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第三章

交戦③

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「上の結界で風の刃を、下の結界で炎の壁を防いでその間に体をめり込ませたのか。かなり強引な手だが、悪くない」

 『現に通用している訳だしな』と言い、父はスッと目を細めた。

「魔物なしでもここまで戦えるのか、第二皇子は」

「まだまだ荒削りなところはありますが、将来有望ですね!」

 隣に座るイージス卿は明るく笑い、グッと手を握り締める。
『絶対、もっと強くなりますよ!』と力説する彼を前に、父は大きく息を吐いた。
相手は反逆者なんだが、と呆れながら。

「何はともあれ、そろそろ殿下から助力を仰がれてもおかしくないな」

 両者一歩も引かない戦いである上、こちらには時間制限だってあるため、光の公爵様の参戦はもう目と鼻の先だった。
おもむろに塀の上へ立つ父の横で、イージス卿も起立する。

「じゃあ、ベアトリスお嬢様は俺が……」

「いや、このまま抱いて戦うからいい」

 『お前は脱出時の運搬役だ』と言い切り、父は私の譲渡を拒絶した。

 間違いなく戦いにくいと思うけど、遠征のときはこのスタイルで難なく魔物を討伐出来ていたから……何も言えないわね。

 早くも諦めの境地に入る私は、父に身を委ねる。
────と、ここでグランツ殿下がこちらを振り返った。

「公爵悪いけど、力を貸してほしい……!」

「分かりました」

 二つ返事で応じる父は、いつものように聖剣へ手を掛けた。
が、例の如く抜けない。

 魔物を生み出した人物に対抗するためとはいえ、相手はまだ子供だものね。
聖剣が抜刀を渋るのも、無理はないと思う。

 『私でも躊躇う』と思案する中、父は素直に手を下ろす。

「……今回は素手で行くか」

「さすがに聖剣はオーバーキルだもんな」

 ルカはこちらを振り向いて、『賢明な判断だ』と頷く。

「てか、公爵様という存在そのものが過剰戦力だよなぁ……」

 身を持って父の強さを知っているせいか、ルカの言葉には説得力があった。
『マジでチート過ぎ』とボヤく彼を他所に、ジェラルドは浮遊魔法でグランツ殿下の元へ行く。

「チッ……!マジで懲りねぇーな。タビアや公爵様には、見向きもしねぇーじゃん。まあ、確かにこの面子の中だと一番狙いやすいけどよ」
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