20 / 23
本編
修道院《ソフィア side》
しおりを挟む ────その翌日。
逃げる暇もなく馬車に乗せられ、私は本当に北端の修道院へ行くことになった。
馬車の中には見届け役の侍女がおり、常に監視されている。
逃亡なんて出来る訳もなく、時間だけが流れていき────ついに北端の修道院に辿り着くことが出来た。
乾燥した大地の上に建つ修道院は老朽化が進んでいるようで、かなりボロかった。
「推薦状とご令嬢、確かにお預かり致しました。もう帰って頂いて構いません。ここからは私達の仕事なので」
「分かりました。よろしくお願いします」
見張り役の侍女は出迎えに来た修道服の女性と短い会話を交わすと、そのまま踵を返した。
私に一切挨拶することなく、馬車に乗り込む。
そして、私が引き止める前に馬車は出発した。
え……えっ!?誰もここに残らないの!?私の世話をする人は……!?
「私は王国一の美女で、侯爵令嬢なのに……」
「そんな肩書き、ここでは通用しませんよ。それより、こちらへどうぞ。中を案内します」
丁寧な口調とは裏腹に高圧な態度を取る修道院の女性は明らかに私を見下していた。
無駄にプライドが高い私はついついムッとしてしまう。
肌も髪もボロボロで、顔立ちもいまいちのくせに生意気ね。これだから、ブスは嫌なのよ。見ていて、気分が悪くなるわ。
外見の良さだけで成り上がってきた私は自分の立場も弁えず、修道服の女性を睨みつける。
すると、彼女はやれやれといった様子で溜め息を零し────グイッと勢いよく私と髪を引っ張った。
「いっ……!?ちょ、何をするの!?私は王国一の美女で、侯爵家のっ……!」
「令嬢でしょう?分かっています。ですが、ここではそんなもの通用しません。ここは教育不足の問題児を再教育する矯正場……人間の法やルールは適応されません。刑罰の神が定めた掟に従い、暴力を奮うこともあるので、お気をつけ下さい────次は髪を引っ張る程度では済みませんから」
そう警告する修道服の女性は私の髪の毛から、パッと手を離した。
その拍子に、ハラハラと桃色の髪の毛が抜け落ちる。
スイートピーみたいに綺麗だと言われた髪は、まるでゴミのように雑に扱われた。
ここでは、私の常識もルールも通用しない……。
彼女の放った言葉の意味を理解すると同時に、ゾクリと背筋に冷たい何かが走る。
一刻も早くここを逃げ出さなくてはと思うのに、土地勘のない私ではどうしようもなくて……大人しく彼女の後ろについて行くしかなかった。
ど、どうしよう……?とんでもないところに来てしまった……。
私、これからどうなるのかしら……?まさか、殺されたりは……しないわよね?
『温厚なジェフが選んだ場所だから』って、甘く見ていたわ……。
完全にタカを括っていた私は後悔の念に駆られながら、下唇を噛む。
早くも絶望のどん底に落とされた私だったが────地獄は始まったばかりだった。
逃げる暇もなく馬車に乗せられ、私は本当に北端の修道院へ行くことになった。
馬車の中には見届け役の侍女がおり、常に監視されている。
逃亡なんて出来る訳もなく、時間だけが流れていき────ついに北端の修道院に辿り着くことが出来た。
乾燥した大地の上に建つ修道院は老朽化が進んでいるようで、かなりボロかった。
「推薦状とご令嬢、確かにお預かり致しました。もう帰って頂いて構いません。ここからは私達の仕事なので」
「分かりました。よろしくお願いします」
見張り役の侍女は出迎えに来た修道服の女性と短い会話を交わすと、そのまま踵を返した。
私に一切挨拶することなく、馬車に乗り込む。
そして、私が引き止める前に馬車は出発した。
え……えっ!?誰もここに残らないの!?私の世話をする人は……!?
「私は王国一の美女で、侯爵令嬢なのに……」
「そんな肩書き、ここでは通用しませんよ。それより、こちらへどうぞ。中を案内します」
丁寧な口調とは裏腹に高圧な態度を取る修道院の女性は明らかに私を見下していた。
無駄にプライドが高い私はついついムッとしてしまう。
肌も髪もボロボロで、顔立ちもいまいちのくせに生意気ね。これだから、ブスは嫌なのよ。見ていて、気分が悪くなるわ。
外見の良さだけで成り上がってきた私は自分の立場も弁えず、修道服の女性を睨みつける。
すると、彼女はやれやれといった様子で溜め息を零し────グイッと勢いよく私と髪を引っ張った。
「いっ……!?ちょ、何をするの!?私は王国一の美女で、侯爵家のっ……!」
「令嬢でしょう?分かっています。ですが、ここではそんなもの通用しません。ここは教育不足の問題児を再教育する矯正場……人間の法やルールは適応されません。刑罰の神が定めた掟に従い、暴力を奮うこともあるので、お気をつけ下さい────次は髪を引っ張る程度では済みませんから」
そう警告する修道服の女性は私の髪の毛から、パッと手を離した。
その拍子に、ハラハラと桃色の髪の毛が抜け落ちる。
スイートピーみたいに綺麗だと言われた髪は、まるでゴミのように雑に扱われた。
ここでは、私の常識もルールも通用しない……。
彼女の放った言葉の意味を理解すると同時に、ゾクリと背筋に冷たい何かが走る。
一刻も早くここを逃げ出さなくてはと思うのに、土地勘のない私ではどうしようもなくて……大人しく彼女の後ろについて行くしかなかった。
ど、どうしよう……?とんでもないところに来てしまった……。
私、これからどうなるのかしら……?まさか、殺されたりは……しないわよね?
『温厚なジェフが選んだ場所だから』って、甘く見ていたわ……。
完全にタカを括っていた私は後悔の念に駆られながら、下唇を噛む。
早くも絶望のどん底に落とされた私だったが────地獄は始まったばかりだった。
80
お気に入りに追加
7,768
あなたにおすすめの小説


人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。
一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。
更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります
柚木ゆず
恋愛
婚約者様へ。
昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。
そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。

もう、今更です
ねむたん
恋愛
伯爵令嬢セリーヌ・ド・リヴィエールは、公爵家長男アラン・ド・モントレイユと婚約していたが、成長するにつれて彼の態度は冷たくなり、次第に孤独を感じるようになる。学園生活ではアランが王子フェリクスに付き従い、王子の「真実の愛」とされるリリア・エヴァレットを囲む騒動が広がり、セリーヌはさらに心を痛める。
やがて、リヴィエール伯爵家はアランの態度に業を煮やし、婚約解消を申し出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる