125 / 265
第二章
約束《ルカ side》①
しおりを挟む
「ただ、様々な制約を受けることになる。本来干渉出来ない場所へ来たというだけでも異例なのに、お前の存在しない時間軸へ行くのだからな」
『今までのように過ごせるとは思わない方がいい』と告げ、タビアは不意に手を止める。
「まず、過去に戻ったらお前は精神体になる。肉体は持てない」
「えっ?」
ピシッと固まり、頬を引き攣らせる俺は『つまり、目に見えないってこと?』と混乱する。
早くも雲行きの怪しくなってきた逆行に不安を覚えていると、タビアはペンを置いた。
「安心しろ。一生そのまま、という訳ではない。ルカを召喚した日時、場所、魔法陣でお前の肉体をまた呼び出せば元に戻る。ただ、その間は肉体なしで生活しないといけないだけだ」
「全然、『だけ』ではないけど……まあ、最終的に元へ戻れるならいいか」
『そこまで贅沢は言えないよな』と何とか自分を納得させ、俺はポリポリと頬を搔いた。
「でも、精神体でどうやってお前らに接触すればいいんだ?まさか、俺だけ肉体を取り戻すまで待機……じゃないよな?」
遡る日数にもよるが、下手したら何年も精神体の状態で過ごす羽目になる。
なので、出来れば何かの役割と仲間への接触を持ちたかった。
元の世界へ戻るよりマシだけど、何年も孤独に暮らすのはちょっとな……。
肉体なしだと、出来ることは限られてくるし……それこそ、ボーッとするくらいしか。
『めちゃくちゃ暇を持て余しそう』と思案する中、タビアは突然自身の髪を一本抜いた。
「特定の人物とは、普通に接触出来るよう取り計らう。あと、こちらの世界の力である魔法は自由に使える筈だから、きっちり働いてもらうつもりだ」
『公爵の娘の護衛とか、な』と語り、タビアはグランツの髪へ手を伸ばした。
かと思えば、一も二もなく乱暴に引っこ抜く。
『こいつ、遠慮ってもんを知らないのか……』と苦笑する俺を他所に、タビアは二本の髪の毛を魔法陣に載せた。
「一応、公爵の娘とも接触出来るようにしておいた方がいいか。殺した犯人を特定するためにも、記憶は残すようにして……あっ、公爵の娘の髪って持ってないか?」
不意に顔を上げたタビアは、『体の一部であれば、何でもいいんだが』と補足する。
恐らく、効果対象を指定するために必要なんだろう。
「えっと、確か犯行現場にあった血液なら採取してあるけど」
「じゃあ、ソレを持ってきてくれ」
「分かった」
コクリと頷いて席を立つグランツは、一度隣室に引っ込むと、小瓶を持って戻ってきた。
魔道具の一種なのか、中に入っている血液は新鮮なまま保管されている。
少なくとも、凝血している様子はない。
「はい、どうぞ」
「ああ」
グランツから受け取った小瓶を魔法陣の上に置き、タビアは『これで材料が揃った』と呟く。
でも、まだ細かい調整は必要みたいでグランツに何かの計算を任せていた。
「あぁ、そうだ。ルカにもう一つ伝えなければ、ならないことがある」
『今までのように過ごせるとは思わない方がいい』と告げ、タビアは不意に手を止める。
「まず、過去に戻ったらお前は精神体になる。肉体は持てない」
「えっ?」
ピシッと固まり、頬を引き攣らせる俺は『つまり、目に見えないってこと?』と混乱する。
早くも雲行きの怪しくなってきた逆行に不安を覚えていると、タビアはペンを置いた。
「安心しろ。一生そのまま、という訳ではない。ルカを召喚した日時、場所、魔法陣でお前の肉体をまた呼び出せば元に戻る。ただ、その間は肉体なしで生活しないといけないだけだ」
「全然、『だけ』ではないけど……まあ、最終的に元へ戻れるならいいか」
『そこまで贅沢は言えないよな』と何とか自分を納得させ、俺はポリポリと頬を搔いた。
「でも、精神体でどうやってお前らに接触すればいいんだ?まさか、俺だけ肉体を取り戻すまで待機……じゃないよな?」
遡る日数にもよるが、下手したら何年も精神体の状態で過ごす羽目になる。
なので、出来れば何かの役割と仲間への接触を持ちたかった。
元の世界へ戻るよりマシだけど、何年も孤独に暮らすのはちょっとな……。
肉体なしだと、出来ることは限られてくるし……それこそ、ボーッとするくらいしか。
『めちゃくちゃ暇を持て余しそう』と思案する中、タビアは突然自身の髪を一本抜いた。
「特定の人物とは、普通に接触出来るよう取り計らう。あと、こちらの世界の力である魔法は自由に使える筈だから、きっちり働いてもらうつもりだ」
『公爵の娘の護衛とか、な』と語り、タビアはグランツの髪へ手を伸ばした。
かと思えば、一も二もなく乱暴に引っこ抜く。
『こいつ、遠慮ってもんを知らないのか……』と苦笑する俺を他所に、タビアは二本の髪の毛を魔法陣に載せた。
「一応、公爵の娘とも接触出来るようにしておいた方がいいか。殺した犯人を特定するためにも、記憶は残すようにして……あっ、公爵の娘の髪って持ってないか?」
不意に顔を上げたタビアは、『体の一部であれば、何でもいいんだが』と補足する。
恐らく、効果対象を指定するために必要なんだろう。
「えっと、確か犯行現場にあった血液なら採取してあるけど」
「じゃあ、ソレを持ってきてくれ」
「分かった」
コクリと頷いて席を立つグランツは、一度隣室に引っ込むと、小瓶を持って戻ってきた。
魔道具の一種なのか、中に入っている血液は新鮮なまま保管されている。
少なくとも、凝血している様子はない。
「はい、どうぞ」
「ああ」
グランツから受け取った小瓶を魔法陣の上に置き、タビアは『これで材料が揃った』と呟く。
でも、まだ細かい調整は必要みたいでグランツに何かの計算を任せていた。
「あぁ、そうだ。ルカにもう一つ伝えなければ、ならないことがある」
631
お気に入りに追加
3,468
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる