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第三章
第92話『相棒』
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それから兵士の腕をへし折ったり、目ん玉を撃ち抜いたりして何とか無傷で敵を片付けることが出来た。もちろん、後ろに下がらせたウリエルも無事だ。
とりあえず全員戦闘不能にしたし、先に進むか。ここで時間を無駄にする訳にはいかない。
「ウリエル、先に進むぞ!」
「うん!」
俺は後ろに待機していたウリエルを手招き、手を繋ぐとそのまま走り出す。血で濡れた床は滑りやすく、体幹が弱い子供では直ぐに転びそうだ。ヌルッとした床を駆け抜け、俺達は棟内にある階段を駆け上がる。
確かヘラの恩恵を閉じ込めた依代はこの棟の最上階にある筈····!!
『音羽、前方に敵が複数居ます』
おっ?本当だな。
戦力のほとんどを一階のエントランスに集中させたとは言え、まだ敵は残ってるよな。
ビアンカが指摘した通り、階段の踊り場には三人の武装した兵士の姿があった。彼らの手には槍が握られている。
階段での戦闘に長物の槍は有利に働く。
ここの階段は棟の壁際に設けられたもので手すりがなかった。まあ、早い話が階段から落ちる危険性があるってことだ。棟の中央付近は吹き抜けになっている為、落下したとき掴まるものがない。かなり危ない造りだが、侵入者を効率よく排除するには打って付けの場所だった。
まあ、危険なのは相手も同じだが·····。
でも、そうか····槍か····。槍で牽制されると、敵に近づけない。階段の幅はあまり広くないので長物の槍を持って、通せんぼされるとかなりキツかった。
まあ──────────俺にはそんなの通用しねぇーけど。
「な、何者だ!?」
「侵入者か!?」
「じゃあ、さっきの物音はこいつらが····!?」
階段の踊り場で警備に当たっていた兵士三人は俺達の存在に気づくなり、慌てて槍を向けてくる。道を塞ぐように三人仲良く並んで俺達を待ち構えていた。
俺は短剣を鞘に戻し、代わりにホルスターから魔力銃を取り出した。火力を調整しながら、俺は銃口を彼らに向ける。
確かに槍での牽制は厄介だ。特にこういう場所では。
でも─────────銃がある俺にはあまり関係ない。
槍を持って待ち構える敵を元に危険を承知で突っ込むほど、俺は馬鹿じゃないんでね。まあ、不老不死のマモンなら喜んで突っ込むだろうけど····。
脳裏に青髪の少年を思い浮かべながら、俺は真ん中の兵士の肩を撃ち抜いた。兵士の肩を貫通した魔力弾はレンガの壁に直撃する。
「ぐっ·····ぐはっ!!」
吐血した真ん中の兵士は撃ち抜かれた肩を押さえながら、倒れた──────────真横に。
兵士が倒れた先には仲間の兵士が居る。当然だ、彼らは仲良く並んで俺達を待ち構えていたのだから。この階段の幅の広さや危険性を理解せず、彼らは愚かにも並んで俺達を待ち構えた。それが最大の失敗点であることも知らずに····。
真ん中の兵士は仲間の方に倒れ─────────自ら仲間を階段から突き落とした。
倒れた仲間を支えきれず、階段から落ちた兵士は顔を真っ青にしている。
次の瞬間───────────グシャッと嫌な音がこの場に鳴り響いた。
あれは確実に死んだな。まあ、事故だし仕方ない。それに殺したのは俺じゃねぇーし。
『よくそんなことが言えますね?そう仕向けたのは音羽ですのに····』
仕向けたとは人聞きが悪い。俺は『そうなれば良いのになぁ』と思っただけで狙ってやった訳じゃない。それに原因を作ったのは俺でも、そういう行動に至ったのはあの兵士だ。故意的じゃないにしろ、仲間を殺したのはあいつの責任だ。
俺はビアンカの指摘に肩を竦め、残りの敵を片付ける。階段の踊り場に転がる兵士二人は致命傷こそ受けていないものの、かなり危ない状態だった。放置すれば確実に死ぬ。
