断罪されし真の聖女は滅びを嘆く

第三章

本音

　『幻滅されたかもしれない』と不安になる私は、服の裾をギュッと握り締めた。
出来ることなら、このまま部屋に帰りたいが……そうもいかない。これ以上、現実から逃げる訳にはいかなかった。
私は胸の奥に渦巻く恐怖心を何とか抑え込み、ゆっくりと顔を上げる。
そして、視線をさまよわせると────苦々しい表情を浮かべる彼らの姿が目に入った。

　あぁ、やっぱり……こうなるわよね。何となく、分かっていたわ。

「────失望……しましたよね。自ら死を選ぶなんて、正気の沙汰とは思えませんし……」

　『ごめんなさい』と謝罪する私は、小さく頭を下げた。
上手く立ち回れなかったことを深く後悔しながら、私は目尻に涙を浮かべる。
でも、ここで泣くのは卑怯だと思い、グッと堪えた。
様々な感情に押し潰されそうになる中────旦那様は慌てて身を乗り出す。

「それは違う！ただの勘違いだ！僕達はメイヴィスに失望したことなど、一度もない！不謹慎かもしれないけど────生きることより、僕への愛を優先してくれて、凄く嬉しかった！」

　『王子の提案を跳ね除けてくれて、ありがとう』と語る旦那様は、真剣な面持ちでこちらを見据える。
誠実さを感じる眼差しに動揺する私は、大きく目を見開いた。
『まさか、本音……なの？』と困惑する中、カシエル達も必死に言葉を紡ぐ。

「バカ王子の言いなりにならなかったこと、誇りに思います！絶対に失望なんかしません！」

「そうよ！むしろ、よくやってくれたと思うわ！」

「メイヴィスに落ち度なんて、微塵もねぇーよ！」

「命を懸けて、レーヴェン様への想いを貫いたことに、私は尊敬の念すら感じます！」

　畳み掛ける勢いで本音を叫ばれ、私は目を白黒させた。
予想とは真逆の反応に、ひたすら戸惑うものの……何とか事情を呑み込む────と同時に心底ホッとした。

　良かった……！失望された訳じゃなかったのね！

「早とちりしてしまい、申し訳ございません……！それから、私の選択意思を尊重してくださり、ありがとうございます！」