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第二章
逃げない《ルーナ side》③
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「ありったけの魔力を込めて、結界を……」
万が一にも壊れないよう半透明の壁で指輪を覆い、私は洋間へ戻った。
『この辺りに外れやすい床板があった筈……』と考え、身を屈める。
普通に外へ出て埋めてもいいけど、土を掘り起こしたような跡があれば□□□に気づかれるかもしれない……。
だから、出来る限り分かりづらいところに保管したい。
『室内は言うまでもなく、アウト』と思案しながら、私は例の床板を外した。
露わになった土を前に、私は十センチほど穴を掘る。
本当はもう少し深く掘りたかったが、先程から物音がしなくなったため焦りを覚えたのだ。
もうアッシュを殺されてしまったかもしれない、と。
もし、そうならいつこちらへ来てもおかしくないため、私は急いで指輪を埋めた。
床板も元に戻し、何とか役割を終える。
────と、ここで窓から差し込む日の光を何かに遮られた。
と同時に、家の壁を壊される。
いや、腐らされると言った方が正しいか……。
「□、□□□……」
恐ろしい怪物達を従えて現れた少年に、私は本能的な恐怖を覚える。
『嗚呼、これから殺されてしまうんだ』と悟る中、□□□はゆっくりとこちらへ手を伸ばした。
それに合わせて、一体の怪物が身を乗り出し────私の頬を鷲掴みにした。
かと思えば、天井まで持ち上げられる。
体に力が入らない……これも怪物の能力かしら?それとも、恐怖のせい?
『それに何故か、腐敗臭が……』などと考えていると、勢いよく床へ叩きつけられた。
『っ……!』と声にならない声を上げる私は、身を縮める。
と同時に、また頬を鷲掴みにされ、持ち上げられた。
そして、再び落とされる……この繰り返し。
多分、□□□は出来るだけ長く私を苦しめるつもりなんだわ。
自分の受けてきた痛みを少しでも返そう、と思って。
『なら、受け入れるべきよね』と肩の力を抜く中、鈍い音が鳴り響いた。
その瞬間、頭に激痛が走る。
恐らく、当たりどころが悪かったのだろう。頭から、血を流していた。
床に広がる赤い液体を前に、私は自分の死期を悟る。
これが最後……最期なんだ。
グッと手を握り締め、僅かに視線を上げる私は霞む視界で必死に金髪赤眼の少年を探した。
最期にこれだけは伝えておきたい、と思って。
「□、□□……」
か細い声で我が子の名前を呼び、私は僅かに目を細める。
「ご、めんね────愛しているわ」
本当は謝罪だけのつもりだったのに、つい言っしまった。
我が子を慈しむ言葉を。
『私にそんな権利ないのに……』と後悔しつつも、もう弁解する気力なんて残っておらず……睡魔に誘われるまま、そっと目を瞑った。
万が一にも壊れないよう半透明の壁で指輪を覆い、私は洋間へ戻った。
『この辺りに外れやすい床板があった筈……』と考え、身を屈める。
普通に外へ出て埋めてもいいけど、土を掘り起こしたような跡があれば□□□に気づかれるかもしれない……。
だから、出来る限り分かりづらいところに保管したい。
『室内は言うまでもなく、アウト』と思案しながら、私は例の床板を外した。
露わになった土を前に、私は十センチほど穴を掘る。
本当はもう少し深く掘りたかったが、先程から物音がしなくなったため焦りを覚えたのだ。
もうアッシュを殺されてしまったかもしれない、と。
もし、そうならいつこちらへ来てもおかしくないため、私は急いで指輪を埋めた。
床板も元に戻し、何とか役割を終える。
────と、ここで窓から差し込む日の光を何かに遮られた。
と同時に、家の壁を壊される。
いや、腐らされると言った方が正しいか……。
「□、□□□……」
恐ろしい怪物達を従えて現れた少年に、私は本能的な恐怖を覚える。
『嗚呼、これから殺されてしまうんだ』と悟る中、□□□はゆっくりとこちらへ手を伸ばした。
それに合わせて、一体の怪物が身を乗り出し────私の頬を鷲掴みにした。
かと思えば、天井まで持ち上げられる。
体に力が入らない……これも怪物の能力かしら?それとも、恐怖のせい?
『それに何故か、腐敗臭が……』などと考えていると、勢いよく床へ叩きつけられた。
『っ……!』と声にならない声を上げる私は、身を縮める。
と同時に、また頬を鷲掴みにされ、持ち上げられた。
そして、再び落とされる……この繰り返し。
多分、□□□は出来るだけ長く私を苦しめるつもりなんだわ。
自分の受けてきた痛みを少しでも返そう、と思って。
『なら、受け入れるべきよね』と肩の力を抜く中、鈍い音が鳴り響いた。
その瞬間、頭に激痛が走る。
恐らく、当たりどころが悪かったのだろう。頭から、血を流していた。
床に広がる赤い液体を前に、私は自分の死期を悟る。
これが最後……最期なんだ。
グッと手を握り締め、僅かに視線を上げる私は霞む視界で必死に金髪赤眼の少年を探した。
最期にこれだけは伝えておきたい、と思って。
「□、□□……」
か細い声で我が子の名前を呼び、私は僅かに目を細める。
「ご、めんね────愛しているわ」
本当は謝罪だけのつもりだったのに、つい言っしまった。
我が子を慈しむ言葉を。
『私にそんな権利ないのに……』と後悔しつつも、もう弁解する気力なんて残っておらず……睡魔に誘われるまま、そっと目を瞑った。
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