まあ、だからって親切に手当てをする気はないが。そんな時間があるなら、早く任務を遂行したい。
「ウリエル、踏まないよう気をつけろよ」
「うん」
兵士二人の体をジャンプで飛び越え、俺達は止まることなく階段を駆け上がる。目的地である最上階の部屋が見えてきた。
扉前の警備は左右に二人か····。まあ、何とかなるだろ。
帯剣する二人の兵士は剣の他に槍と拳銃を所持していた。
さすがに最上階の警護となると、装備品も豪華になるな。武器はもちろん、身につけている鎧も相当良いものだ。
ちょっと火力を上げないと、撃ち抜けないかもな···。
俺は魔力銃の火力を調整しながら、銃口を彼らに向ける。少し距離が離れているせいか、狙いが安定しなかった。
俺の得意な距離は近距離。中距離や長距離も練習しているが、あまり上達していない。正直この距離で上手く標的に弾を当てることが出来るか自信がなかった。
この弾を外せば戦闘が長引いてしまう。だからと言って、近距離戦を仕掛けるのは気が引ける····。
ある程度距離が近づけば相手も俺達の存在に気づくだろう。そうすれば、あいつらも銃を使って攻撃してくる筈····。銃撃戦はマモンと嫌ってほどやったが、今回はウリエルも一緒だ。出来るだけ安全なルートで行きたい。
やはり、この距離で確実に仕留めなければならない。少なくとも一人は。
俺は階段を駆け上がりながら、最上階に佇む警備兵に狙いを定める。その手は少し震えていた。
「·····オトハ、私がやるよ」
「はっ?何言って····」
「ここまでずっとオトハが戦ってくれた。だから、ここは私に任せて───────────《ファイアアロー》」
俺の斜め後ろをずっと黙って走っていたウリエルが突然喋ったかと思えば、ここは自分に任せろと言う。珍しく強気なウリエルは俺が反論する前に魔法を放ってしまった。
あ、おいっ····!!失敗したら、どうするんだ····!?失敗したら、ウリエルを危険に晒してしまうんだぞ!?
そんな俺の心の叫びも知らず、ウリエルの放った魔法は真っ直ぐ兵士達の元へ飛んでいく。複数ある炎の矢はそれぞれ兵士達の肩や足、下腹などに突き刺さった。鎧を溶かし、兵士達の体に突き刺さった炎の矢は彼らの肉や肌を焦がす。ジューッと聞いちゃいけない音が聞こえた。
これ、大丈夫か····?兵士達、生きてるか····?
「ウリエル、俺の承諾もなしに突っ走るな。今回はたまたま上手くいったから良かったものの、失敗していたら大変なことになっていたぞ」
ウリエルの頑張りと成果を讃えたい気持ちよりも、勝手な行動に対する心配と怒りが先に出てしまった。
正直今の攻撃はかなり助かった。が、やはり『失敗したら』と考えると素直に褒めることが出来ない。俺一人が危険に晒されるなら構わない。でも、『ウリエルも』となると、話は別だった。
彼女を大切に思うあまり、叱ってしまう。
紫檀色の長髪幼女は少し悲しそうに顔を歪めると、そのまま顔を俯かせてしまった。
「····私はオトハの相棒なのに···。助け合うのが相棒でしょ?一方的に守られるのは····なんか違うもん」
ボソッと····近くに居ないと聞こえないくらいの声量でウリエルはそう呟いた。いじけた子供が母親にボソッと文句を言うそれと似たようなものである。
でも──────────子供のそれとは決定的な違いがあった。
何故なら、ウリエルの零した呟きは間違っていないから。子供が苦し紛れに····ちょっとした腹いせに母親に文句を言うそれとは全く違った。
そういえば、俺····ウリエルを守ることばかり考えて、ウリエルに戦わせようとはしなかった。扉を吹っ飛ばすときブレスを使って貰ったくらいで、それ以降ウリエルに何か役割を与えることはなかった。戦うのはいつも俺で····ウリエルは俺に守られているだけ。そんなのは相棒とは呼ばない。
ウリエルを相棒と呼んだのは俺なのに····。
ハッ!馬鹿みてぇ·····姫を守る騎士気取りかよ!
俺とウリエルはそんな関係じゃねぇーだろ?俺とウリエルは相棒で、互いの至らぬ点を助け合う関係。背中を任せられる関係。互いを守り合う関係。
どっちかが一方的に戦って、どっちかが一方的に守られるそれは相棒とは呼ばない。
「····悪い、ウリエル。俺が間違ってた。次はちゃんとウリエルにも戦ってもらう」
「!────────本当!?」
「ああ。だって、ウリエルは─────────俺の相棒だろ?」
後ろを走る少女にニィーッと歯を見せて笑いかけると、ウリエルは嬉しそうに微笑んだ。
「うんっ!私はオトハの相棒!!」
真っ暗な暗闇にロウソクが灯ったようにパッとこの場が明るくなる。太陽みたいに輝く笑顔は俺の心を穏やかにさせた。
そうだ、俺とウリエルは相棒。ウリエルは守らなくても自分で戦える。
俺は自分にそう言い聞かせ、一気に階段を駆け上がった。
長い長い階段を駆け上がった先には一つの扉がポツンとあるだけ····それ以外は何も無い。
強いて言うなら、先程ウリエルが倒した兵士の死体が足元に転がっているくらいだった。
やっぱ、死んじまったか。ウリエルは手加減が苦手だからな。まあ、仕方ない····。
俺は転がる焼死体を一瞥し、部屋の扉に手をかけた。鍵のない扉は驚くほど、あっさり開く。
中の警備はどんな感じなんだろうな。やっぱ、何十人も居るんだろうか?
なんて呑気に考えている俺だったが、扉を開けた先には────────────二人の男女しか居なかった。
「おー?随分と早かったな、音羽」
「あら、この前の女の子も一緒なんですね」
この部屋でずっと俺達の到着を待ち続けていた男女は俺とウリエルの姿を見て、楽しそうに笑う。
─────────何でここに朝日とユノが!?
とりあえず全員戦闘不能にしたし、先に進むか。ここで時間を無駄にする訳にはいかない。
「ウリエル、先に進むぞ!」
「うん!」
俺は後ろに待機していたウリエルを手招き、手を繋ぐとそのまま走り出す。血で濡れた床は滑りやすく、体幹が弱い子供では直ぐに転びそうだ。ヌルッとした床を駆け抜け、俺達は棟内にある階段を駆け上がる。
確かヘラの恩恵を閉じ込めた依代はこの棟の最上階にある筈····!!
『音羽、前方に敵が複数居ます』
おっ?本当だな。
戦力のほとんどを一階のエントランスに集中させたとは言え、まだ敵は残ってるよな。
ビアンカが指摘した通り、階段の踊り場には三人の武装した兵士の姿があった。彼らの手には槍が握られている。
階段での戦闘に長物の槍は有利に働く。
ここの階段は棟の壁際に設けられたもので手すりがなかった。まあ、早い話が階段から落ちる危険性があるってことだ。棟の中央付近は吹き抜けになっている為、落下したとき掴まるものがない。かなり危ない造りだが、侵入者を効率よく排除するには打って付けの場所だった。
まあ、危険なのは相手も同じだが·····。
でも、そうか····槍か····。槍で牽制されると、敵に近づけない。階段の幅はあまり広くないので長物の槍を持って、通せんぼされるとかなりキツかった。
まあ──────────俺にはそんなの通用しねぇーけど。
「な、何者だ!?」
「侵入者か!?」
「じゃあ、さっきの物音はこいつらが····!?」
階段の踊り場で警備に当たっていた兵士三人は俺達の存在に気づくなり、慌てて槍を向けてくる。道を塞ぐように三人仲良く並んで俺達を待ち構えていた。
俺は短剣を鞘に戻し、代わりにホルスターから魔力銃を取り出した。火力を調整しながら、俺は銃口を彼らに向ける。
確かに槍での牽制は厄介だ。特にこういう場所では。
でも─────────銃がある俺にはあまり関係ない。
槍を持って待ち構える敵を元に危険を承知で突っ込むほど、俺は馬鹿じゃないんでね。まあ、不老不死のマモンなら喜んで突っ込むだろうけど····。
脳裏に青髪の少年を思い浮かべながら、俺は真ん中の兵士の肩を撃ち抜いた。兵士の肩を貫通した魔力弾はレンガの壁に直撃する。
「ぐっ·····ぐはっ!!」
吐血した真ん中の兵士は撃ち抜かれた肩を押さえながら、倒れた──────────真横に。
兵士が倒れた先には仲間の兵士が居る。当然だ、彼らは仲良く並んで俺達を待ち構えていたのだから。この階段の幅の広さや危険性を理解せず、彼らは愚かにも並んで俺達を待ち構えた。それが最大の失敗点であることも知らずに····。
真ん中の兵士は仲間の方に倒れ─────────自ら仲間を階段から突き落とした。
倒れた仲間を支えきれず、階段から落ちた兵士は顔を真っ青にしている。
次の瞬間───────────グシャッと嫌な音がこの場に鳴り響いた。
あれは確実に死んだな。まあ、事故だし仕方ない。それに殺したのは俺じゃねぇーし。
『よくそんなことが言えますね?そう仕向けたのは音羽ですのに····』
仕向けたとは人聞きが悪い。俺は『そうなれば良いのになぁ』と思っただけで狙ってやった訳じゃない。それに原因を作ったのは俺でも、そういう行動に至ったのはあの兵士だ。故意的じゃないにしろ、仲間を殺したのはあいつの責任だ。
俺はビアンカの指摘に肩を竦め、残りの敵を片付ける。階段の踊り場に転がる兵士二人は致命傷こそ受けていないものの、かなり危ない状態だった。放置すれば確実に死ぬ。
まあ、だからって親切に手当てをする気はないが。そんな時間があるなら、早く任務を遂行したい。
「ウリエル、踏まないよう気をつけろよ」
「うん」
兵士二人の体をジャンプで飛び越え、俺達は止まることなく階段を駆け上がる。目的地である最上階の部屋が見えてきた。
扉前の警備は左右に二人か····。まあ、何とかなるだろ。
帯剣する二人の兵士は剣の他に槍と拳銃を所持していた。
さすがに最上階の警護となると、装備品も豪華になるな。武器はもちろん、身につけている鎧も相当良いものだ。
ちょっと火力を上げないと、撃ち抜けないかもな···。
俺は魔力銃の火力を調整しながら、銃口を彼らに向ける。少し距離が離れているせいか、狙いが安定しなかった。
俺の得意な距離は近距離。中距離や長距離も練習しているが、あまり上達していない。正直この距離で上手く標的に弾を当てることが出来るか自信がなかった。
この弾を外せば戦闘が長引いてしまう。だからと言って、近距離戦を仕掛けるのは気が引ける····。
ある程度距離が近づけば相手も俺達の存在に気づくだろう。そうすれば、あいつらも銃を使って攻撃してくる筈····。銃撃戦はマモンと嫌ってほどやったが、今回はウリエルも一緒だ。出来るだけ安全なルートで行きたい。
やはり、この距離で確実に仕留めなければならない。少なくとも一人は。
俺は階段を駆け上がりながら、最上階に佇む警備兵に狙いを定める。その手は少し震えていた。
「·····オトハ、私がやるよ」
「はっ?何言って····」
「ここまでずっとオトハが戦ってくれた。だから、ここは私に任せて───────────《ファイアアロー》」
俺の斜め後ろをずっと黙って走っていたウリエルが突然喋ったかと思えば、ここは自分に任せろと言う。珍しく強気なウリエルは俺が反論する前に魔法を放ってしまった。
あ、おいっ····!!失敗したら、どうするんだ····!?失敗したら、ウリエルを危険に晒してしまうんだぞ!?
