37 / 112
第二章
再会
しおりを挟む
次の日……と言っていいのか分からないが、私はまた一眠りして、目を覚ました。
晴れ晴れとした青空を眺めながら、もぞもぞと起き上がる。
『何時間くらい、眠ったんだろう?』と疑問に思いつつ、私はベッドから降りた。
乱れた服や髪を整える中────不意に部屋の扉をノックされる。
どこか懐かしいリズムに目を細めつつ、私は『どうぞ』と声を掛けた。
「────失礼します」
扉越しに聞こえた声は、聞き覚えがあって……思わず目を見開く。
『まさか……』と絶句する中────扉の向こうから、見知った人物が姿を現した。
「────ハワード……?」
「はい」
「ほ、本当にハワードなの……?」
「はい」
淡々とした様子で返事をするハワードは、至って冷静だった。
生前と変わらぬ彼の態度に、私は『本物のハワードだ』と確信する。
そして、一気に色んな感情を溢れさせ────私はポロポロと大粒の涙を零した。
再会なんて、有り得ないと諦めていたのに……またハワードに会えるなんて!まるで、夢のようだわ!
喜びに満ち溢れる私は、嗚咽を漏らしながらもニッコリ笑う。
人知れず感動に浸る中、ハワードは深々と……本当に深々と頭を下げた。
「レーヴェン様の温情で天使となり、メイヴィス様のお世話を命じられました。もしも、ご迷惑でなければ────今後も、お仕えすることをお許しください」
私のお世話……?じゃあ、これからも一緒に居られるの……?
天使になったことよりも、お世話係に任命されたことに反応を示す私は、大きく目を見開いた。
息が詰まるほどの喜びと幸せを感じ、私は膝から崩れ落ちそうになる。
また以前のように過ごせるのかと思うと、嬉しくて……声すら、まともに出せなかった。
意図せず沈黙を守る中、ハワードは言葉を続ける。
「ご不満であれば、遠慮なく仰ってください。メイヴィス様をお守りできなかった私に、温情など不要です」
自責の念に駆られるハワードは、『要らないなら、捨てろ』と主張した。
自分のことをまるで物のように扱う彼に、私は困惑するものの……真剣味を帯びた声色や眼差しから、本気であることはよく分かった。
天使の証である純白の翼を一瞥し、私は何とか声を絞り出す。
「それを言うなら、私だって……!ハワードを騒動に巻き込んでしまったわ!」
「いえ、『巻き込まれた』とは思っていません。私はメイヴィス様のお世話係兼教育係として、当然のことをしたまでです。まあ、最後まで守りきることは出来ませんでしたが……」
「そんなことは……!」
「慰めは結構です。その代わり、私に罰をお与えください。魂を破壊されても、文句はありません」
こちらの反論を跳ね除け、ハワードは重すぎる罰を提示する。
いつの間にか、お世話係の話から処罰の話まで発展し、私は戸惑いを露わにした。
晴れ晴れとした青空を眺めながら、もぞもぞと起き上がる。
『何時間くらい、眠ったんだろう?』と疑問に思いつつ、私はベッドから降りた。
乱れた服や髪を整える中────不意に部屋の扉をノックされる。
どこか懐かしいリズムに目を細めつつ、私は『どうぞ』と声を掛けた。
「────失礼します」
扉越しに聞こえた声は、聞き覚えがあって……思わず目を見開く。
『まさか……』と絶句する中────扉の向こうから、見知った人物が姿を現した。
「────ハワード……?」
「はい」
「ほ、本当にハワードなの……?」
「はい」
淡々とした様子で返事をするハワードは、至って冷静だった。
生前と変わらぬ彼の態度に、私は『本物のハワードだ』と確信する。
そして、一気に色んな感情を溢れさせ────私はポロポロと大粒の涙を零した。
再会なんて、有り得ないと諦めていたのに……またハワードに会えるなんて!まるで、夢のようだわ!
喜びに満ち溢れる私は、嗚咽を漏らしながらもニッコリ笑う。
人知れず感動に浸る中、ハワードは深々と……本当に深々と頭を下げた。
「レーヴェン様の温情で天使となり、メイヴィス様のお世話を命じられました。もしも、ご迷惑でなければ────今後も、お仕えすることをお許しください」
私のお世話……?じゃあ、これからも一緒に居られるの……?
天使になったことよりも、お世話係に任命されたことに反応を示す私は、大きく目を見開いた。
息が詰まるほどの喜びと幸せを感じ、私は膝から崩れ落ちそうになる。
また以前のように過ごせるのかと思うと、嬉しくて……声すら、まともに出せなかった。
意図せず沈黙を守る中、ハワードは言葉を続ける。
「ご不満であれば、遠慮なく仰ってください。メイヴィス様をお守りできなかった私に、温情など不要です」
自責の念に駆られるハワードは、『要らないなら、捨てろ』と主張した。
自分のことをまるで物のように扱う彼に、私は困惑するものの……真剣味を帯びた声色や眼差しから、本気であることはよく分かった。
天使の証である純白の翼を一瞥し、私は何とか声を絞り出す。
「それを言うなら、私だって……!ハワードを騒動に巻き込んでしまったわ!」
「いえ、『巻き込まれた』とは思っていません。私はメイヴィス様のお世話係兼教育係として、当然のことをしたまでです。まあ、最後まで守りきることは出来ませんでしたが……」
「そんなことは……!」
「慰めは結構です。その代わり、私に罰をお与えください。魂を破壊されても、文句はありません」
こちらの反論を跳ね除け、ハワードは重すぎる罰を提示する。
いつの間にか、お世話係の話から処罰の話まで発展し、私は戸惑いを露わにした。
24
お気に入りに追加
1,393
あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました
冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。
代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。
クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。
それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。
そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。
幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。
さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。
絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。
そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。
エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです
サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる