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本編
告発《ニコラス side》
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「ジェフリー王子、単刀直入に言います。ソフィア嬢は────浮気をしています。それも複数人の男性と」
結論から先に述べた僕はパチンッと指を鳴らし、近くの侍従に合図を送る。
すると、傍で待機していた侍従の一人がジェフリー王子に近づき、書類の束を差し出した。
あの資料には、浮気の詳細がビッシリと書き込まれている。
外出時のスケジュールや利用したお店の名前まで事細かに……。
接触した男性の身元については、遠い親戚のことまでしっかり調べあげた。
恐らく、当人ですら知らない情報も記載されているだろう。
「その資料にもある通り、不貞行為をしたことはありませんが、街中で見知らぬ男性と歩く姿が度々目撃されています。その距離間は友人と言うより恋人に近く、スキンシップもかなり激しいです」
「…………」
「僕が調べただけでも、十数人の男性と会っているため、他にも浮気相手が居る可能性は充分にあります。また……」
「……う」
僕の言葉を遮るように声を上げたジェフリー王子だったが、声が小さ過ぎて聞き取れない。
俯く彼に『何ですか?』と問い返す代わりに、『え?』と声をあげれば、勢いよく顔を上げた。
「────違う!フィアは浮気なんて、していない!きっと、何かの勘違いだ!」
不安と焦りが入り混じった表情を浮かべ、ジェフリー王子はそう叫んだ。
まるで、自分に言い聞かせるみたいに……。
恐らく、頭の中では理解しているんだろうね。ソフィア嬢が浮気しているのは間違いないって……。
でも、それを認めたくなくて……信じたくなくて、必死に足掻いているだけ。
実に哀れで……女々しい男だよ。
まあ、かくいう僕もジュリアに浮気されたら、気が気じゃないと思うけどね。
浮気相手を抹殺するくらいは平気でやると思うし。
まあ、ジェフリー王子にはそんな度胸ないだろうけど……。
「た、確かにフィアは異性との交流が多い方だが、俺を裏切るような真似はしない!実際、俺と婚約してからは異性との交流を控えてくれた!だから……だからっ!」
「────そこまで言うなら、言い逃れ出来ない決定的な瞬間をお見せしましょう」
必死になって、『違う』と言い張るジェフリー王子を前に、僕はそっと席を立った。
調査資料の内容を思い起こしながら、ナプキンを無造作にテーブルの上に置く。
平民街へ毎日のように男漁りに行っている奴だ……きっと今日も知らない男と一緒に居ることだろう。
ソフィア嬢の行動パターンは既に把握済みなので、ジェフリー王子に浮気現場を見せることは難しくない。
当初の予定では、ここまでするつもりはなかったのだが、頑として信じないなら仕方あるまい。
「こちらです、ジェフリー王子」
店の支払いを侍従に任せた僕は放心状態で固まるジェフリー王子に、手を差し伸べた。
結論から先に述べた僕はパチンッと指を鳴らし、近くの侍従に合図を送る。
すると、傍で待機していた侍従の一人がジェフリー王子に近づき、書類の束を差し出した。
あの資料には、浮気の詳細がビッシリと書き込まれている。
外出時のスケジュールや利用したお店の名前まで事細かに……。
接触した男性の身元については、遠い親戚のことまでしっかり調べあげた。
恐らく、当人ですら知らない情報も記載されているだろう。
「その資料にもある通り、不貞行為をしたことはありませんが、街中で見知らぬ男性と歩く姿が度々目撃されています。その距離間は友人と言うより恋人に近く、スキンシップもかなり激しいです」
「…………」
「僕が調べただけでも、十数人の男性と会っているため、他にも浮気相手が居る可能性は充分にあります。また……」
「……う」
僕の言葉を遮るように声を上げたジェフリー王子だったが、声が小さ過ぎて聞き取れない。
俯く彼に『何ですか?』と問い返す代わりに、『え?』と声をあげれば、勢いよく顔を上げた。
「────違う!フィアは浮気なんて、していない!きっと、何かの勘違いだ!」
不安と焦りが入り混じった表情を浮かべ、ジェフリー王子はそう叫んだ。
まるで、自分に言い聞かせるみたいに……。
恐らく、頭の中では理解しているんだろうね。ソフィア嬢が浮気しているのは間違いないって……。
でも、それを認めたくなくて……信じたくなくて、必死に足掻いているだけ。
実に哀れで……女々しい男だよ。
まあ、かくいう僕もジュリアに浮気されたら、気が気じゃないと思うけどね。
浮気相手を抹殺するくらいは平気でやると思うし。
まあ、ジェフリー王子にはそんな度胸ないだろうけど……。
「た、確かにフィアは異性との交流が多い方だが、俺を裏切るような真似はしない!実際、俺と婚約してからは異性との交流を控えてくれた!だから……だからっ!」
「────そこまで言うなら、言い逃れ出来ない決定的な瞬間をお見せしましょう」
必死になって、『違う』と言い張るジェフリー王子を前に、僕はそっと席を立った。
調査資料の内容を思い起こしながら、ナプキンを無造作にテーブルの上に置く。
平民街へ毎日のように男漁りに行っている奴だ……きっと今日も知らない男と一緒に居ることだろう。
ソフィア嬢の行動パターンは既に把握済みなので、ジェフリー王子に浮気現場を見せることは難しくない。
当初の予定では、ここまでするつもりはなかったのだが、頑として信じないなら仕方あるまい。
「こちらです、ジェフリー王子」
店の支払いを侍従に任せた僕は放心状態で固まるジェフリー王子に、手を差し伸べた。
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