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第二章

魔法薬③

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「お父様はお飲みにならなくても、よろしいんですか?」

 ユリウスやグランツ殿下と同様徹夜している筈なので、私は少しばかり心配になる。
『お父様も飲んだ方がいいのではないか』と思案する中、彼はフッと笑みを漏らした。

「私は大丈夫だ。たった一晩眠れなかったくらいで、体調を崩すほどヤワじゃない」

「ちょっと、待ってください!その言い回しだと、遠回しに私達のことを貶してません!?」

 『異議あり!』とでも言うように片手を挙げ、ユリウスは身を乗り出す。
が、父はどこ吹く風だ。

「そんなことより、ベアトリス。陛下の説得には、私も協力することになっているんだ」

「えっ?あの……私の話は!?」

「本当は殿下に全てお任せしたかったんだが……一人だと心許ない、と仰ってな」

「いや、まさかの無視ですか、公爵様……!」

 ユリウスはブンブンと大きく手を振って、自分の存在をアピールするものの……見事スルーされる。
取り付く島もないような父の対応に心が折れたのか、彼はグスグスと鼻を鳴らしながらパンをちぎった。
『私なんて、どうせどうせ……』といじける彼を他所に、グランツ殿下は口直しにスープを飲む。
と同時に、こちらへ視線を向けた。

「実はジェラルドの過去を聞きに行った際、父上の機嫌を損ねてしまってね。まず、謁見を許可されるかどうかも分からないんだ。だから、公爵も一緒に行ってくれた方が安心というか……少なくとも、謁見を拒否されることはないと思う」

 『公爵はそれくらい凄い存在だからね』と言い、グランツ殿下はニッコリと微笑んだ。
先程より顔色の良くなった彼を前に、父は優しく私の頭を撫でる。

「そういう訳だ。話し合いの席には、ベアトリスも同席する・・・・・・・・・・から準備しておくように」

「……えっ?」

 まさか、ここで自分の名前が出てくるとは思わず……目を白黒させる。
『何がどうしてそうなったの……?』と困惑する私を前に、父は小さな溜め息を零した。

「本当は私だって、連れて行きたくないんだが……またいつ魔物に襲われるか、分からないからな。目の届く範囲に居てほしい」
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