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本編

美しい妹

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 執事に案内されるまま、ニコラスと共に客室へ赴くと、そこには王国一の美女と囁かれる我が妹が居た。
 透明感のある薄ピンク色の長髪をハーフアップにし、パパラチアサファイアの瞳を細めるソフィア。
雪のように真っ白な肌が純情を誘い、天使のように愛らしい顔立ちを引き立てる。
 久々に会ったせいか、妹の美貌に数秒見惚れてしまった。

 いけないいけない……しっかりしないと。ソフィアの美貌に見惚れている場合じゃないわ。

 フルフルと首を左右に振って邪念を振り払い、私は改めて桃髪の美女と向き合う。
が、しかし……彼女の目に映るのは私ではなく、夫のニコラスだった。

「久しぶりね、。相変わらず、ハンサムね。とっても格好良いわ」

 ニコラスを『ニック』と愛称で呼ぶソフィアはその愛らしい顔に笑みを浮かべた。
子供のように無邪気な彼女には二年経った今でも、常識というものが身についていないらしい。

 伴侶の居る男性を愛称で呼ぶなんて、有り得ないわ……実の家族ならまだしも、ソフィアとニコラスは義兄弟という関係。
愛称で呼び合うほど、親密な関係ではない。
 第二王子の婚約者になって、少しはマシになったかと思ったけど……ソフィアの非常識さは相変わらずみたいね。

 怒りよりも呆れが勝ってしまい、私は内心溜め息を零す。
賢いとは言い難い妹の言動に、ニコラスは少しだけ眉を顰めた。

「……久しぶりだね、ソフィア。王国一の美女に外見を褒められて光栄だよ。でも、僕のことはロバーツ公爵と呼んでくれ。君に愛称で呼ばれる筋合いはないよ」

「えっ……酷いわ、ニック。そんな言い方をしなくてもいいのに……」

 ニコラスからの明確な拒絶に、妹はパパラチアサファイアの瞳を潤ませる。
だが、銀髪碧眼の美青年は冷たい目でソフィアを見つめるだけだった。

 あの冷たい目を見るのは久しぶりだわ。私の前では、いつも笑顔だから……。

「……ニコラス、とりあえず座りましょう」

「ん?あぁ、そうだね。愛する君をいつまでも立たせる訳にはいかないよ」

 ふわりと柔らかい笑みを浮かべた銀髪碧眼の美青年は私の手を引き、三人掛けのソファまで案内してくれた。
ニコラスに促されるまま腰を下ろすと、その隣に彼が座る。
そして、彼はソフィアに見せつけるように私の腰をそっと抱き寄せた。

 さっき私が不安がったから、ここで立場をハッキリさせようとしたのね。私が少しでも不安にならないように……。
ニコラスは本当に私一筋ね。

 嬉しいような……照れ臭いような心境に陥りつつ、私は緩む頬を手で覆い隠す。
銀髪碧眼の美青年はそんな私を愛おしげに見つめた後、チラッとソフィアに視線を向けた。

「それで、ソフィア嬢はここへ何をしに来たんだい?事前の連絡もなしに来たんだ、何か大切な用があったんだろう?」
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