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第二章
第78話『きっかけ』
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ベルゼを部屋に残して、その場を立ち去った俺は普段の賑やかさが嘘のように静まり返る城内を歩き回る。昼夜問わず、いつも誰かが忙しそうに歩き回る廊下には珍しく俺しか居なかった。
ベルゼを部屋に一人残して来てしまったが····それで良かったんだろうか?今更ながら、側に居た方が良かったのではないか?と言う疑問が浮上する。
『本当今更ですね』
うるせぇ!!仕方ないだろ!?こういうの慣れてねぇーんだから!
そもそも、ベルゼは一人になって物事を冷静に考えたいタイプだし、俺が居たら邪魔になると思ったんだよ!
『それはただの言い訳ですよね?意外と彼女は繊細なんですよ?今頃、落ち込んでいるんじゃ····あれっ?目の前のベンチに誰か居ますよ?』
偉そうに説教を垂れるビアンカだったが、前方に誰か居ると指摘してきた。
目の前のベンチに誰か居る····?こんな朝早くに?皆、疲れて眠っていると思っていたんだが·····。
ビアンカに促されるまま、俯かせていた視線を前に向ける。そこには確かに誰か居た。二人がけのベンチに腰掛け、顔を俯かせる子供。
紫檀色の長髪·····?って、まさか·····!?
────────────ウリエル!?
ベンチに座る子供をウリエルと認識した途端、俺の体は考えるよりも先に動いていた。風を切るように廊下を駆け抜け、ベンチに座る少女に駆け寄る。
「ウリエル····!!」
「·····オトハ?」
耳に馴染むソプラノボイスが俺の名を呼び、少女は俯いていた顔を上げる。紫結晶の瞳と目が合った。
やっぱり、ウリエルだったか!
今にも泣きそうな顔で俺を見つめる少女は弱々しくて····正直見ていられない。涙で潤んだ瞳は痛々しく、目の周りは赤く腫れ上がっていた。
泣いていたのか····?
俺はウリエルの隣に座ると、少女の腰を抱き寄せる。ウリエルは特に抵抗するでもなく、俺の体に寄りかかっていた。以前よりもウリエルの体が小さく感じるのは彼女が弱っているせいだろうか?
「ウリエル、こんなところでどうしたんだ?何かあったのか?」
「······」
出来るだけ優しい声で話し掛けるが、ウリエルは何も答えてくれない。それどころか、視線すら合わせてくれなかった。足元をボーッと見つめるウリエルは生気を失った病人のようで·····少し怖い。放っておいたら、いつの間にか消えてしまいそうで怖かった。俺に幸せをくれた少女は今、死にそうな顔で足元を見つめている。存在感が薄く感じる彼女は幽霊のようだった。
何かあったのか?それとも·····人質の件を気にしているのか?
ベルゼの話だと、人質の件でウリエルはかなり思い詰めているらしいし····。パンドラの箱が破壊されてしまったことに責任を感じているのだろう。
責任感の強さはベルゼ譲りか····。
何とかウリエルを元気づける事は出来ないだろうか?
そう考える俺だったが、直ぐにその考えを打ち消した。
いや、それは────────俺の役割じゃない。
それはベルゼの仕事だ。
ピンチはチャンスと言うべきか、ベルゼとウリエルが本当の親子になるためのチャンスが今ここにある。この問題を二人で乗り越えることが出来れば、ベルゼも少しは親としての在り方を学ぶことが出来るだろう。
そのチャンスを第三者である俺が奪っていい筈がなかった。
それに俺がやると、ウリエルをドロドロに甘やかし兼ねないからな。それはウリエルのためにならないだろう。
俺が今、この二人の親子にしてやれることはただ一つ。ベルゼが結論を出すまで、時間稼ぎをすることだ。
「なあ、ウリエル。ベルゼな、さっき俺の部屋に来たんだ」
「!?」
『ベルゼ』という単語に強い反応を示したウリエルはパッと顔を上げる。ベルゼと聞くだけで、これだ。相当お師匠様のことが好きなのだろう。
「で、ベルゼは俺に相談して来たんだ。ウリエル、お前のことを····。どうすれば立ち直らせる事が出来るのか、と俺に聞いてきた」
「····ほ、本当?」
「ああ、本当だ。お前のことを相当心配してたぞ」
「心配····」
複雑な表情を浮かべるウリエル。ベルゼが自分のことを心配している事実に何か思うところがあるらしい。
ウリエルは顎に手を当てると、グッと眉間に皺を寄せた。ふっくらとした唇は八の字に曲がっている。どうやら、何か考え事をしているらしい。
この癖を見るのは久しぶりだな。
普段のベルゼと同じ仏頂面を晒すウリエルに笑みを零しながら、口を閉じた。
本当は俺がベルゼにした助言やその内容を話したかったんだが····考え事の最中に喋るのはマナー違反だ。ウリエルの脳内がこんがらがってしまう。
それに──────────俺の役目はもうすぐ終わりそうだからな。
柱の陰に視線を向け、俺は小さく首を振った。
まだだ。まだ待て。
出てくるのはウリエルの話を聞いてからでも遅くはない。
「····あ、のね?オトハ···」
「ん?なんだ?」
迷うように視線をさ迷わせながら、口を開いた少女。プルプルの唇をキュッと引き締め、上目遣いで俺を見上げた。
·····ウリエル、どこでそんなテク覚えてきた?無意識か?それとも、わざとか?
内心ドキドキが止まらない俺だったが、なんとか話の先を促す。
「私ね、師匠に慰めて欲しかった訳じゃないの····もちろん、責めて欲しかった訳でもない。私が欲しかったのは──────────師匠の本音。私が馬鹿みたいにあっさり人族に捕まって、人質にされて···その結果パンドラの箱を破壊された。その事に関する師匠の本音を聞きたかったの····例え、それが私を責めたてる言葉であったとしても····。それで一緒に考えて欲しかった····!!これから、私がどうすれば良いのか····どうやって責任を取れば良いのか····。私、馬鹿だから····責任の取り方なんて、死ぬ以外分かんないのっ····!!」
これがウリエルの本音だった。
小さな小さな体に溜め込んだ心の欠片。儚く、脆いウリエルの心は既に限界だった。
俺の予想通り、ウリエルが欲しかったのはベルゼの本音。そして、一緒にこれからどうすれば良いのか考えてくれること。
ウリエルはこれからどうすれば良いのか教えて欲しい訳じゃなかった。これからどうすれば良いのか一緒に考えて欲しかったんだ。
ウリエルが求めたのは“答えを教えてくれる師匠”ではなく、“一緒に考えてくれる母親”。師弟関係ではなく、親子関係をベルゼに求めた。
よしっ!ウリエル、よく言った!
「そうだな。今のウリエルに必要なのは一緒に考えてくれる親だよな────────────おい、ベルゼ。もう出て来て良いぞ」
「ふぇっ·····?」
俺は柱の陰にずっと隠れていた人物───────ベルゼを呼んだ。
柱の陰から、ワンピース姿の黒髪美人が気まずそうに現れる。ウリエルは俺とベルゼを交互に見やり、困惑気味に目尻を下げた。
悪いな、ウリエル。ベルゼに盗み聞きさせちまって···。でも、慎重派のベルゼを突き動かすにはこれしかないと思ったんだ。ウリエルの本音をウリエルの口から聞かないと、ベルゼは動かないからさ····。
ベルゼは困惑するウリエルの元にそっと歩み寄ると、慣れた手つきで抱き上げる。
「し、ししょ·····」
「──────────悪かった」
「えっ·····?」
「一番近くに居たのに····ウリエルの気持ちに気づくことが出来なかった。本当にすまない」
ベルゼは眉尻を下げ、申し訳なさそうに謝罪を口にする。ウリエルの一番近くに居ながら、彼女の本音に気づけなかった自分を責めているようだった。ウリエルは突然の謝罪に目を白黒させる。紫結晶の瞳は困惑気味に揺れていた。
本当不器用な親子だ。ウリエルもベルゼも····不器用過ぎて、こっちが焦れったく感じるくらい。
「わ、私も····!私もごめんなさい!ちゃんと自分の気持ち····言えば良かった」
「フッ····そうだな。次からはちゃんと教えてくれ。私もなるべく気づけるようにする」
「うん·····!!」
ふわりと花が綻んだように笑うウリエルは何かが吹っ切れたような清々しい笑みを浮かべている。ベルゼもウリエルの笑みにつられるように微笑んだ。
さっきまで二人とも深刻そうな顔をしていたのに····それが嘘のように笑っている。
「じゃあ、次は私の本音を聞いてくれるか?」
「うん!勿論!」
「ありがとう。実はな──────────」
柔らかい表情でウリエルに本音を打ち明けるベルゼは確かに親の顔をしていた。慈愛に満ち溢れた表情は母親そのもの。
もう任せても大丈夫だろう。
俺の役目はこれでおしまいだ。あとはベルゼが何とかしてくれる。
『意外とあっさりでしたね』
そうかもな。でも、二人にとってはここからが本番だ。本音を打ち明けあったり、今後のことを一緒に考えるきっかけは作れたが、あくまでそれはきっかけに過ぎない。このきっかけがどんな結果を招くは誰も分からないんだ。
だから──────────この“きっかけ”が必ずしも幸運を呼び寄せるとは限らない。
ま、こればっかりは二人の運だな。俺にはどうしようもねぇーよ。
『ウリエル関連のことなのに意外とドライなんですね』
まあな。
ウリエルは確かに大切な奴だが、過度な手助けはしないつもりだ。あいつはもう助けを待つだけの子供じゃない。大人になろうと必死に頑張ってるのに俺が横から手を出すのは違うだろ。ウリエルの成長を妨げる障害物にはなりたくないんでね。
俺はベンチからそっと立ち上がると、二人の会話を邪魔しないよう静かにこの場を立ち去る。
後ろから聞こえるのはウリエルの楽しげな声とベルゼの笑い声。仲睦まじい親子の声だった。
願わくば─────────この優しい時間が少しでも長く続きますように。
ベルゼを部屋に一人残して来てしまったが····それで良かったんだろうか?今更ながら、側に居た方が良かったのではないか?と言う疑問が浮上する。
『本当今更ですね』
うるせぇ!!仕方ないだろ!?こういうの慣れてねぇーんだから!
そもそも、ベルゼは一人になって物事を冷静に考えたいタイプだし、俺が居たら邪魔になると思ったんだよ!
『それはただの言い訳ですよね?意外と彼女は繊細なんですよ?今頃、落ち込んでいるんじゃ····あれっ?目の前のベンチに誰か居ますよ?』
偉そうに説教を垂れるビアンカだったが、前方に誰か居ると指摘してきた。
目の前のベンチに誰か居る····?こんな朝早くに?皆、疲れて眠っていると思っていたんだが·····。
ビアンカに促されるまま、俯かせていた視線を前に向ける。そこには確かに誰か居た。二人がけのベンチに腰掛け、顔を俯かせる子供。
紫檀色の長髪·····?って、まさか·····!?
────────────ウリエル!?
ベンチに座る子供をウリエルと認識した途端、俺の体は考えるよりも先に動いていた。風を切るように廊下を駆け抜け、ベンチに座る少女に駆け寄る。
「ウリエル····!!」
「·····オトハ?」
耳に馴染むソプラノボイスが俺の名を呼び、少女は俯いていた顔を上げる。紫結晶の瞳と目が合った。
やっぱり、ウリエルだったか!
今にも泣きそうな顔で俺を見つめる少女は弱々しくて····正直見ていられない。涙で潤んだ瞳は痛々しく、目の周りは赤く腫れ上がっていた。
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俺はウリエルの隣に座ると、少女の腰を抱き寄せる。ウリエルは特に抵抗するでもなく、俺の体に寄りかかっていた。以前よりもウリエルの体が小さく感じるのは彼女が弱っているせいだろうか?
「ウリエル、こんなところでどうしたんだ?何かあったのか?」
「······」
出来るだけ優しい声で話し掛けるが、ウリエルは何も答えてくれない。それどころか、視線すら合わせてくれなかった。足元をボーッと見つめるウリエルは生気を失った病人のようで·····少し怖い。放っておいたら、いつの間にか消えてしまいそうで怖かった。俺に幸せをくれた少女は今、死にそうな顔で足元を見つめている。存在感が薄く感じる彼女は幽霊のようだった。
何かあったのか?それとも·····人質の件を気にしているのか?
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責任感の強さはベルゼ譲りか····。
何とかウリエルを元気づける事は出来ないだろうか?
そう考える俺だったが、直ぐにその考えを打ち消した。
いや、それは────────俺の役割じゃない。
それはベルゼの仕事だ。
ピンチはチャンスと言うべきか、ベルゼとウリエルが本当の親子になるためのチャンスが今ここにある。この問題を二人で乗り越えることが出来れば、ベルゼも少しは親としての在り方を学ぶことが出来るだろう。
そのチャンスを第三者である俺が奪っていい筈がなかった。
それに俺がやると、ウリエルをドロドロに甘やかし兼ねないからな。それはウリエルのためにならないだろう。
俺が今、この二人の親子にしてやれることはただ一つ。ベルゼが結論を出すまで、時間稼ぎをすることだ。
「なあ、ウリエル。ベルゼな、さっき俺の部屋に来たんだ」
「!?」
『ベルゼ』という単語に強い反応を示したウリエルはパッと顔を上げる。ベルゼと聞くだけで、これだ。相当お師匠様のことが好きなのだろう。
「で、ベルゼは俺に相談して来たんだ。ウリエル、お前のことを····。どうすれば立ち直らせる事が出来るのか、と俺に聞いてきた」
「····ほ、本当?」
「ああ、本当だ。お前のことを相当心配してたぞ」
「心配····」
複雑な表情を浮かべるウリエル。ベルゼが自分のことを心配している事実に何か思うところがあるらしい。
ウリエルは顎に手を当てると、グッと眉間に皺を寄せた。ふっくらとした唇は八の字に曲がっている。どうやら、何か考え事をしているらしい。
この癖を見るのは久しぶりだな。
普段のベルゼと同じ仏頂面を晒すウリエルに笑みを零しながら、口を閉じた。
本当は俺がベルゼにした助言やその内容を話したかったんだが····考え事の最中に喋るのはマナー違反だ。ウリエルの脳内がこんがらがってしまう。
それに──────────俺の役目はもうすぐ終わりそうだからな。
柱の陰に視線を向け、俺は小さく首を振った。
まだだ。まだ待て。
出てくるのはウリエルの話を聞いてからでも遅くはない。
「····あ、のね?オトハ···」
「ん?なんだ?」
迷うように視線をさ迷わせながら、口を開いた少女。プルプルの唇をキュッと引き締め、上目遣いで俺を見上げた。
·····ウリエル、どこでそんなテク覚えてきた?無意識か?それとも、わざとか?
内心ドキドキが止まらない俺だったが、なんとか話の先を促す。
「私ね、師匠に慰めて欲しかった訳じゃないの····もちろん、責めて欲しかった訳でもない。私が欲しかったのは──────────師匠の本音。私が馬鹿みたいにあっさり人族に捕まって、人質にされて···その結果パンドラの箱を破壊された。その事に関する師匠の本音を聞きたかったの····例え、それが私を責めたてる言葉であったとしても····。それで一緒に考えて欲しかった····!!これから、私がどうすれば良いのか····どうやって責任を取れば良いのか····。私、馬鹿だから····責任の取り方なんて、死ぬ以外分かんないのっ····!!」
これがウリエルの本音だった。
小さな小さな体に溜め込んだ心の欠片。儚く、脆いウリエルの心は既に限界だった。
俺の予想通り、ウリエルが欲しかったのはベルゼの本音。そして、一緒にこれからどうすれば良いのか考えてくれること。
ウリエルはこれからどうすれば良いのか教えて欲しい訳じゃなかった。これからどうすれば良いのか一緒に考えて欲しかったんだ。
ウリエルが求めたのは“答えを教えてくれる師匠”ではなく、“一緒に考えてくれる母親”。師弟関係ではなく、親子関係をベルゼに求めた。
よしっ!ウリエル、よく言った!
