愛する婚約者に殺された公爵令嬢、死に戻りして光の公爵様(お父様)の溺愛に気づく 〜今度こそ、生きて幸せになります〜

あーもんど

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第一章

父の説得③

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 爽やかの一言に尽きるイージス卿の様子に、私は目を剥く。
『その場から一切動いていない私の方が疲れている……』と情けなく思う中、父が身を屈めてきた。
まるで、目線を合わせるかのように。

「ベアトリス」

「はい」

「精霊に会いたいか?」

 どことなく既視感を覚える質問に、私はなんだか嬉しくなった。

 お父様はいつも、私の意思を確認してくれる。
武器型魔道具の使用を許可する時だって、私に『どうしたい?』と尋ねてくれた。
それで、私が『練習してみたいです』と答えたら条件付きで許してくれたの。

 今でも鮮明に覚えている記憶を手繰り寄せ、私はじっと青い瞳を見つめ返す。

「お父様、私は精霊に会ってみたいです」

 逆行前、世界を滅亡させるためとはいえ、お父様に力を貸してくれた存在だから。
たとえ、縁を繋ぐことは出来ずとも一目見てみたかった。

「そうか……分かった。精霊に会うことを……野外研修・・・・を許可しよう」

 渋々といった様子で首を縦に振り、父は妥協する姿勢を見せた。
思わず表情を明るくする私に対し、彼はスッと目を細める。

「ただし────私も同行する。これが条件だ」

 案の定とでも言うべきか、父はこちらにも折れるよう求めてきた。
『ここまで譲歩したんだから』と訴えかけてくる彼の前で、私はチラリとグランツ殿下に目を向ける。
すると、苦笑しながら肩を竦める彼の姿が目に入った。
どうやら、父の同行を認める形で話がついているらしい。
『これ以上の交渉は無理そうだった』と口の動きだけで伝えてくる彼に、私は小さく頷いた。

「分かりました。お父様も一緒の方が心強いので、助かります」

 条件を受け入れる姿勢を見せると、父は僅かに目元を和らげる。

「そうだろう。私はこの世の誰よりも強いからな」

「はい。それにお父様とお出掛けするのは、初めてなので……」

「!!」

 ハッとしたように目を見開く父は、こちらを凝視した。
何やら衝撃を受けている様子の彼に、私はパチパチと瞬きを繰り返す。

「あっ、ちゃんと分かってますよ。あくまでこれは講義の一貫で、お遊びじゃないって」

 『ちゃんと勉強に集中する』と主張し、私は父の顔色を窺った。
まさか、外出許可を撤回するんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていると、父が何やら独り言を呟く。

「ベアトリスと初めての外出……これは最高の思い出になるよう、準備しないといけないな」
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