断罪されし真の聖女は滅びを嘆く

あーもんど

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第二章

醜い女《トリスタン side》

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「そうですね、結論から先に言いましょうか────トリスタン王子、また私と手を組んでください」

 優雅な所作で手を差し出したロゼッタは、スッとエメラルドの瞳を細めた。
差し出された手には、ところどころ傷がある。
彼女なりに色々努力した結果、もう私に頼るしかないと判断したのだろう。

 ロゼッタはメイヴィスを意図も簡単に、聖女の座から引きずり下ろした策士だ。
仲間にすれば、心強い味方となるだろう。だが、しかし……この女狐を信用していいものなのか……。
あの時はメイヴィスを手に入れるのに必死で気づかなかったが、こいつは少々危なっかしいところがある。
ギャンブラーとでも言おうか……こいつは欲しいものを手に入れるためなら、何でもするのだ。たとえ、どんなにリスクが高くても……。

「この事態をどうやって、解決すると言うんだ?私達が何をしても、異常現象は終わらないぞ?それを止める手立てでも、あるのか?」

「いえ……残念ながら、この異常事態を止める手立てはありません。まだこうなった原因すら、分かっていませんから……ですが、この状況を引っ掻き回すことは出来ます」

 ニヤリと怪しい笑みを浮かべるロゼッタからは、不穏な香りしかしない……。
みなが敬う心優しい聖女様は、そこには居なかった。

 醜い女だ……やはり、メイヴィスこそがこの世で一番美しい。
ロゼッタも顔は悪くないが、内面から滲み出る黒いオーラが魅力を半減させている。
嗚呼、本当に─────美しくない。

「まずは関係者数人を、異常事態を引き起こした犯人に仕立て上げるんです。各国のトップも貴族も民衆も、攻撃すべき相手を探しているので“的”さえ用意すれば、一旦静かになるでしょう。その間に事態の沈静化を図るのです」

「犯人を仕立て上げるって言っても、簡単じゃないだろ。大体この事態を引き起こした原因は、どうやって説明するんだ?原因が説明出来なければ、犯人を仕立てることなんて出来ないぞ」

 『話にならない』と言わんばかりにかぶりを振ると、ロゼッタはキョトンとした表情を浮かべた────かと思えば、納得したように頷く。

「トリスタン王子は、あの噂をご存知ないんですね」

「あの噂……?一体、何のことだ?」

 最近部屋に籠ってばかりで、まともに外へ出ようとしない私は、情報に疎い。
報告書にはきちんと目を通しているが、余計な噂話に耳を傾けるほど暇でもなかった。

 噂話がなんだと言うのだ。所詮は卑しい平民共の妄想話だろう?

 怪訝そうに眉を顰める私に、ロゼッタは内緒話でもするかのように、声を潜める。

「落ち着いて、聞いてください。実は今、王都で────異常現象の原因は元聖女メイヴィスの祟りではないか、と噂されているんです」
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