愛する婚約者に殺された公爵令嬢、死に戻りして光の公爵様(お父様)の溺愛に気づく 〜今度こそ、生きて幸せになります〜

あーもんど

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第三章

当主《ジェラルド side》④

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「お前を今、ここで殺せば……きっと、まだ間に合う!陛下は許してくださる!」

 そう言うが早いか、伯父は思い切り僕の首を絞めた。
とにかく戦争だけは不味いと判断して、このような蛮行に至ったらしい。

 まあ、ある意味正しい選択だな。でも────きちんと相手の力量を見極めた方がいい。

 おもむろに手のひらを前へ突き出し、僕は風の刃を放った。
と同時に、執事が伯父の右腕を引っ張る。
そのせいで、急所を外してしまった。

「っ……!?」

 左肩に切り傷を負った伯父は、思わずといった様子で僕の首から手を離す。
そして、患部を押さえた。

「ジェラルド、お前……!」

「すみません。首を絞められたことに動揺して、咄嗟に反撃してしまいました」

 赤くなっているであろう自身の首に触れつつ、僕は眉尻を下げる。
『わざとじゃないんですよ』と告げ、大袈裟なくらい肩を落とした。

「本当に申し訳ありません。お詫びに侯爵家の財産を一部差し上げます。この家を出るとしたら、先立つものが必要になるでしょうし」

 除籍による一番の不安────金銭不足を解消してやると、伯父と祖母は僅かに表情を和らげた。
『それなら、しばらくやって行ける』と安堵し、互いに顔を見合わせる。
と同時に、どちらともなく頷き合った。

「じゃあ、金庫にある金を全てくれ」

「分かりました」

 侯爵家の財産なんてちっとも興味がないため、僕は笑顔で首を縦に振った。
執事に金を用意するよう命じ、ついでに除籍処分の手続きも行う。
『これでうるさい奴らを一掃出来る』と思案しながら、さっさと祖母と伯父を追い出した。

 前侯爵からの指名を受けたとはいえ、当主の座を他のやつに奪われない保証はどこにもないからね。
何より、これからやろうとしていることに身内や親戚から口を挟まれるのは面倒だ。

 『一人の方がやりやすい』と考え、僕はほとんどの使用人を解雇した。
まあ、こちらから言わなくても自主的に退職を望んだだろうが。
『反乱軍の仲間なんて、嫌だろうからね』と思いつつ、僕はガランとなった建物内で一息つく。

 あとは一ヶ月後の開戦を待つだけ。
本音を言うと、もっと早く攻め込みたいところだけど……相手に降伏の余地を与えないと、戦争として成り立たないため仕方なく我慢している。
これは子供のお遊びではない、と示すためにも。

 『相手に冗談として流す隙を与えてはいけない』と考え、僕は大人しく待機する。
戦争で勝利する未来を思い描きながら。

「戦力差は大きいけど、魔物を使えばある程度補える……公爵にさえ気をつけておけば、大丈夫だ」

 『まあ、そもそも参戦するかも分からないし』と肩を竦め、僕はゆるりと口角を上げた。
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