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番外編
笹森夫妻の休日
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「んーー!! アスパラ甘いーーー!! 美味しいーー!!」
休日の昼下がり。柊さんの実家の縁側で、茹でたてのアスパラを何もつけずにそのままかじる。噛むとほんのり甘味があって本当に美味しい!!
「未散ちゃん美味しそうに食べるねえー。まだまだあるよーもっとお食べー」
「……兄貴、そんなにいらないから」
楽しそうに茹でた大量のアスパラを皿に盛るお義兄さんを、柊さんがそっと止める。
今日は二人で柊さんの実家にお邪魔している。
私たちが行くと言ったら、柊さんのお義兄さんが採れたてのアスパラを持って来てくれた。
お義兄さんの名は笹森輝ささもりてる。
柊さんの3つ歳上。ほぼ身長も同じくらいで、少し肩に掛かる長さの髪をいつもは一つに結び、柊さんよりちょっとワイルドな面持ちのイケメン。半袖のTシャツから露出する日に焼けた二の腕がとっても逞しい。思わず凝視する。
お義兄さんに初めて会ったのは結婚式当日。いつもは結んでいる髪を下ろし、パリッとフォーマルスーツを着こなしたお義兄さんは、どこのモデルだよとツッコミたくなるくらい格好よくて、女性からの熱い視線を一身に浴びていた。(主に私の身内と友人からだが)
お義兄さんの性格はまだよくわかんないけど、柊さんによれば「超凝り性の変わり者」らしい。
でも私にはいつも優しくしてくれるから、何ら問題は無いんだけど。
「いつもお野菜頂いてほんと有りがたいです。美味しいし。お陰でうちの食卓にはいつも野菜が溢れてますよ」
ポリポリとアスパラを食べながらお義兄さんを見れば、満面の笑顔で一緒にアスパラを食べる。
「未散ちゃんが俺の作った野菜喜んで食べてくれると思うと俄然やる気が出るな。本当に柊には勿体無い位良い子だねっ」
「……うるさい」
柊さんがジロリとお義兄さんを睨みつけた。
それにしても、何回かこちらにお邪魔しているのだが、お義兄さんはいつも多忙でなかなか会えない。
「朝早いし夜も早いし、やること沢山あってね」
お義兄さんはそう言いながら笑う。
「でもあれだけ広い畑と田んぼ、殆どお義兄さんが管理してるんですよね?凄いです」
「いんやぁ、別に大したことないよ。今は雇ってる人もいるしさ。それに俺はやりたくて農家になったから、今は毎日が楽しくてね」
「……お祖父様が引退されるときに決断したんですか?」
「決断つーか、じいさんが突然俺と柊に言ったんだ。『おい、お前ら畑と株どっちが欲しい』て。俺は迷わず『畑!』て言って、柊は株を選んだ。そこからかな」
「……はい?」
今、株って言った?
「いや、元々農業に興味はあったんだよ。大学出て就職して2年目だったけど、それをきっかけに踏ん切りついてさ。サラリーマン辞めて農業に転職したんだわ」
「そうなんですか……」
ってお義兄さんごめんなさい。今私が気になっているのは株の方です。
思わず柊さんに向き直ると、苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。
「柊さん、株って?」
「兄貴……さらっとばらしやがって……」
「おっ、未散ちゃん知らなかったの?柊はじいさんから株贈与してもらったんだよ。じいさんかなりやり手だったからな、安い時に買って今じゃ結構いい値がついてるの持ってるはずだぜ?何せ君らが今住んでるマンション、一括で購入したもんなぁ、柊?」
お義兄さんがニヤリと笑った。
お義兄さんの言葉に思わず食べる寸前のアスパラを落としそうになる。
な、なななななーーーーーーっ!!!
「…………%#☆¢$¥*%#!!!(言葉にならない)」
「未散、落ち着け。兄貴っ!」
柊さんがお義兄さんをジロリと睨んだ。
「ちょ、ちょっとおおお!!柊さん!!何故その事を黙ってたっ!?」
驚愕のあまり柊さんの肩を掴んでガクガク揺さぶる。
「……はぁ、まぁお前のその反応が想像出来たってのもあるし。俺も多少出してはいるものの、全部が全部俺の力で買った物じゃないしさ。なんか言いづらいじゃん」
「柊のちっぽけなプライドが邪魔したってとこか」
わはは。とお義兄さんは楽しそうに笑った。
そうだ、そういえば柊さん宛に来る株主総会の招集通知、時価総額ランキングで国内トップクラスの企業ばっかりだった。
「しゅ、柊さん……ひょっとして配当金も凄いのでは」
小刻みに震える手を柊さんの膝に置いた。
「そんなんでもないけど。……ちゃんと貯金してるから」
柊さんは多くを語らずニッコリ笑った。
「……」
も、もう柊さんには驚かされてばかりだ……
私たちのやり取りを見ていたお兄さんが、クスクス笑い出す。
「いいね、新婚。楽しそうでさ」
「……お義兄さんは結婚のご予定無いんですか?」
「俺ぇ?ないない。今は野菜が恋人だからね。夏はトマトが愛しくて……あの色付いていく過程が色っぽくてたまんねー」
「……」
本気なのかな。
「な、ちょっと変わってるだろ」
柊さんが私にこそっと耳打ちする。
「……勿体無いですね、格好いいのに……」
「冬は大根と白菜が恋人になるんだよ……」
柊さんが遠くを見つめ呟いた。
お義兄さん、面白い。
****
帰りの車の中で、自然とお義兄さんの話になる。
「でも、まるっきり女性とお付き合いをしたことがない、とかではないんですよね?」
「まーな、学生時代は普通に何人か彼女いたけど、いつもフラれてたな」
「えっ、何で?」
「あんなだからさ。女性からしてみれば想像していた兄貴と実際の兄貴とのギャップが激しくて嫌になるんじゃないか?」
「そーですかねぇ……あんなに面白くて格好いいならちょっと変でも我慢してあげればいいのに……」
柊さんが運転しながら、チラリと私に視線を寄越す。
「未散は俺がちょっと変でも我慢できる?」
「……できますよ。私も人のこと言えないですもん」
柊さんに出会う前の自分を思い出して一人苦笑いすると、柊さんは私の言葉ににっこりと笑った。
「あー、早く帰って未散食べたい」
「なっ、何をいきなり……」
信号待ちで車が止まると、柊さんが私の右手をぎゅっと握った。
「実家じゃ誰が見てるか分かんねーから、あんまり未散に触れられなくて悶々とした」
「いつも触ってるじゃないですか……」
柊さんの手から熱が伝わって、途端に体が熱を帯びていく。
結婚して数ヶ月経つというのに、柊さんのこういった言葉聞くたびまだドキドキしちゃうんですけど。
****
「未散未散」
「はいっ?…………んむっ……!」
家に着いて、着替えてリビングに向かおうとした私の腕を柊さんに引かれ、そのまま唇を塞がれた。荒々しく繰り返すキスに必死でついていくと、次第に息が上がってくる。
「んっ……しゅ、柊さん…どしたの……?」
目を閉じたまま問うと、柊さんが私の唇を食みつつ、
「ん?我慢できなかったから」
と手短に答え、再びキスを繰り返す。
柊さんに身体を支えられながら、寝室に移動しベッドに倒れこんだ。
早急に私のTシャツの裾から柊さんの手が忍び込むと、ブラジャーごと胸をやわやわと揉む。
柊さんの唇が私から離れると、頬を伝って耳に移動する。
「や、やあっ」
「……兄貴ばっかり褒めるから。お仕置きだ」
「やっ!!そ、そんなつもりじゃっ……」
「俺にはそう聞こえたんだよ」
ボソッと呟くと、私の耳孔に舌を這わせた。同時にブラジャーのホックをパチンと外すと、直に乳房を揉み始めた。
「違うって!…い、いやあああああーーー」
耳、耳はやめてええええーーー!!!
じたばた暴れる私を見て笑いながら、
「まだまだ、こんなもんじゃ済まないよ」
と楽しそうに言って、柊さんは着ていたTシャツを脱ぎ捨て、再び私に覆い被さった。
見つめ合うと少し不満そうに、
「兄貴の二の腕見てうっとりしてただろ」
と囁いた。
図星。
「!! な、何故それを……」
柊さん目敏いっ!
「俺が気付かないとでも思ったか」
そう言いながら、私のTシャツを捲りあげると乳房に吸い付いた。
「あっ……!」
「うっとりしたいなら俺にしとけ」
「してる、してますっ、あっ……や……!」
十分、うっとりさせられてますってば……!!
心の中で叫びつつ、「お仕置き」の夜は更けていった……
休日の昼下がり。柊さんの実家の縁側で、茹でたてのアスパラを何もつけずにそのままかじる。噛むとほんのり甘味があって本当に美味しい!!
「未散ちゃん美味しそうに食べるねえー。まだまだあるよーもっとお食べー」
「……兄貴、そんなにいらないから」
楽しそうに茹でた大量のアスパラを皿に盛るお義兄さんを、柊さんがそっと止める。
今日は二人で柊さんの実家にお邪魔している。
私たちが行くと言ったら、柊さんのお義兄さんが採れたてのアスパラを持って来てくれた。
お義兄さんの名は笹森輝ささもりてる。
柊さんの3つ歳上。ほぼ身長も同じくらいで、少し肩に掛かる長さの髪をいつもは一つに結び、柊さんよりちょっとワイルドな面持ちのイケメン。半袖のTシャツから露出する日に焼けた二の腕がとっても逞しい。思わず凝視する。
お義兄さんに初めて会ったのは結婚式当日。いつもは結んでいる髪を下ろし、パリッとフォーマルスーツを着こなしたお義兄さんは、どこのモデルだよとツッコミたくなるくらい格好よくて、女性からの熱い視線を一身に浴びていた。(主に私の身内と友人からだが)
お義兄さんの性格はまだよくわかんないけど、柊さんによれば「超凝り性の変わり者」らしい。
でも私にはいつも優しくしてくれるから、何ら問題は無いんだけど。
「いつもお野菜頂いてほんと有りがたいです。美味しいし。お陰でうちの食卓にはいつも野菜が溢れてますよ」
ポリポリとアスパラを食べながらお義兄さんを見れば、満面の笑顔で一緒にアスパラを食べる。
「未散ちゃんが俺の作った野菜喜んで食べてくれると思うと俄然やる気が出るな。本当に柊には勿体無い位良い子だねっ」
「……うるさい」
柊さんがジロリとお義兄さんを睨みつけた。
それにしても、何回かこちらにお邪魔しているのだが、お義兄さんはいつも多忙でなかなか会えない。
「朝早いし夜も早いし、やること沢山あってね」
お義兄さんはそう言いながら笑う。
「でもあれだけ広い畑と田んぼ、殆どお義兄さんが管理してるんですよね?凄いです」
「いんやぁ、別に大したことないよ。今は雇ってる人もいるしさ。それに俺はやりたくて農家になったから、今は毎日が楽しくてね」
「……お祖父様が引退されるときに決断したんですか?」
「決断つーか、じいさんが突然俺と柊に言ったんだ。『おい、お前ら畑と株どっちが欲しい』て。俺は迷わず『畑!』て言って、柊は株を選んだ。そこからかな」
「……はい?」
今、株って言った?
「いや、元々農業に興味はあったんだよ。大学出て就職して2年目だったけど、それをきっかけに踏ん切りついてさ。サラリーマン辞めて農業に転職したんだわ」
「そうなんですか……」
ってお義兄さんごめんなさい。今私が気になっているのは株の方です。
思わず柊さんに向き直ると、苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。
「柊さん、株って?」
「兄貴……さらっとばらしやがって……」
「おっ、未散ちゃん知らなかったの?柊はじいさんから株贈与してもらったんだよ。じいさんかなりやり手だったからな、安い時に買って今じゃ結構いい値がついてるの持ってるはずだぜ?何せ君らが今住んでるマンション、一括で購入したもんなぁ、柊?」
お義兄さんがニヤリと笑った。
お義兄さんの言葉に思わず食べる寸前のアスパラを落としそうになる。
な、なななななーーーーーーっ!!!
「…………%#☆¢$¥*%#!!!(言葉にならない)」
「未散、落ち着け。兄貴っ!」
柊さんがお義兄さんをジロリと睨んだ。
「ちょ、ちょっとおおお!!柊さん!!何故その事を黙ってたっ!?」
驚愕のあまり柊さんの肩を掴んでガクガク揺さぶる。
「……はぁ、まぁお前のその反応が想像出来たってのもあるし。俺も多少出してはいるものの、全部が全部俺の力で買った物じゃないしさ。なんか言いづらいじゃん」
「柊のちっぽけなプライドが邪魔したってとこか」
わはは。とお義兄さんは楽しそうに笑った。
そうだ、そういえば柊さん宛に来る株主総会の招集通知、時価総額ランキングで国内トップクラスの企業ばっかりだった。
「しゅ、柊さん……ひょっとして配当金も凄いのでは」
小刻みに震える手を柊さんの膝に置いた。
「そんなんでもないけど。……ちゃんと貯金してるから」
柊さんは多くを語らずニッコリ笑った。
「……」
も、もう柊さんには驚かされてばかりだ……
私たちのやり取りを見ていたお兄さんが、クスクス笑い出す。
「いいね、新婚。楽しそうでさ」
「……お義兄さんは結婚のご予定無いんですか?」
「俺ぇ?ないない。今は野菜が恋人だからね。夏はトマトが愛しくて……あの色付いていく過程が色っぽくてたまんねー」
「……」
本気なのかな。
「な、ちょっと変わってるだろ」
柊さんが私にこそっと耳打ちする。
「……勿体無いですね、格好いいのに……」
「冬は大根と白菜が恋人になるんだよ……」
柊さんが遠くを見つめ呟いた。
お義兄さん、面白い。
****
帰りの車の中で、自然とお義兄さんの話になる。
「でも、まるっきり女性とお付き合いをしたことがない、とかではないんですよね?」
「まーな、学生時代は普通に何人か彼女いたけど、いつもフラれてたな」
「えっ、何で?」
「あんなだからさ。女性からしてみれば想像していた兄貴と実際の兄貴とのギャップが激しくて嫌になるんじゃないか?」
「そーですかねぇ……あんなに面白くて格好いいならちょっと変でも我慢してあげればいいのに……」
柊さんが運転しながら、チラリと私に視線を寄越す。
「未散は俺がちょっと変でも我慢できる?」
「……できますよ。私も人のこと言えないですもん」
柊さんに出会う前の自分を思い出して一人苦笑いすると、柊さんは私の言葉ににっこりと笑った。
「あー、早く帰って未散食べたい」
「なっ、何をいきなり……」
信号待ちで車が止まると、柊さんが私の右手をぎゅっと握った。
「実家じゃ誰が見てるか分かんねーから、あんまり未散に触れられなくて悶々とした」
「いつも触ってるじゃないですか……」
柊さんの手から熱が伝わって、途端に体が熱を帯びていく。
結婚して数ヶ月経つというのに、柊さんのこういった言葉聞くたびまだドキドキしちゃうんですけど。
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「未散未散」
「はいっ?…………んむっ……!」
家に着いて、着替えてリビングに向かおうとした私の腕を柊さんに引かれ、そのまま唇を塞がれた。荒々しく繰り返すキスに必死でついていくと、次第に息が上がってくる。
「んっ……しゅ、柊さん…どしたの……?」
目を閉じたまま問うと、柊さんが私の唇を食みつつ、
「ん?我慢できなかったから」
と手短に答え、再びキスを繰り返す。
柊さんに身体を支えられながら、寝室に移動しベッドに倒れこんだ。
早急に私のTシャツの裾から柊さんの手が忍び込むと、ブラジャーごと胸をやわやわと揉む。
柊さんの唇が私から離れると、頬を伝って耳に移動する。
「や、やあっ」
「……兄貴ばっかり褒めるから。お仕置きだ」
「やっ!!そ、そんなつもりじゃっ……」
「俺にはそう聞こえたんだよ」
ボソッと呟くと、私の耳孔に舌を這わせた。同時にブラジャーのホックをパチンと外すと、直に乳房を揉み始めた。
「違うって!…い、いやあああああーーー」
耳、耳はやめてええええーーー!!!
じたばた暴れる私を見て笑いながら、
「まだまだ、こんなもんじゃ済まないよ」
と楽しそうに言って、柊さんは着ていたTシャツを脱ぎ捨て、再び私に覆い被さった。
見つめ合うと少し不満そうに、
「兄貴の二の腕見てうっとりしてただろ」
と囁いた。
図星。
「!! な、何故それを……」
柊さん目敏いっ!
「俺が気付かないとでも思ったか」
そう言いながら、私のTシャツを捲りあげると乳房に吸い付いた。
「あっ……!」
「うっとりしたいなら俺にしとけ」
「してる、してますっ、あっ……や……!」
十分、うっとりさせられてますってば……!!
心の中で叫びつつ、「お仕置き」の夜は更けていった……
応援ありがとうございます!
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