そんな俺の心の叫びも知らず、ウリエルの放った魔法は真っ直ぐ兵士達の元へ飛んでいく。複数ある炎の矢はそれぞれ兵士達の肩や足、下腹などに突き刺さった。鎧を溶かし、兵士達の体に突き刺さった炎の矢は彼らの肉や肌を焦がす。ジューッと聞いちゃいけない音が聞こえた。
これ、大丈夫か····?兵士達、生きてるか····?
「ウリエル、俺の承諾もなしに突っ走るな。今回はたまたま上手くいったから良かったものの、失敗していたら大変なことになっていたぞ」
ウリエルの頑張りと成果を讃えたい気持ちよりも、勝手な行動に対する心配と怒りが先に出てしまった。
正直今の攻撃はかなり助かった。が、やはり『失敗したら』と考えると素直に褒めることが出来ない。俺一人が危険に晒されるなら構わない。でも、『ウリエルも』となると、話は別だった。
彼女を大切に思うあまり、叱ってしまう。
紫檀色の長髪幼女は少し悲しそうに顔を歪めると、そのまま顔を俯かせてしまった。
「····私はオトハの相棒なのに···。助け合うのが相棒でしょ?一方的に守られるのは····なんか違うもん」
ボソッと····近くに居ないと聞こえないくらいの声量でウリエルはそう呟いた。いじけた子供が母親にボソッと文句を言うそれと似たようなものである。
でも──────────子供のそれとは決定的な違いがあった。
何故なら、ウリエルの零した呟きは間違っていないから。子供が苦し紛れに····ちょっとした腹いせに母親に文句を言うそれとは全く違った。
そういえば、俺····ウリエルを守ることばかり考えて、ウリエルに戦わせようとはしなかった。扉を吹っ飛ばすときブレスを使って貰ったくらいで、それ以降ウリエルに何か役割を与えることはなかった。戦うのはいつも俺で····ウリエルは俺に守られているだけ。そんなのは相棒とは呼ばない。
ウリエルを相棒と呼んだのは俺なのに····。
ハッ!馬鹿みてぇ·····姫を守る騎士気取りかよ!
俺とウリエルはそんな関係じゃねぇーだろ?俺とウリエルは相棒で、互いの至らぬ点を助け合う関係。背中を任せられる関係。互いを守り合う関係。
どっちかが一方的に戦って、どっちかが一方的に守られるそれは相棒とは呼ばない。
「····悪い、ウリエル。俺が間違ってた。次はちゃんとウリエルにも戦ってもらう」
「!────────本当!?」
「ああ。だって、ウリエルは─────────俺の相棒だろ?」
後ろを走る少女にニィーッと歯を見せて笑いかけると、ウリエルは嬉しそうに微笑んだ。
「うんっ!私はオトハの相棒!!」
真っ暗な暗闇にロウソクが灯ったようにパッとこの場が明るくなる。太陽みたいに輝く笑顔は俺の心を穏やかにさせた。
そうだ、俺とウリエルは相棒。ウリエルは守らなくても自分で戦える。
俺は自分にそう言い聞かせ、一気に階段を駆け上がった。
長い長い階段を駆け上がった先には一つの扉がポツンとあるだけ····それ以外は何も無い。
強いて言うなら、先程ウリエルが倒した兵士の死体が足元に転がっているくらいだった。
やっぱ、死んじまったか。ウリエルは手加減が苦手だからな。まあ、仕方ない····。
俺は転がる焼死体を一瞥し、部屋の扉に手をかけた。鍵のない扉は驚くほど、あっさり開く。
中の警備はどんな感じなんだろうな。やっぱ、何十人も居るんだろうか?
なんて呑気に考えている俺だったが、扉を開けた先には────────────二人の男女しか居なかった。
「おー?随分と早かったな、音羽」
「あら、この前の女の子も一緒なんですね」
この部屋でずっと俺達の到着を待ち続けていた男女は俺とウリエルの姿を見て、楽しそうに笑う。
─────────何でここに朝日とユノが!?
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