断罪されし真の聖女は滅びを嘆く

あーもんど

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第二章

絶望の幕開け《ロゼッタ side》

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 聖女就任式の翌日。
先日行われた豪華なパーティーとパレードのおかげでかなり機嫌のいい私は、ルンルン気分で聖女の仕事に臨んでいた。
と言っても、朝昼晩とお祈りを捧げるだけだが……。
あとは慈善活動として、治癒院のときと同じように民の怪我や病気を癒すくらいである。
ある意味、治癒魔法は私のアドバンテージであるため、定期的に民に披露する必要があったのだ。

 聖女になった途端、治癒魔法の行使をやめれば、『聖女になるためのパフォーマンスでした』と言っているようなものだもの。
馬鹿みたいに私のことを崇拝している民たちを暴走させないためにも、これくらいはやらなきゃ。

 聖女専用の祈りの間で適当にお祈りを捧げた私は、ゆっくりと立ち上がった。
まだお祈りのポーズが体に馴染んでいないのか、足腰が痛む。

「一時間も同じ体勢で居ると、結構疲れるわね」

「お疲れ様です、聖女様」

 そう言って、こちらへ歩み寄ってきたのは、お目付け役である神官の女性だった。
仄かに石鹸の香りがするタオルを手渡され、私は『ふぅ……』と息をつく。

「聖女様、お疲れのようでしたら本日の治癒魔法の行使慈善活動は中止させますが……」

「心配してくれて、ありがとう。でも、大丈夫よ。これくらい、治癒魔法で治せば問題ないわ─────《ヒール》」

 心配そうにこちらを見つめる神官にヒラヒラと手を振り、いつものように・・・・・・・呪文を唱える。
が────治癒魔法が発動することはなかった。

 え、あれ……!?どうして……!?何で魔法が発動しないの……!?
もしかして、詠唱を間違えた……?でも、たった三文字の言葉を?

 訳が分からず、混乱する私はタオルで冷や汗を拭いながら、もう一度呪文を口にした。

「《ヒール》!」

 今度は体内の魔力を意識しながら、呪文を唱えたが、効果はなし……それどころか、体内魔力がピクリとも動かない。

 初歩中の初歩である魔力操作が出来ない!?一体どういうこと!?今まではこんなこと一度もなかったのに……!!

「聖女様、どうかされましたか……?」

 恐る恐るといった様子で話しかけて来る神官は、焦りを覚える私に困惑しているようだった。
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