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再会
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どこか張り詰めたような空気を肌で感じる中、観客達はこちらを振り返り驚愕する。
生贄として捧げられた筈の私と、領地に引きこもりがちなカーティスが本当にそこに居たから。
まるで化け物でも見たかのように青ざめる彼らは動揺のあまり尻餅をついたり、グラスを落としたりしていた。
その途端、会場内は騒がしくなる。
「嘘……どうして、ここに居るの?」
「偽物じゃないのか?」
「いや、少なくとも大公妃は本物だ。ご尊顔を一度拝見したことがあるから、間違いない」
「大公の方も一応、記述通りの容姿をしているわ……」
探るような視線をこちらに向けつつ、彼らは様々な意見を並べる。
予想だにしなかった状況を目の当たりにしたせいか、彼らの取り乱し様は凄まじかった。
礼節を無視して喋り続ける彼らを前に、一人の男性が立ち上がる。
「────静まれ!帝国の守護者に失礼であろう!」
そう言って、貴族達を諌めたのは────皇帝のレイル・カーラー・ノワールだった。
玉座を背に一歩前へ出る彼は、鋭い目つきで貴族達を睨みつける。
『大公に無礼を働けば殺す』と言わんばかりの気迫に、貴族達は震え上がった。
と同時に、口を閉ざす。
再び会場に静寂が戻ってくる中、皇帝はこちらに向き直った。
「こうしてお会いするのは初めてだな、大公。私は136代目皇帝レイル・カーラー・ノワールだ」
初対面とあってか、自己紹介を始める皇帝は愛想良く笑う。
頭こそ下げないものの、ここまで下手に出る姿を見るのは初めてだった。
「それで、今日は何故こちらに?」
「用事がなければ、来ちゃいけないのかい?正式に招待を受けている立場なのに?」
棘のある言い方で答えるカーティスは、どこか冷たい雰囲気を放っていた。
まるで別人のように無表情になる彼の前で、皇帝はたじろぐ。
「い、いや!そういう訳じゃない!ただ、返事がなかったものだから、てっきり欠席するのかと思っていたんだ……!」
『言ってくれれば、出迎えもしたんだが……!』と言い、皇帝は必死に弁解する。
カーティスの機嫌を損ねぬよう、とにかく一生懸命だった。
────が、私の姿を視認すると、『これ幸い』と言わんばかりに話し掛けてくる。
「ひ、久しぶりだな、ティターニア。まだ無事で……いや、元気そうで良かったよ」
話題を変えようと必死な皇帝は、失言しかけて慌てて言い換える。
ダラダラと冷や汗を流す彼に対し、私はいつもの調子で答えた。
「うん。皇城に居る時と違って、凄く大切にされているから元気だよ。美味しい料理をお腹いっぱい食べられて、殴られることもなくて、やりたいことを好きなだけやらせて貰えるの。だから、とっても幸せ」
特に深く考えず思ったことをそのまま言うと、会場内は再びざわめき出す。
刹那────玉座の後ろに控える皇妃と第一皇女が顔を顰めた。
『生贄のくせに自己主張とは、生意気な……!』とでも言うように。
その傍で、第一皇子は肩を落としている。
「……そ、そうか。幸せのようで何よりだ。お前には少しばかり厳しく接してしまったが、それも子を思っての行動……理解してくれると助かる」
皇帝は親子という関係性を前面に出し、『躾の一環だった』と言い張る。
白々しいの一言に尽きる言動に、カーティスはピクッと眉を動かした。
「必要最低限の食事しか与えず、暴言と暴力を繰り返すのが親心とは……変わっているね。皇室の品位を疑うよ」
『有り得ない』と非難するカーティスは、嫌悪感を露わにした。
軽蔑するような視線を向ける彼に対し、皇帝は慌てて弁解しようとする。
────が、しかし……一歩遅かった。何故なら、
「なっ……!?アンタには、関係ないでしょう!これは私達の問題なんだから、しゃしゃり出てこないでよ!」
玉座の後ろに控えていた第一皇女が、口を挟んできたから。
恐らく、私の養育環境を材料に責められるのが耐えられなかったのだろう。
第一皇女は昔からプライドが高く、間違いを認めたり、指摘されたりするのを極端に嫌っている。
しかも、今回は長年見下してきた相手が発端だから相当腹を立てている筈だ。
『また癇癪を起こすかもしれないな』と冷静に分析する中、カーティスは玉座の後ろへ視線を向ける。
「ティターニアが僕の妻になった以上、無関係ではないよ。疑問を呈するくらいの権利はあると思う」
「はぁ!?そのゴミは妻じゃなくて、生贄でしょう!?何言っているの!?」
『バッカじゃない!?』と吐き捨て、第一皇女はこちらを睨みつけた。
すると、第一皇子が慌てたように声を上げる。
「ちょっ……姉上!これ以上はさすがに……!」
「大体、何でまだ生きているのよ!?本来なら、もうとっくに死んでいる筈でしょう!?」
第一皇子の制止を無視し、第一皇女は更なる爆弾を投下した。
呆気に取られる周囲を他所に、彼女はいつもの調子で言葉を紡いでいく。
「あっ!もしかして、不味すぎて食べられなかったとか?見た目からして、妖精の血なんか混ざってなさそうだものね!じゃあ、今日はそのゴミの返品にでも来たの?」
見当違いも甚だしい予想を並べ立てたかと思えば、第一皇女はハッ!と鼻で笑った。
「言っておくけど、返品不可だからね!初代皇帝とアンタの交わした血の盟約で、そうなっているんだから!」
『いらないなら、家畜の餌にでもすれば?』と言い、第一皇女はカーティスを挑発する。
────が、カーティスは平静を崩さかなかった。
「それは分かっているよ。そもそも、返品するためにここへ来た訳じゃないから」
「なら、一体何しに来たのよ?まさか、本当に何の目的もなくここへ来た……なんて、言わないわよね?大公閣下はそんなにお暇じゃないでしょう?」
敢えて敬語を使って煽る第一皇女は、カーティスを怒らせたくて堪らない様子だった。
全く隙を見せない彼に、劣等感のようなものを抱いているのかもしれない。
イレギュラーな事態に直面し、混乱しているのもあるだろうけど……第一皇女らしくない言動だな。
『酷い暴言はあれど、嫌味なんて滅多に吐かないのに』と思案する。
そんな私を他所に、カーティスはスッと目を細めた。
「ああ、そうだね。僕達は純粋にパーティーを楽しむため、ここへ来た訳じゃない。まあ、もっともこの空気ではパーティーなんて続けられないだろうけど」
チラリと周囲を見回すカーティスに対し、第一皇女はすかさず噛み付く。
「そんなのどうでもいいから、さっさと目的を明かしなさいよ!」
「はぁ……君は随分とせっかちだね。でも、まあいい。目的を明かそう」
第一皇女の態度に呆れ果てながらも、カーティスは要求を受け入れた。
かと思えば、神妙な面持ちで前を見据える。
「僕達が今日、ここへ来たのは────血の盟約を破棄するためだ」
生贄として捧げられた筈の私と、領地に引きこもりがちなカーティスが本当にそこに居たから。
まるで化け物でも見たかのように青ざめる彼らは動揺のあまり尻餅をついたり、グラスを落としたりしていた。
その途端、会場内は騒がしくなる。
「嘘……どうして、ここに居るの?」
「偽物じゃないのか?」
「いや、少なくとも大公妃は本物だ。ご尊顔を一度拝見したことがあるから、間違いない」
「大公の方も一応、記述通りの容姿をしているわ……」
探るような視線をこちらに向けつつ、彼らは様々な意見を並べる。
予想だにしなかった状況を目の当たりにしたせいか、彼らの取り乱し様は凄まじかった。
礼節を無視して喋り続ける彼らを前に、一人の男性が立ち上がる。
「────静まれ!帝国の守護者に失礼であろう!」
そう言って、貴族達を諌めたのは────皇帝のレイル・カーラー・ノワールだった。
玉座を背に一歩前へ出る彼は、鋭い目つきで貴族達を睨みつける。
『大公に無礼を働けば殺す』と言わんばかりの気迫に、貴族達は震え上がった。
と同時に、口を閉ざす。
再び会場に静寂が戻ってくる中、皇帝はこちらに向き直った。
「こうしてお会いするのは初めてだな、大公。私は136代目皇帝レイル・カーラー・ノワールだ」
初対面とあってか、自己紹介を始める皇帝は愛想良く笑う。
頭こそ下げないものの、ここまで下手に出る姿を見るのは初めてだった。
「それで、今日は何故こちらに?」
「用事がなければ、来ちゃいけないのかい?正式に招待を受けている立場なのに?」
棘のある言い方で答えるカーティスは、どこか冷たい雰囲気を放っていた。
まるで別人のように無表情になる彼の前で、皇帝はたじろぐ。
「い、いや!そういう訳じゃない!ただ、返事がなかったものだから、てっきり欠席するのかと思っていたんだ……!」
『言ってくれれば、出迎えもしたんだが……!』と言い、皇帝は必死に弁解する。
カーティスの機嫌を損ねぬよう、とにかく一生懸命だった。
────が、私の姿を視認すると、『これ幸い』と言わんばかりに話し掛けてくる。
「ひ、久しぶりだな、ティターニア。まだ無事で……いや、元気そうで良かったよ」
話題を変えようと必死な皇帝は、失言しかけて慌てて言い換える。
ダラダラと冷や汗を流す彼に対し、私はいつもの調子で答えた。
「うん。皇城に居る時と違って、凄く大切にされているから元気だよ。美味しい料理をお腹いっぱい食べられて、殴られることもなくて、やりたいことを好きなだけやらせて貰えるの。だから、とっても幸せ」
特に深く考えず思ったことをそのまま言うと、会場内は再びざわめき出す。
刹那────玉座の後ろに控える皇妃と第一皇女が顔を顰めた。
『生贄のくせに自己主張とは、生意気な……!』とでも言うように。
その傍で、第一皇子は肩を落としている。
「……そ、そうか。幸せのようで何よりだ。お前には少しばかり厳しく接してしまったが、それも子を思っての行動……理解してくれると助かる」
皇帝は親子という関係性を前面に出し、『躾の一環だった』と言い張る。
白々しいの一言に尽きる言動に、カーティスはピクッと眉を動かした。
「必要最低限の食事しか与えず、暴言と暴力を繰り返すのが親心とは……変わっているね。皇室の品位を疑うよ」
『有り得ない』と非難するカーティスは、嫌悪感を露わにした。
軽蔑するような視線を向ける彼に対し、皇帝は慌てて弁解しようとする。
────が、しかし……一歩遅かった。何故なら、
「なっ……!?アンタには、関係ないでしょう!これは私達の問題なんだから、しゃしゃり出てこないでよ!」
玉座の後ろに控えていた第一皇女が、口を挟んできたから。
恐らく、私の養育環境を材料に責められるのが耐えられなかったのだろう。
第一皇女は昔からプライドが高く、間違いを認めたり、指摘されたりするのを極端に嫌っている。
しかも、今回は長年見下してきた相手が発端だから相当腹を立てている筈だ。
『また癇癪を起こすかもしれないな』と冷静に分析する中、カーティスは玉座の後ろへ視線を向ける。
「ティターニアが僕の妻になった以上、無関係ではないよ。疑問を呈するくらいの権利はあると思う」
「はぁ!?そのゴミは妻じゃなくて、生贄でしょう!?何言っているの!?」
『バッカじゃない!?』と吐き捨て、第一皇女はこちらを睨みつけた。
すると、第一皇子が慌てたように声を上げる。
「ちょっ……姉上!これ以上はさすがに……!」
「大体、何でまだ生きているのよ!?本来なら、もうとっくに死んでいる筈でしょう!?」
第一皇子の制止を無視し、第一皇女は更なる爆弾を投下した。
呆気に取られる周囲を他所に、彼女はいつもの調子で言葉を紡いでいく。
「あっ!もしかして、不味すぎて食べられなかったとか?見た目からして、妖精の血なんか混ざってなさそうだものね!じゃあ、今日はそのゴミの返品にでも来たの?」
見当違いも甚だしい予想を並べ立てたかと思えば、第一皇女はハッ!と鼻で笑った。
「言っておくけど、返品不可だからね!初代皇帝とアンタの交わした血の盟約で、そうなっているんだから!」
『いらないなら、家畜の餌にでもすれば?』と言い、第一皇女はカーティスを挑発する。
────が、カーティスは平静を崩さかなかった。
「それは分かっているよ。そもそも、返品するためにここへ来た訳じゃないから」
「なら、一体何しに来たのよ?まさか、本当に何の目的もなくここへ来た……なんて、言わないわよね?大公閣下はそんなにお暇じゃないでしょう?」
敢えて敬語を使って煽る第一皇女は、カーティスを怒らせたくて堪らない様子だった。
全く隙を見せない彼に、劣等感のようなものを抱いているのかもしれない。
イレギュラーな事態に直面し、混乱しているのもあるだろうけど……第一皇女らしくない言動だな。
『酷い暴言はあれど、嫌味なんて滅多に吐かないのに』と思案する。
そんな私を他所に、カーティスはスッと目を細めた。
「ああ、そうだね。僕達は純粋にパーティーを楽しむため、ここへ来た訳じゃない。まあ、もっともこの空気ではパーティーなんて続けられないだろうけど」
チラリと周囲を見回すカーティスに対し、第一皇女はすかさず噛み付く。
「そんなのどうでもいいから、さっさと目的を明かしなさいよ!」
「はぁ……君は随分とせっかちだね。でも、まあいい。目的を明かそう」
第一皇女の態度に呆れ果てながらも、カーティスは要求を受け入れた。
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