「そうだな。今のウリエルに必要なのは一緒に考えてくれる親だよな────────────おい、ベルゼ。もう出て来て良いぞ」
「ふぇっ·····?」
俺は柱の陰にずっと隠れていた人物───────ベルゼを呼んだ。
柱の陰から、ワンピース姿の黒髪美人が気まずそうに現れる。ウリエルは俺とベルゼを交互に見やり、困惑気味に目尻を下げた。
悪いな、ウリエル。ベルゼに盗み聞きさせちまって···。でも、慎重派のベルゼを突き動かすにはこれしかないと思ったんだ。ウリエルの本音をウリエルの口から聞かないと、ベルゼは動かないからさ····。
ベルゼは困惑するウリエルの元にそっと歩み寄ると、慣れた手つきで抱き上げる。
「し、ししょ·····」
「──────────悪かった」
「えっ·····?」
「一番近くに居たのに····ウリエルの気持ちに気づくことが出来なかった。本当にすまない」
ベルゼは眉尻を下げ、申し訳なさそうに謝罪を口にする。ウリエルの一番近くに居ながら、彼女の本音に気づけなかった自分を責めているようだった。ウリエルは突然の謝罪に目を白黒させる。紫結晶の瞳は困惑気味に揺れていた。
本当不器用な親子だ。ウリエルもベルゼも····不器用過ぎて、こっちが焦れったく感じるくらい。
「わ、私も····!私もごめんなさい!ちゃんと自分の気持ち····言えば良かった」
「フッ····そうだな。次からはちゃんと教えてくれ。私もなるべく気づけるようにする」
「うん·····!!」
ふわりと花が綻んだように笑うウリエルは何かが吹っ切れたような清々しい笑みを浮かべている。ベルゼもウリエルの笑みにつられるように微笑んだ。
さっきまで二人とも深刻そうな顔をしていたのに····それが嘘のように笑っている。
「じゃあ、次は私の本音を聞いてくれるか?」
「うん!勿論!」
「ありがとう。実はな──────────」
柔らかい表情でウリエルに本音を打ち明けるベルゼは確かに親の顔をしていた。慈愛に満ち溢れた表情は母親そのもの。
もう任せても大丈夫だろう。
俺の役目はこれでおしまいだ。あとはベルゼが何とかしてくれる。
『意外とあっさりでしたね』
そうかもな。でも、二人にとってはここからが本番だ。本音を打ち明けあったり、今後のことを一緒に考えるきっかけは作れたが、あくまでそれはきっかけに過ぎない。このきっかけがどんな結果を招くは誰も分からないんだ。
だから──────────この“きっかけ”が必ずしも幸運を呼び寄せるとは限らない。
ま、こればっかりは二人の運だな。俺にはどうしようもねぇーよ。
『ウリエル関連のことなのに意外とドライなんですね』
まあな。
ウリエルは確かに大切な奴だが、過度な手助けはしないつもりだ。あいつはもう助けを待つだけの子供じゃない。大人になろうと必死に頑張ってるのに俺が横から手を出すのは違うだろ。ウリエルの成長を妨げる障害物にはなりたくないんでね。
俺はベンチからそっと立ち上がると、二人の会話を邪魔しないよう静かにこの場を立ち去る。
後ろから聞こえるのはウリエルの楽しげな声とベルゼの笑い声。仲睦まじい親子の声だった。
願わくば─────────この優しい時間が少しでも長く続きますように。
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