前に、勝つ姿を想像しろ……って……?」
「……くだらない、自分が弱いなどと言う固定観念はすぐに捨て去れ。
———そして想像しろ、勝者の自分を。綿密に、徹底的に。そして勝った姿から、今の自分の最適解を導き出せ。
……それが、俺からのアドバイスだ。勘違いするなよ、お前の事を気遣った訳じゃない、パーティメンバーがこんな体たらくでは締まりがないからな」
「……あ、ありがとう、ございます……」
わかりやすいツンデレ(?)だ……
……それでも、そのアドバイスはとても的確だった。
敗北、敗北、どこまで行っても敗北続き。
「努力すりゃ報われる」そう言う人もいるけれど。
それでも僕はどうやったって報われなくって。
……でも、イデアさんは、僕の弱さについては触れなかった。
多分その事についてはあの人も分かってて、なおかつ触れなかったんだと思う。それでも、あの人は、僕の直すべき点を述べてくれたんだ。
…………今の自分の……最適解……
「セン。……ヤツはおそらく……アレンをも越える逸材だろうに。惜しいヤツだよ、ホントに」
———イデアは1人、誰にも聞かれないように呟いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『この概念武装は『逆転』の概念が付与されておるのじゃ。……まあ使う機会のないオンボロ品だしな』
数年前、じいちゃんが言ってたな。
『逆転』の概念武装、アンチバレル。
僕の家に伝わる2大概念武装の1つ。
展開長身逆転概念弾装填可能式狙撃銃、『アンチバレル』。
……いつ聞いても長すぎんだろとかいう名前だけども。
銃って、そもそもなんだって話だけども。
紅黒き銃身、その砲身に刻まれた水色の線。
僕の身体よりも数倍デカい銃身に、いつ使うかも見極められないその代物だが、ようやく使える時が来たのか……?
……それと。
遥か昔、神域に達した魔術師がその概念を付与してみせた、概念防護『アルビオン・プロテクトアーマー』。
2大概念武装、そのもう片割れ。
……昔々、本当に気の遠くなるような昔。
「アベル・セイバー」なる魔術師が、こことは違う、遥か遠くの次元、この世界と平行にある世界より持ち出した、ある「伝説」を概念として刻んだ鎧。
どちらも僕には扱えないような代物であるが。
あの白さんならば扱いきれるかもしれない、と。
本当ならば、2人の力を1つにできる『融合』の概念装置、『フュージョンコイル』を使うのもいい……のだが、それは今どこにあるのかは全くもって分からない……から。
◇◆◇◆◇◆◇◆
今、僕が出せる最適解。
それは、大戦が、世界を巻き込んだ最悪の戦争が始まる前に、この2つの概念武装を白さんたちに届ける事。
……何の役に立つかは分からないけど、それでも戦場にいて、足手まといになるくらいなら。
……その為には、またあの村に帰らなきゃならない。
それでも。
「白さん」
「……どうした、セン?」
「ちょっと、パーティを離れようと思います。少し、やらなきゃいけない事ができて……」
「……そうか、何がなんだか分からないが、俺たちと一緒にいなくて……」
「……はい、大丈夫です。それじゃ、行ってきます」
********
……センに、どんな事情があるかは知らないが。
パーティを離れようと思います、って言ったからには、まあそのうち帰ってくるだろうな。
理由もなしにパーティを離れるわけもないしな。
……帰ってこなかったらマズいのだが。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~
こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇
戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。
そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。
◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです
◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。
誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください
◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います
しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる