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第二章

皇帝の後悔①

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◇◆◇◆

「────だから、余はこれまでジェラルドに厳しく接することが出来なかった……」

 『余のワガママで生まれてきた子だから……』と零し、エルピス皇帝陛下は表情を曇らせた。
かと思えば、ルーナ皇妃殿下の日記を眺めてそっと目を伏せる。

「だが、今思えばその対応は明らかに間違っていた。きちんと過去のことを問い質し、どうやって折り合いを付けるか……その指南をするべきだった」

 『甘やかすだけではダメだった』と語り、エルピス皇帝陛下は苦悩に満ちた表情を浮かべる。
まさか、ルーナ皇妃殿下の命を奪ったのがジェラルドだったなんて……思いもしなかったのだろう。
たまたま、三人で暮らしていたところに魔物が現れ、ジェラルドのみ助かったという流れを期待していた筈だ。

「余は何故いつも手遅れになったタイミングで、間違いに気づくのか……」

 『もっと早く気づいていれば……』と後悔するエルピス皇帝陛下に、グランツ殿下はスッと目を細める。
と同時に、立ち上がった。

「お言葉ですが、父上は────現実から、目を背けてきただけだと思います。間違いそのものには、かなり早い段階から気がついていて……でも、ソレを認めたら自分が苦しくなるから見ないフリをする。そうこうしているうちに間違いは表面化していき、やがて手遅れとなるのです」

 項垂れるエルピス皇帝陛下へ厳しい言葉を投げ掛け、グランツ殿下は陛下の肩を掴んだ。
まるで、逃がさないとでも言うように。

「こうなったのは、全て貴方のせいです。『気づかなかった』なんて、言い訳……使わないでください」

 不可抗力というものを正面から否定し、グランツ殿下は歯を食いしばる。
魔物の生成も、ジェラルドの不幸も……全て自分の父親から始まったことなのかと思うと、やるせないのだろう。

「……そう、だな。余が全て悪かった」

 今にも泣きそうな顔でグランツ殿下を見やり、エルピス皇帝陛下は小さく肩を落とした。
他の誰でもない自分の息子に罪を突きつけられるのは、相当堪えたらしい。
それから、しばらく沈黙した。
が、何とか平静を取り戻し、こちらへ視線を向ける。

「それで────貴様らは余に何を求める?ジェラルドをどうしたいのだ?」
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