236 / 243
第三章
実の父《ジェラルド side》②
しおりを挟む
「何故、ここにあのお方が……?」
死体の横で膝をつき、銀髪の美丈夫はどことなく表情を強ばらせる。
「皇城でたまたま一度だけ見掛けたことがある程度の間柄だが、この顔・この髪・この体つき……間違いない────ルーナ・ブラン・ルーチェ皇妃殿下だ」
「!?」
カッと目を見開く僕は、あの女の死体と銀髪の美丈夫を交互に見つめた。
こ、この女が皇妃……?じゃあ、僕の本当の父親ってまさか……いや、もしそうなら何でこんなところに居るんだ?
普通、皇城で何不自由なく暮らしている筈だろう?
多くの疑問が脳裏を過ぎり、僕は何がなんだか分からなくなる。
帝国をまとめる一族が実父の候補として上がるなんて、夢にも思わなかったから。
『死のうと考えていた矢先にこんな展開……』と衝撃を受ける中、銀髪の美丈夫はチラリとこちらを見た。
「……よく見ると、この子供────ルーナ皇妃殿下とエルピス皇帝陛下に似ているな」
「!!」
『エルピス皇帝陛下』という単語に反応し、僕はギュッと胸元を握り締める。
もう期待なんてしちゃダメだと分かっているのに……この高鳴る鼓動を止められなかった。
『もしかしたら、僕の実父は……』と思案していると、銀髪の美丈夫が立ち上がる。
「念のため確認するが、お前はこの方の息子か?」
手であの女の死体を示し、銀髪の美丈夫は『どうなんだ?』と問い掛けてきた。
それに対し、僕は
「は、はい……!親子です!」
と、首を縦に振る。
すると、銀髪の美丈夫は直ぐさま踵を返した。
「分かった。では、一先ずお前は連れて帰る」
という宣言通り、銀髪の美丈夫────改め、リエート・ラスター・バレンシュタイン公爵は実父候補の居る帝都まで連れていってくれた。
そこで最上級のおもてなしを受け、皇城近くの別邸で待機する。
公爵は今、陛下に会いに行っているって聞いたけど……いつ、帰ってくるかな?
いい知らせを持ってきてくれると、いいな。
などと考えているうちに、公爵が帰ってきて服を着替えるよう指示された。
『お忍びで陛下もここに来ている』と述べる彼に、僕は目を輝かせる。
ついに実父……と言っても、まだ可能性の段階だが。でも、陛下に会えるのはとても楽しみだった。
『どんな人なんだろう?』と浮かれながら正装に身を包み、僕は陛下の居る部屋まで足を運ぶ。
「廊下で待機するなり、中に入るなりお好きにどうぞ」
『自分は何も関与しない』と主張し、公爵は数歩後ろへ下がった。
壁に寄り掛かって腕を組む彼の前で、僕は扉と向き合う。
死体の横で膝をつき、銀髪の美丈夫はどことなく表情を強ばらせる。
「皇城でたまたま一度だけ見掛けたことがある程度の間柄だが、この顔・この髪・この体つき……間違いない────ルーナ・ブラン・ルーチェ皇妃殿下だ」
「!?」
カッと目を見開く僕は、あの女の死体と銀髪の美丈夫を交互に見つめた。
こ、この女が皇妃……?じゃあ、僕の本当の父親ってまさか……いや、もしそうなら何でこんなところに居るんだ?
普通、皇城で何不自由なく暮らしている筈だろう?
多くの疑問が脳裏を過ぎり、僕は何がなんだか分からなくなる。
帝国をまとめる一族が実父の候補として上がるなんて、夢にも思わなかったから。
『死のうと考えていた矢先にこんな展開……』と衝撃を受ける中、銀髪の美丈夫はチラリとこちらを見た。
「……よく見ると、この子供────ルーナ皇妃殿下とエルピス皇帝陛下に似ているな」
「!!」
『エルピス皇帝陛下』という単語に反応し、僕はギュッと胸元を握り締める。
もう期待なんてしちゃダメだと分かっているのに……この高鳴る鼓動を止められなかった。
『もしかしたら、僕の実父は……』と思案していると、銀髪の美丈夫が立ち上がる。
「念のため確認するが、お前はこの方の息子か?」
手であの女の死体を示し、銀髪の美丈夫は『どうなんだ?』と問い掛けてきた。
それに対し、僕は
「は、はい……!親子です!」
と、首を縦に振る。
すると、銀髪の美丈夫は直ぐさま踵を返した。
「分かった。では、一先ずお前は連れて帰る」
という宣言通り、銀髪の美丈夫────改め、リエート・ラスター・バレンシュタイン公爵は実父候補の居る帝都まで連れていってくれた。
そこで最上級のおもてなしを受け、皇城近くの別邸で待機する。
公爵は今、陛下に会いに行っているって聞いたけど……いつ、帰ってくるかな?
いい知らせを持ってきてくれると、いいな。
などと考えているうちに、公爵が帰ってきて服を着替えるよう指示された。
『お忍びで陛下もここに来ている』と述べる彼に、僕は目を輝かせる。
ついに実父……と言っても、まだ可能性の段階だが。でも、陛下に会えるのはとても楽しみだった。
『どんな人なんだろう?』と浮かれながら正装に身を包み、僕は陛下の居る部屋まで足を運ぶ。
「廊下で待機するなり、中に入るなりお好きにどうぞ」
『自分は何も関与しない』と主張し、公爵は数歩後ろへ下がった。
壁に寄り掛かって腕を組む彼の前で、僕は扉と向き合う。
117
お気に入りに追加
3,401
あなたにおすすめの小説
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
(完結)逆行令嬢の婚約回避
あかる
恋愛
わたくし、スカーレット・ガゼルは公爵令嬢ですわ。
わたくしは第二王子と婚約して、ガゼル領を継ぐ筈でしたが、婚約破棄され、何故か国外追放に…そして隣国との国境の山まで来た時に、御者の方に殺されてしまったはずでした。それが何故か、婚約をする5歳の時まで戻ってしまいました。夢ではないはずですわ…剣で刺された時の痛みをまだ覚えていますもの。
何故かは分からないけど、ラッキーですわ。もう二度とあんな思いはしたくありません。回避させて頂きます。
完結しています。忘れなければ毎日投稿します。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる