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第二章

灼熱の炎①

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「後手後手に回っている上、かなり包囲網を狭められている……マジでそろそろ、犠牲者が出てもおかしくないな」

 真剣な面持ちでそう言い、ルカは『やっぱ、俺が応戦するべきか』と前を向いた。
────と、ここで急にバハルが顔を上げる。
一瞬、ルカのことを認識したのかと思って焦ったが、どうやらそうではないようで……じっと空を見つめていた。
『一体、どうしたのだろう?』と疑問に思っていると、ピンク色のキツネはクンクンと鼻を動かす。
と同時に、スッと目を細めた。

「────太陽をも呑み込む灼熱の炎が来る」

 予言めいたセリフを口にし、バハルは黄金の瞳に確信を滲ませた。
その瞬間、空から何か……赤くて熱いものが降ってくる────私達の前に。

「「「っ……!?」」」

 あまりの熱気と爆風に衝撃を受ける私達は、何が起きたのか分からず困惑した。
でも、バハルだけはやけに冷静で……突如現れたソレを警戒する素振りも見せない。
『もしや、知り合い?』と目を剥く中、砂埃は止み────赤い毛並みのトラが目に入った。
真っ赤な炎を纏うトラは私に向かって一礼すると、大きく吠える。
それを合図に、体の炎は前へ飛び出し、魔物達を襲った。

「味方……なの?」

 敵意や害意を全く感じないどころか好意を向けられているとさえ思う対応に、私は瞬きを繰り返す。
戸惑いを隠し切れない私の前で、赤いトラはあっという間に魔物を焼き払った。

「嘘……こんなにあっさり……」

 先程まで苦戦していたのが嘘のようだと驚き、私はまじまじと赤いトラを見つめた。
『普通の動物では、なさそうね』と分析する中、トラは────貧血でも起こしたかのように、フラッと倒れる。
心做しか顔色が悪く見えるトラを前に、バハルが慌てて飛び出してきた。

「ベアトリス様、早く名付けを……!」

「えっ?名付け?」

 『普通は手当てや看病をするんじゃ……?』と困惑し、私は目を白黒させる。
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