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番外編
可愛い弟のためならば《イアン side》
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弟とソフィア嬢の婚約破棄騒動から、一ヶ月が経ったある日。
私は一通の手紙と名簿を手に、優雅なティータイムを過ごしていた。
またソフィア嬢からの手紙か……。何度無視すれば、済むのやら……まあ、宛名は私じゃなくて、弟のジェフリーだが……。
例の修道院での生活がよっぽど苦しいのか、ソフィア嬢は度々ジェフリーに手紙を送るようになった。
その内容のほとんどが謝罪と救済を求めるもので、最後には必ず『愛してるわ、ジェフ』と書かれている。
ジェフリーのことなんて、一ミリも思っていないくせに……。
でも、ジェフリーは単純だから、その言葉を信じてしまうかもしれない……。
もしくは修道院での生活に苦しむ彼女に同情し、あっさり解放してしまうかもしれない……。
それはさすがに許せない。
────だから、こうして秘密裏に手紙を回収し、ジェフリーの目の届かない場所で処分しているのだ。
「はぁ……本当に図々しい女だね。ジェフリーを裏切った君には救いを求める権利なんて、ないのに……まだ自分の立場が分かっていないみたいだ」
手紙を読み終えた私はビリビリと手紙を破り捨てる。
そして、床に落ちた手紙の破片を思い切り踏みつけた。
ソフィア嬢、君に出来るのは己の過ちを後悔し、反省することだけだ。
救いや許しを求めることではない。
いい加減、その事実に気づいてもらいたいものだね。
馬鹿な女の末路を嘲笑いながら、ある名簿に目を通す。
この書類には未婚女性の情報がズラリと並んでいた。
「ジェフリーに相応しい女性を見つけないとね。いつまでも王城に居させる訳にはいかないし」
ソフィア嬢と別れてから、結婚に消極的になった弟のため、私は彼に見合う未婚女性を探している。
自分の嫁探しそっちのけで……。
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根っからの善人であるジェフリーが大人の汚い争いに耐えられるとは思えないからね。
……でも、なかなかいい女性が見つからない。
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ある程度は『仕方ない』と割り切るしかないけど……可愛い弟の嫁探しで、妥協はしたくなかった。
「はぁ……全く、私の頭をここまで悩ませるのはお前だけだよ、ジェフリー」
誰に言うでもなくそう呟くと、私はフッと頬を緩めた。
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