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本編

調査報告

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 ソフィアが公爵家に突撃してきた、その翌日。
私とニコラスは何事も無かったかのようにいつも通りの日常を送っていた。
柔らかな太陽の陽射しを受けながら、せっせとハンカチに刺繍を施していく。
その隣でニコラスは静かに報告書を読んでいた。

 珍しいわね。ニコラスが私の前で報告書を読むなんて……いつも、私の見えないところで仕事をしているのに。
急ぎの用だったのかしら?

「ニコラス、仕事が忙しいならそっちを優先してもいいのよ?私に気を使う必要はないわ」

「ん?あぁ、これは仕事関連の報告書じゃないよ。これはソフィア嬢に関する書類。別に仕事が忙しい訳じゃないから、安心して」

 そう言って、ニッコリ微笑む銀髪碧眼の美青年は優しく私の頭を撫でた。
その感触が心地好くて、スッと目を細める。

 『必ず報いを受けさせる』という宣言通り、ソフィアへの報復を考えているね。
恐らく、この書類には報復に必要な情報が載っているのでしょう。
 ソフィアの愚行はさすがに目に余るし、ワガママ過ぎるから、報復をするのは構わないけど……やり過ぎないか、ちょっと心配ね。
ニコラスは完璧主義者で、やると決めたら徹底的にやる人だから。

「それで、ソフィアについて何か分かったの?」

「あぁ、色々と分かったよ。もし、気になるようなら話そうか?」

 ヒラヒラと書類の束を揺らすニコラスに、私は少し悩んだあと頷いた。

 ソフィアとの件はニコラスが処理してくれるから、わざわざ私が聞く必要はないんだろうけど……正直、気になる。
第二王子との婚約を機に、私達と一切関わらなくなったソフィアが何故公爵家を訪れたのか……。

「まず、ソフィア嬢とジェフリー王子の仲についてだけど────あまり良いとは言えないね。花嫁修業とお小遣いの制限がかなりストレスになっているみたい」

「ん……?花嫁修業とお小遣いの制限……?」

 その二つが何故二人の仲に関わってくるの?大体、お小遣いの制限って何……?婚約者とはいえ、ジェフリー王子にそんな権限はないと思うけど……。

 訳が分からず首を傾げる私に、ニコラスはこう言葉を続けた。

「一つ一つ説明していくね。まず、花嫁修業についてだけど……これは完全にソフィア嬢の勉強不足のせいだね。勉強を疎かにしていたツケが一気に回ってきたみたい。基礎中の基礎も出来ないから、花嫁修業にかなり手間取っているようだよ」

 ニコラスの説明を聞き、私は思わず『あぁ……』と納得してしまう。
よく講義をサボって遊んでいた妹の姿を思い出し、苦笑を浮かべた。
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