愚鈍な妹が氷の貴公子を激怒させた結果、破滅しました〜私の浮気をでっち上げて離婚させようとしたみたいですが、失敗に終わったようです〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
7 / 23
本編

不満《ソフィア side》

しおりを挟む
 半ば逃げるようにロバーツ公爵家を後にした私は家に帰る気にもなれず、近くのカフェで時間を潰していた。
生クリームたっぷりのショートケーキを頬張りながら、クッと眉間に皺を寄せる。
ケーキの味は絶品だが、それとは対照的に私の機嫌は最悪だった。

 はぁ……私の人生、何でこうも上手くいかないのよ……!
浮気のでっち上げがバレた挙句、『氷の貴公子』と呼ばれるニックを怒らせるなんて……。 
当初の予定では、お姉様とニックを別れさせて、私が後妻として公爵家に嫁ぐ筈だったのに……!そうすれば、口うるさいジェフ────ジェフリー・サミュエル・クライン第二王子と、おさらば出来るもの!

 私があのような行動に走ったのにはある一つの理由があった。
それは────第二王子ジェフとの婚約を解消することだ。

 ジェフから婚約を申し込まれた当初は、顔も家柄も良いし、王家に嫁入りするのも悪くないかなと思い、承諾した。
本当はニックと結婚したかったが、お姫様になれるならとジェフで妥協したのだ。

 でも、私の期待は見事打ち砕かれることになる。
何故なら────私がクライン王家に嫁入りするのではなく、ジェフがフローレンス侯爵家に婿入りする予定だったからだ。
 つまり、将来的にはジェフがフローレンス侯爵家の当主となり、私はその妻の侯爵夫人になるという訳。

 『お姫様になれる』と信じていた私からすれば、これは予想外の事態。
まだ正式な婚約を交わしていなかったため、この縁談を蹴ろうとも思ったが……『王子を婿に迎えられるのは名誉なこと』と両親に教えられ、とりあえず我慢した。
私にとって、重要なのは周りにチヤホヤされることだから……。

 なのに……!ジェフったら、婚約式を終えるなり、急に口うるさくなって……!
花嫁修業と題して色んな勉強をやらされたり、淑女の嗜みだとか言って女しか居ないお茶会に行かされたり……!挙句の果てには『このままじゃ、侯爵家が没落する』とか言って、お小遣いを制限したのよ!?
婚約者とはいえ、家の財政事情に首を突っ込むなんて言語道断よ!と抗議しても、取り合ってくれないの!両親もジェフの言いなりになっちゃって、全然私の言うことを聞いてくれないし……!
ジェフと婚約してから、全てが狂ったの!
 だから、何とか婚約を解消出来ないか考えたけど……第二王子との婚約を一方的に破棄することは出来ないって、両親に言われちゃって……。

 もうジェフの言いなりになるしかないのかなって思ってたら────あるお茶会で、『ロバーツ公爵家は王家と同等の権力を持っている』って聞いたの!
ロバーツ公爵家の現当主はニックだし、美しい私とも釣り合いが取れる。
何より、ニックと私が結婚するとなれば、王家側も婚約解消に同意するしかない!我ながら完璧な作戦だわ!

 でも、この作戦にはある問題点があった。
それは────私の姉であり、ニックの妻である、ジュリア・ロバーツ公爵夫人の存在。
彼女を蹴落とし、ニックの心を掴まなければ、私の作戦はまず成功しない。

 だから、お姉様の浮気をでっち上げて、別れさせようとしたんだけど……見事失敗に終わった。大失敗と言ってもいい。

 『はぁ……』と深い溜め息を零した私はフォークを皿の上に置いた。
半分ほど残ってしまったショートケーキを見つめ、人差し指でコツコツとテーブルを叩く。

 これから、どうしよう……?
ニックを怒らせてしまった以上、ロバーツ公爵家を味方につけるのは難しいわ。
いっそのこと家出して、行方をくらます方法もあるけど……贅沢三昧の日々を送れないのは嫌。
でも、だからといって、口うるさいジェフと結婚するのは……。

「はぁ……難しいことは後で考えましょう。頭が痛くなるわ」

 思考が行き詰まった私はフルフルと頭を左右に振り、早々に思考を放棄した。

 ストレス発散ついでにアレックスとデートして、帰ろうかしら?
確か今日は非番だって言っていたわよね?

 最近知り合った騎士見習いのイケメンを思い浮かべながら、私はご機嫌で席を立った。
しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

もう、今更です

ねむたん
恋愛
伯爵令嬢セリーヌ・ド・リヴィエールは、公爵家長男アラン・ド・モントレイユと婚約していたが、成長するにつれて彼の態度は冷たくなり、次第に孤独を感じるようになる。学園生活ではアランが王子フェリクスに付き従い、王子の「真実の愛」とされるリリア・エヴァレットを囲む騒動が広がり、セリーヌはさらに心を痛める。 やがて、リヴィエール伯爵家はアランの態度に業を煮やし、婚約解消を申し出る。

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。 妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。 ……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。 けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します! 自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

処理中です...