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第一章
第2話『異世界召喚』
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猛烈な光とちょっとした浮遊感を感じ、ギュッと瞼に力を入れる。
エレベーターを降りた後みたいな、ふわふわとした気持ち悪い感覚が俺を襲った。
何なんだ、これ····。
目を開けて辺りを確認したい衝動に駆られるが、瞼越しに伝わってくる猛烈な光がそれを許してくれなかった。
分からない不安と気持ち悪い浮遊感に不快感を感じ、自然と眉間に皺が寄る。
チッ····!何だって、俺がこんな目に····。
今更ながら、朝日に怒りが湧いてきた。
あいつ、自分がしたこと分かってんのか?
冷たく突き放したのは悪かったが、他人を巻き込むのは筋違いというやつだろう。
─────そこでふと俺はあることに気がつく。
朝日に掴まれている筈の腕が痛くない····。
そもそも掴まれている感触がなかった。
一体どういうことだ?
さっきまでがっつり俺の腕を掴んでいたよな?
魔法陣が発動すると同時に離れたのか?
コテンと首を傾げる俺は目を瞑ったまま、状況を把握しようとするが視覚情報を奪われた今、取得出来る情報は限られていた。
無音、無臭。
視覚以外で感じ取れる情報は特にない。
やはり、ここは失明覚悟で目を開けるしか····。
開眼に思考が傾きかけた俺の目元に何かが触れた。
な、んだ?これ···?
柔らかくて暖かい····人肌みたいな温もりだ。
まるで俺の思考を読んだかのように開眼しないよう、俺の目元を覆い隠す何か。
「─────貴方に幸運が訪れんことを」
鈴のなるような美声が確かにそう俺に告げた。
ふとした瞬間、目元を覆い隠していた暖かい何かも猛烈な光も消え失せる。
代わりに多くの人の気配と微かな鉄の香りがした。
恐る恐る目を開く····。
ずっと閉じていたせいで少し視界がぼやけていた。
だが、何度か瞬きを繰り返すとだんだん視界がクリアになっていく。
こ、こは·····。
異世界召喚ものでよくある謁見の間と思しき空間が広がっている。
極端に柱が少なく、壁や数少ない柱には金や銀の装飾が施されていた。天井からぶら下がるシャンデリアはかなり印象的だ。
そして、何より─────正面に佇む冠を被る老人が目を引いた。
この空間に一つしかない椅子────玉座に腰掛け、背もたれによし掛る老人は興味深そうにこちらを見つめている。
玉座は少し段差がある位置に設置されているため、金ぴかの椅子に腰掛ける老人を自然と見上げる形になった。
──────テンプレだな。
俺がまず最初に抱いた感想はこれだ。
異世界召喚もので謁見の間に召喚されるのはよくあることだった。
で、大体このあと言われる台詞は····。
「ふむ。召喚者が男二人とな···。未だかつてないパターンだ」
召喚者が二人····あっ!そうだ!朝日は!?
慌てて視線をさ迷わせると、真横に奴の顔があった。
恨めしいほど整った顔立ちに困惑を示し、俺をじっと見つめている。
どういう事か説明しろ、と言いたいんだろう。
朝日って漫画とか小説読まなさそうだもんな。
漫画や小説好きの奴なら、すぐにこの状況を飲み込めただろう。受け入れるかどうかはさておき、な。
「····恐らく、俺達は異世界に召喚された」
手短に、でも的確な状況説明を口にする。
朝日にだけ聞こえるよう声量を抑えたため、周りの連中には聞こえていない筈だ。
この場には俺達二人と王様と思しき人物以外に多くの人間が両脇に立ち並んでいる。
身に纏う豪華なドレスやアクセサリーから、恐らくこの世界····もしくは国の貴族なのだろう。
彼らも王様同様、こちらを興味深そうに観察している。
正直、居心地が悪い。
今まで極力目立たぬよう生きてきた俺にとって、注目されるこの状況は耐え難いものだった。
人の視線から逃げるように顔を俯かせる俺と違って、スクールカースト上位に位置する朝日は周りの視線を気にした様子はない。彼は常日頃から周りに注目されているため、あまり気にならないのだろう。
俺とは真逆の人間だ。
だから、極力関わりたくなかったのに····。
何で俺の人生、上手くいかないことばかりなんだ···。
昔から不幸体質だとは思っていたが、異世界召喚に巻き込まれるほどだったとは····。
ここまで来ると、怒りや悲しみを通り越していっそ哀れだ。自分で自分を哀れむのは少し可笑しいかもしれないが、どう考えても俺の不幸体質は哀れとしか言いようがない。
よく『嫌なことがあったあとは幸運が待ち受けている』と言うが、俺の場合『嫌なことがあったあとは更に嫌なことが待ち受けている』だ。
幸運なんて訪れたことは一度もない。
『はぁ····』と溜め息を零す俺に朝日が申し訳なさそうに眉尻を下げた。
今更そんな表情されても困る。
謝ってきたって、もう遅いのだ。
お前に巻き込まれる形で俺は異世界召喚されてしまったんだから。
まあ、過ぎたことを今更どうこう言うつもりはないけど····。
「とりあえず、そなたらのステータスを確認させてもらう」
側近と小声で話し合っていた王様は結論が出たのか、俺達にそう指示を飛ばした。
ステータスか···ますます異世界ものっぽいな。
俺の横で『ステータス?なんだそれ?』と呟く陽キャを無視し、王様の指示を待った。
王様と話し合いを行っていた一人の男性が水晶玉のようなものを手に持って、こちらに近付いてくる。
あの水晶玉は恐らくステータスを周りの人に見せるための道具だろう。
ああいうのを異世界では魔道具って言うんだったか?
異世界ファンタジーもので仕入れた知識を頭に思い浮かべながら、その男性が目の前に来るのを待った。
「この水晶玉に触れて、『ステータスオープン』と唱えてください。そうすれば己のステータスが目視出来る筈です。では、金髪の君から」
最近髪を染めたばかりの朝日の髪色は金色だ。
先日頭髪検査に引っ掛かって生活指導の先生に注意されていたがな。
普通は髪の毛を染めてくれば注意で済むはずないのだが、朝日に弱い先生は多い。
彼の人柄の良さや憎めないキャラが大きく影響しているのだろう。
まあ、それで依怙贔屓するのはどうかと思うが····。
「わ、分かりました····。“ステータスオープン”」
目の前に佇む男性に指示された通り、水晶玉に片手を触れさせた状態で朝日は呪文を唱えた。
すると、朝日の頭上に長方形型のプレートが出現する。
――――――――――――――――――――――――――――
名前:朝日 翔陽(あさひ しょうよう)
職業:勇者
レベル:1
レベルアップまで(経験値)→0/500
種族:人間(ヒューマン)
年齢:16歳
性別:♂
生命力:1000/1000
魔力:400/400
体力:1200/1200
攻撃力:980/980
防御力:900/900
――――――――――――――――――――――――――――
一般男性の平均数値がいまいち分からないため、何とも言えないが体力があるのは分かった。
にしても·····朝日が勇者か。
エレベーターを降りた後みたいな、ふわふわとした気持ち悪い感覚が俺を襲った。
何なんだ、これ····。
目を開けて辺りを確認したい衝動に駆られるが、瞼越しに伝わってくる猛烈な光がそれを許してくれなかった。
分からない不安と気持ち悪い浮遊感に不快感を感じ、自然と眉間に皺が寄る。
チッ····!何だって、俺がこんな目に····。
今更ながら、朝日に怒りが湧いてきた。
あいつ、自分がしたこと分かってんのか?
冷たく突き放したのは悪かったが、他人を巻き込むのは筋違いというやつだろう。
─────そこでふと俺はあることに気がつく。
朝日に掴まれている筈の腕が痛くない····。
そもそも掴まれている感触がなかった。
一体どういうことだ?
さっきまでがっつり俺の腕を掴んでいたよな?
魔法陣が発動すると同時に離れたのか?
コテンと首を傾げる俺は目を瞑ったまま、状況を把握しようとするが視覚情報を奪われた今、取得出来る情報は限られていた。
無音、無臭。
視覚以外で感じ取れる情報は特にない。
やはり、ここは失明覚悟で目を開けるしか····。
開眼に思考が傾きかけた俺の目元に何かが触れた。
な、んだ?これ···?
柔らかくて暖かい····人肌みたいな温もりだ。
まるで俺の思考を読んだかのように開眼しないよう、俺の目元を覆い隠す何か。
「─────貴方に幸運が訪れんことを」
鈴のなるような美声が確かにそう俺に告げた。
ふとした瞬間、目元を覆い隠していた暖かい何かも猛烈な光も消え失せる。
代わりに多くの人の気配と微かな鉄の香りがした。
恐る恐る目を開く····。
ずっと閉じていたせいで少し視界がぼやけていた。
だが、何度か瞬きを繰り返すとだんだん視界がクリアになっていく。
こ、こは·····。
異世界召喚ものでよくある謁見の間と思しき空間が広がっている。
極端に柱が少なく、壁や数少ない柱には金や銀の装飾が施されていた。天井からぶら下がるシャンデリアはかなり印象的だ。
そして、何より─────正面に佇む冠を被る老人が目を引いた。
この空間に一つしかない椅子────玉座に腰掛け、背もたれによし掛る老人は興味深そうにこちらを見つめている。
玉座は少し段差がある位置に設置されているため、金ぴかの椅子に腰掛ける老人を自然と見上げる形になった。
──────テンプレだな。
俺がまず最初に抱いた感想はこれだ。
異世界召喚もので謁見の間に召喚されるのはよくあることだった。
で、大体このあと言われる台詞は····。
「ふむ。召喚者が男二人とな···。未だかつてないパターンだ」
召喚者が二人····あっ!そうだ!朝日は!?
慌てて視線をさ迷わせると、真横に奴の顔があった。
恨めしいほど整った顔立ちに困惑を示し、俺をじっと見つめている。
どういう事か説明しろ、と言いたいんだろう。
朝日って漫画とか小説読まなさそうだもんな。
漫画や小説好きの奴なら、すぐにこの状況を飲み込めただろう。受け入れるかどうかはさておき、な。
「····恐らく、俺達は異世界に召喚された」
手短に、でも的確な状況説明を口にする。
朝日にだけ聞こえるよう声量を抑えたため、周りの連中には聞こえていない筈だ。
この場には俺達二人と王様と思しき人物以外に多くの人間が両脇に立ち並んでいる。
身に纏う豪華なドレスやアクセサリーから、恐らくこの世界····もしくは国の貴族なのだろう。
彼らも王様同様、こちらを興味深そうに観察している。
正直、居心地が悪い。
今まで極力目立たぬよう生きてきた俺にとって、注目されるこの状況は耐え難いものだった。
人の視線から逃げるように顔を俯かせる俺と違って、スクールカースト上位に位置する朝日は周りの視線を気にした様子はない。彼は常日頃から周りに注目されているため、あまり気にならないのだろう。
俺とは真逆の人間だ。
だから、極力関わりたくなかったのに····。
何で俺の人生、上手くいかないことばかりなんだ···。
昔から不幸体質だとは思っていたが、異世界召喚に巻き込まれるほどだったとは····。
ここまで来ると、怒りや悲しみを通り越していっそ哀れだ。自分で自分を哀れむのは少し可笑しいかもしれないが、どう考えても俺の不幸体質は哀れとしか言いようがない。
よく『嫌なことがあったあとは幸運が待ち受けている』と言うが、俺の場合『嫌なことがあったあとは更に嫌なことが待ち受けている』だ。
幸運なんて訪れたことは一度もない。
『はぁ····』と溜め息を零す俺に朝日が申し訳なさそうに眉尻を下げた。
今更そんな表情されても困る。
謝ってきたって、もう遅いのだ。
お前に巻き込まれる形で俺は異世界召喚されてしまったんだから。
まあ、過ぎたことを今更どうこう言うつもりはないけど····。
「とりあえず、そなたらのステータスを確認させてもらう」
側近と小声で話し合っていた王様は結論が出たのか、俺達にそう指示を飛ばした。
ステータスか···ますます異世界ものっぽいな。
俺の横で『ステータス?なんだそれ?』と呟く陽キャを無視し、王様の指示を待った。
王様と話し合いを行っていた一人の男性が水晶玉のようなものを手に持って、こちらに近付いてくる。
あの水晶玉は恐らくステータスを周りの人に見せるための道具だろう。
ああいうのを異世界では魔道具って言うんだったか?
異世界ファンタジーもので仕入れた知識を頭に思い浮かべながら、その男性が目の前に来るのを待った。
「この水晶玉に触れて、『ステータスオープン』と唱えてください。そうすれば己のステータスが目視出来る筈です。では、金髪の君から」
最近髪を染めたばかりの朝日の髪色は金色だ。
先日頭髪検査に引っ掛かって生活指導の先生に注意されていたがな。
普通は髪の毛を染めてくれば注意で済むはずないのだが、朝日に弱い先生は多い。
彼の人柄の良さや憎めないキャラが大きく影響しているのだろう。
まあ、それで依怙贔屓するのはどうかと思うが····。
「わ、分かりました····。“ステータスオープン”」
目の前に佇む男性に指示された通り、水晶玉に片手を触れさせた状態で朝日は呪文を唱えた。
すると、朝日の頭上に長方形型のプレートが出現する。
――――――――――――――――――――――――――――
名前:朝日 翔陽(あさひ しょうよう)
職業:勇者
レベル:1
レベルアップまで(経験値)→0/500
種族:人間(ヒューマン)
年齢:16歳
性別:♂
生命力:1000/1000
魔力:400/400
体力:1200/1200
攻撃力:980/980
防御力:900/900
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一般男性の平均数値がいまいち分からないため、何とも言えないが体力があるのは分かった。
にしても·····朝日が勇者か。
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