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第一章

第6話『レベルアップ初回ボーナス』

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 鑑定スキル、魔眼+千里眼セット、エンジェルナビ、アイテムボックス····。
う~ん~····どれも捨て難い。
正直全部欲しい。欲張りなのは分かっているが、全部欲しい。
魅力的な初回ボーナス特典に俺は思わず、考え込んでしまう。
俺の予想でしかないが、この4つの内どれを選ぶかで今後の生活基準が大きく変わってくると思われる。
要するにどれを選ぶか、慎重に考えなければならないのだ。
 まずは俺の今後の生活方針を決めようじゃないか。
今後の方針を立ててから、じっくり考えるのが最善だと思われる。
まず第一に俺はあの王様の言う通り、魔王を討伐しに行くつもりは一切ない。俺は勇者でもなければ聖女でもないし、攻撃系のチートを持っている訳でもない。つまり、討伐に向かったところで無駄死にするのがオチだ。
それに王様だって、俺が本気で魔王討伐に向かうとは思っていないだろうしな。
いきなり異世界に誘拐されて、この国や世界のために命を危険に晒すほど、俺はお人好しじゃないし。
世界を救う云々は朝日に全面的に任せる。
──────人はこれを丸投げと言う。
言っておくが、勝手に異世界召喚に巻き込んできた奴を気遣えるほど、俺は優しくないからな。そこまで心も広くないし。
 と、まあ····話は少し逸れてしまったが、とにかく俺は魔王討伐に行く気はない。
そうなると、この世界に順応して生きていくか、元の世界に戻る方法を探すかの二択になる訳だが····。
俺は前者──────『この世界に順応して生きていく』を選ぶ。
現実的に考えて、前者が一番賢い選択だ。
この手の異世界召喚もので元の世界へ帰還出来た主人公はほとんど居ないし、何より─────王様が使えない俺を送り返そうとしなかった。それが何よりも明白な答えだろう。
使えない俺をこの世界に留まらせる理由は一つしかない。この異世界召喚は一方通行なのだ。よくあるテンプレ的設定だが、俺の考えに間違いはないだろう。
だって、仮に元居た世界へ俺を返すことができるなら、王様はそれを実行していた筈だ。異世界へ返すことは特に問題はないし、外聞が悪くなることもない。
他国の目を気にして、わざわざ俺に寛大な措置を施す必要もなくなるからな。

よって──────後者を選択するのは馬鹿のすることである。

 『無謀』と呼ぶに相応しいそれに時間と労力を割けるほど、余裕はないからな。
 で─────『この世界に順応して生きていく』という選択肢に決まった訳だが····。
“この世界に順応して生きていく”と言っても、道はたくさんある。
さっき上げた『王都でひっそり暮らす』や『野山でスローライフ』も、その数ある道の一つに過ぎない。
便利さで言えば王都、自由さで言えば野山だな。
───────まず、ここで『魔眼・千里眼セット』の選択肢は消える。
日常生活で魔眼や千里眼を使うとは思えないからな。
それに·····俺は片目がない。魔眼と千里眼が“セット”ということは恐らく両目が必要になる。魔眼や千里眼を受け取る際、左目の視力が回復するとかだったら即行でこのお得セットを選んでいるんだがな。
こういう異世界ファンタジーなら、視力回復も有り得そうだが、確率が100%でない以上選択肢から外すのが妥当だろう。

 残るは『鑑定スキル』『エンジェルナビ』『アイテムボックス』だが····。
う~む····どれも捨て難い。
『鑑定スキル』と『アイテムボックス』は王都暮らしでも野山暮らしでも使えそうだし、『エンジェルナビ』はこの世界の事について色々と教えてくれそうだ。
どれにすれば良いんだ····。
選択肢を4つから3つに減らせたは良いが、ここから先が進まない。正直どれを選んでも俺は後悔しないと思う。
だから──────こういうときは神頼みに限る。

「ど、れ、に、し、よ、う、か、な~♪」

 小さい頃よく使った数え歌の一種だ。
本当はもっと考えて慎重に決めるべきなんだが、それだと日が暮れそうだからな。
なら、いっそ神様に決めてもらった方が良い。

「神様の言う通り。な、の、な、の、の、柿の種!鉄砲打って、バンバンバン!」

 地域によって、歌詞は異なるらしいが俺の地域ではこれが主流だった。
──────神様が決めたそれにそっと触れる。
感触はスマホやタブレットの液晶画面に触れたときと同じ感じでちゃんと感触があった。

『選べるレベルアップ初回ボーナス特典は『エンジェルナビ』で本当によろしいですか?

はい Or いいえ』

 確認画面がある辺り、実に親切だ。
誤タップしても大丈夫なように対策されてるんだな。
確認画面にある『はい』をタップすると、突然俺を取り囲むように風が巻き起こった。竜巻とまではいかないが、緩い風が渦をまく。

『レベルアップ初回ボーナス特典が確定されました。ステータス画面に移行します。ご自分のステータスを再度ご確認下さい』

 表示された文章を読み終えるなり、即座にステータス画面に移り変わった。
凄いな····俺の読解スピードを熟知しているのか?それとも、ただの偶然か?

――――――――――――――――――――――――――――

名前:若林 音羽(わかばやし おとは)

職業:無職

レベル:2
レベルアップまで(経験値)→0/500

種族:人族(ヒューマン)

年齢:16歳

性別:♂


生命力:1200/1200

魔力:600/600

体力:580/580

攻撃力:900/900

防御力:750/750


特殊スキル:レベルアップ経験値一定

ボーナス特典:エンジェルナビ

称号:幸運児

――――――――――――――――――――――――――――

 特典スキルである『レベルアップ経験値一定』はさておき、スキルでも何でもない『エンジェルナビ』もステータスに反映されるんだな。
基礎能力も地味に上がってるし、出だしは上々。
よし、今後の方針を考えるのは後回しにして、今はレベル上げに集中しよう。
エンジェルナビの性能確認も後回しだ。
本当は今すぐ性能を確認したいところではあるが、それは夜でも構わないだろう。急ぐ必要はどこにもない。

「そうと決まれば·····早速スライム探しだ」

 このときの俺にはもう命を奪うことに対する罪悪感や恐怖心はなかった。
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