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第三章
当然の報い《ヘレス side》
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「魂に干渉し、苦しめるなんて……神のやる事とは、思えん……」
会ったこともない神に幻想でも抱いていたのか、国王は失望感を露わにした。
『一体、何を期待していたんだか……』と呆れつつ、俺は嘲笑を浮かべる。
「生憎だが、俺達は破壊神なんでね。慈悲の心なんて、持ち合わせちゃいねぇーよ」
「大体、先に一線を越えてきたのは貴方達でしよう?メイヴィスちゃんを殺さなければ、こんなことにはならなかったんだから」
怒りを通し越して呆れたのか、アイシャは『自分達のことを棚に上げて、何を言っているの』と嘆息した。
正論を突きつけられた国王は、返す言葉もないのか、悔しそうに口を閉ざす。
メイヴィス様の件を持ち出されると、強く出られないらしい。
「世界の平和を壊したのは、貴方達よ。目先の欲望に囚われて、禁忌を犯したのだから」
「確かにそうだな……否定はしない。ワシは愚息の暴走を止めるどころか、煽ってしまったのだから。『都合のいい操り人形が聖女になってくれれば、国の利益に繋がる』と思ってしまったのが、運の尽きか……」
意外にも潔く罪を認めた……いや、開き直った国王は『さあ、殺せ』と言わんばかりに天を仰ぐ。
みっともなく喚き散らすことも、命乞いをすることもなく死を待つ彼に、俺は思わず舌打ちした。
そうやって、命を差し出せば何でも許されると思ってんのか?だとしたら、実に愚かだな。
死んでも尚、俺達の復讐は終わらないのに……むしろ、地獄に来てからが本番とも言える。
「まあ、情けない絶叫や悲鳴は後でじっくり聞くとするか」
『時間はたっぷりあるんだから』と自分に言い聞かせ、俺は歩みを進めた。
玉座の前で足を止めると、俺は国王の胸元に手を伸ばす。そして────彼の魂を鷲掴みにした。
「ぐはっ……!?」
肉体に危害は加えていないというのに、国王は吐血した。
返り血まみれになった自身の手を見下ろし、俺はニヒルに笑う。
「まあ、せいぜい苦しめよ」
その言葉を合図に、俺は邪悪に染まった神聖力を国王に流し込んだ。
「ぁ……がっ……ぐぎぃ……」
魂に直接注入したせいか、国王は痛みのあまり喉元を掻きむしる。
焦点の合わない目には血の涙が滲み、口端から白い泡を溢れさせた。
やがて、体を支える力もなくなり、玉座に倒れ込む。
生きた人間の魂に神聖力を注ぎ込む行為は、拷問と変わらない。
症状は異なるものの、大体が拒否反応を起こし、死に至るから。
普通の人間では、神聖力の負荷に耐えきれないのだ。
「あ”ぁ……ぐっ……」
まだ死んでいなかったのか、国王は必死に酸素を貪る。
痛みに呻く彼の体内で、神聖力は容赦なく暴れ回った。
全身の血液をお湯のように沸かし、細胞組織を尽く破壊する。まさに拷問のような仕打ちだった。
まあ、メイヴィスを追い詰めた犯人の一人と思えば、当然の報いだが……。
白目を向いて気絶する国王に、同情心なんて一切湧かなかった。
『最後の最後まで苦しみ抜いて死ね』と吐き捨て、俺は踵を返す。
「帰るぞ、アイシャ」
「あら、もういいの?」
「ああ。どうせ、後でいくらでも痛めつけられるからな。『今』にこだわる理由はない」
手についた返り血をズボンで拭きつつ、俺は歩みを進めた。
『それもそうね』と納得するアイシャを前に、俺は大量の神聖力を引き出す。
そして、彼女の腰を抱き寄せると────天界へ帰還した。
会ったこともない神に幻想でも抱いていたのか、国王は失望感を露わにした。
『一体、何を期待していたんだか……』と呆れつつ、俺は嘲笑を浮かべる。
「生憎だが、俺達は破壊神なんでね。慈悲の心なんて、持ち合わせちゃいねぇーよ」
「大体、先に一線を越えてきたのは貴方達でしよう?メイヴィスちゃんを殺さなければ、こんなことにはならなかったんだから」
怒りを通し越して呆れたのか、アイシャは『自分達のことを棚に上げて、何を言っているの』と嘆息した。
正論を突きつけられた国王は、返す言葉もないのか、悔しそうに口を閉ざす。
メイヴィス様の件を持ち出されると、強く出られないらしい。
「世界の平和を壊したのは、貴方達よ。目先の欲望に囚われて、禁忌を犯したのだから」
「確かにそうだな……否定はしない。ワシは愚息の暴走を止めるどころか、煽ってしまったのだから。『都合のいい操り人形が聖女になってくれれば、国の利益に繋がる』と思ってしまったのが、運の尽きか……」
意外にも潔く罪を認めた……いや、開き直った国王は『さあ、殺せ』と言わんばかりに天を仰ぐ。
みっともなく喚き散らすことも、命乞いをすることもなく死を待つ彼に、俺は思わず舌打ちした。
そうやって、命を差し出せば何でも許されると思ってんのか?だとしたら、実に愚かだな。
死んでも尚、俺達の復讐は終わらないのに……むしろ、地獄に来てからが本番とも言える。
「まあ、情けない絶叫や悲鳴は後でじっくり聞くとするか」
『時間はたっぷりあるんだから』と自分に言い聞かせ、俺は歩みを進めた。
玉座の前で足を止めると、俺は国王の胸元に手を伸ばす。そして────彼の魂を鷲掴みにした。
「ぐはっ……!?」
肉体に危害は加えていないというのに、国王は吐血した。
返り血まみれになった自身の手を見下ろし、俺はニヒルに笑う。
「まあ、せいぜい苦しめよ」
その言葉を合図に、俺は邪悪に染まった神聖力を国王に流し込んだ。
「ぁ……がっ……ぐぎぃ……」
魂に直接注入したせいか、国王は痛みのあまり喉元を掻きむしる。
焦点の合わない目には血の涙が滲み、口端から白い泡を溢れさせた。
やがて、体を支える力もなくなり、玉座に倒れ込む。
生きた人間の魂に神聖力を注ぎ込む行為は、拷問と変わらない。
症状は異なるものの、大体が拒否反応を起こし、死に至るから。
普通の人間では、神聖力の負荷に耐えきれないのだ。
「あ”ぁ……ぐっ……」
まだ死んでいなかったのか、国王は必死に酸素を貪る。
痛みに呻く彼の体内で、神聖力は容赦なく暴れ回った。
全身の血液をお湯のように沸かし、細胞組織を尽く破壊する。まさに拷問のような仕打ちだった。
まあ、メイヴィスを追い詰めた犯人の一人と思えば、当然の報いだが……。
白目を向いて気絶する国王に、同情心なんて一切湧かなかった。
『最後の最後まで苦しみ抜いて死ね』と吐き捨て、俺は踵を返す。
「帰るぞ、アイシャ」
「あら、もういいの?」
「ああ。どうせ、後でいくらでも痛めつけられるからな。『今』にこだわる理由はない」
手についた返り血をズボンで拭きつつ、俺は歩みを進めた。
『それもそうね』と納得するアイシャを前に、俺は大量の神聖力を引き出す。
そして、彼女の腰を抱き寄せると────天界へ帰還した。
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