25 / 265
第一章
能ある鷹は爪を隠す《ジェラルド side》②
しおりを挟む
「悪いけど、ここで少し待っていてくれ。出来るだけ、早く戻ってくるから」
そう言うが早いか、青年は侍女を連れてどこかに行ってしまう。
あっという間に見えなくなった背中を前に、僕も席を立った。
ティーカップを手に持ったまま花壇に近づき、中身を掛ける。
「さてと────動くとしたら、今しかないな」
空になったティーカップをテーブルの上に戻し、僕は周囲を見回した。
誰も居ないことをしっかり確認してから、ガゼボを離れる。
が、直ぐに誰か追い掛けてきた。
恐らく、あの男の手下だろう。
『ノーマークにするつもりはないってことか』と分析しつつ、僕は魔法を使う。
僕はまだか弱い第二皇子のままで居ないといけないから、直接攻撃するのはダメだ。
とにかく姿をくらませて、あちらが見失ったことにするしかない。
非常に面倒臭い手だが、魔法を使えることはまだ内緒にしておきたいからしょうがない。
『能ある鷹は爪を隠すものだ』と自制しながら、僕は日の光を反射させた。
と同時に、遠くの茂みをわざと風で揺らす。
これで相手の気を逸らせた筈。
僕は『ジェラルド殿下!』と叫ぶ騎士を一瞥し、中庭から飛び出した。
戻ってきた時の言い訳を考えながら、城壁に到着する。
確か、この辺りに……あった。
胸辺りまである草を掻き分け、僕は抜け穴に頭を突っ込んだ。
しっかりと周囲の状況を確認し、急いで外に出る。
あとは公爵家へ行くための足を確保出来たら、上々なのだが……。
「まあ、そう都合よく馬車が通り掛かる訳ないか。仕方ない────魔法で飛んでいこう」
人目につかないルートを脳内で思い浮かべつつ、僕はふわりと宙に浮いた。
と言っても、数センチ程度だが。
『ここだと、まだ目立つからな』と思案する中、僕はバレンシュタイン公爵家のある方向を見つめる。
ベアトリス・レーツェル・バレンシュタイン……僕の踏み台であり、命綱。
待っていてくれ、必ず君を手に入れるから。
過保護なほど公爵に守られた小鳥を思い浮かべ、僕は目的地へ向かい────公爵家の門を叩いた。
そう言うが早いか、青年は侍女を連れてどこかに行ってしまう。
あっという間に見えなくなった背中を前に、僕も席を立った。
ティーカップを手に持ったまま花壇に近づき、中身を掛ける。
「さてと────動くとしたら、今しかないな」
空になったティーカップをテーブルの上に戻し、僕は周囲を見回した。
誰も居ないことをしっかり確認してから、ガゼボを離れる。
が、直ぐに誰か追い掛けてきた。
恐らく、あの男の手下だろう。
『ノーマークにするつもりはないってことか』と分析しつつ、僕は魔法を使う。
僕はまだか弱い第二皇子のままで居ないといけないから、直接攻撃するのはダメだ。
とにかく姿をくらませて、あちらが見失ったことにするしかない。
非常に面倒臭い手だが、魔法を使えることはまだ内緒にしておきたいからしょうがない。
『能ある鷹は爪を隠すものだ』と自制しながら、僕は日の光を反射させた。
と同時に、遠くの茂みをわざと風で揺らす。
これで相手の気を逸らせた筈。
僕は『ジェラルド殿下!』と叫ぶ騎士を一瞥し、中庭から飛び出した。
戻ってきた時の言い訳を考えながら、城壁に到着する。
確か、この辺りに……あった。
胸辺りまである草を掻き分け、僕は抜け穴に頭を突っ込んだ。
しっかりと周囲の状況を確認し、急いで外に出る。
あとは公爵家へ行くための足を確保出来たら、上々なのだが……。
「まあ、そう都合よく馬車が通り掛かる訳ないか。仕方ない────魔法で飛んでいこう」
人目につかないルートを脳内で思い浮かべつつ、僕はふわりと宙に浮いた。
と言っても、数センチ程度だが。
『ここだと、まだ目立つからな』と思案する中、僕はバレンシュタイン公爵家のある方向を見つめる。
ベアトリス・レーツェル・バレンシュタイン……僕の踏み台であり、命綱。
待っていてくれ、必ず君を手に入れるから。
過保護なほど公爵に守られた小鳥を思い浮かべ、僕は目的地へ向かい────公爵家の門を叩いた。
273
お気に入りに追加
3,474
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
恋した殿下、あなたに捨てられることにします〜魔力を失ったのに、なかなか婚約解消にいきません〜
百門一新
恋愛
魔力量、国内第二位で王子様の婚約者になった私。けれど、恋をしたその人は、魔法を使う才能もなく幼い頃に大怪我をした私を認めておらず、――そして結婚できる年齢になった私を、運命はあざ笑うかのように、彼に相応しい可愛い伯爵令嬢を寄こした。想うことにも疲れ果てた私は、彼への想いを捨て、彼のいない国に嫁ぐべく。だから、この魔力を捨てます――。
※「小説家になろう」、「カクヨム」でも掲載
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜
たろ
恋愛
この話は
『内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』
の続編です。
アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。
そして、アイシャを産んだ。
父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。
ただアイシャには昔の記憶がない。
だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。
アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。
親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。
アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに……
明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。
アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰?
◆ ◆ ◆
今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。
無理!またなんで!
と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。
もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。
多分かなりイライラします。
すみません、よろしくお願いします
★内緒で死ぬことにした の最終話
キリアン君15歳から14歳
アイシャ11歳から10歳
に変更しました。
申し訳ありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。
一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。
そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる