17 / 112
第一章
転移
しおりを挟む
旦那様は私のことを対等に扱ってくれるのね。下界では、男尊女卑の風潮が強かったから、なんだか新鮮だわ。
『天界では、これが普通なのか?』と思案しつつ、私は頬を緩める。
嬉しい気持ちでいっぱいになる中、旦那様はゆるりと口角を上げた。
「一通り話も済んだし、そろそろ僕の管理する領域へ行こうか。目的地まで転移するけど、大丈夫かい?」
「転移は初めてなのでよく分かりませんが、恐らく大丈夫です!」
「そっか。じゃあ、何かあったら遠慮なく言ってね」
「はい、分かりました!」
こちらを気遣ってくれる旦那様に一つ頷き、私はニッコリと微笑む。
転移での移動にもちろん恐怖心はあったが、それ以上に好奇心が勝っていた。
『転移って、どういう感じなのだろう?』とワクワクする中、旦那様は再度こちらに手を差し出す。
「では、手を握ってくれるかな?転移する際は、対象と接触していないとダメなんだ。まあ、転移のことがなくても、僕はメイヴィスと手を繋ぎたいけどね」
茶化すような口調でそう言ってのける旦那様は、悪戯っ子のように微笑んだ。
瞬く間に頬を紅潮させる私は、『冗談でも嬉しいわね』と目を細める。
満ち足りた気分になりながら、私は差し出された手に自身の手をそっと重ねた。
旦那様の手は私よりずっと大きくて、暖かくて……何より、とても綺麗である。
手の甲には美しい紋章があり、太陽の形を象っていた。
「それじゃあ、転移するから絶対に手を離さないでね」
繋いだ手をギュッと握り締め、旦那様はこちらに注意を促す。
『分かった』と頷く私に、満足気に微笑むと────旦那様はじわりと力を高めた。
神の力に不慣れな私でも分かるほど多くの力を引き出し、彼は意識を集中させる。
手の甲に刻まれた太陽の紋章が力の高まりに応じて、光り輝いた。
「────飛ぶよ」
そう言うが早いか、私達は白い光に包み込まれる。
反射的に目を瞑る私は、『転移って、眩しいものなのね』と驚いた。
旦那様の存在を確認するように繋いだ手をギュッと握り締める中、白い光は十秒ほどで消え去る。
好奇心に促されるまま目を開けると、そこには美しい光景が広がっていた。
『天界では、これが普通なのか?』と思案しつつ、私は頬を緩める。
嬉しい気持ちでいっぱいになる中、旦那様はゆるりと口角を上げた。
「一通り話も済んだし、そろそろ僕の管理する領域へ行こうか。目的地まで転移するけど、大丈夫かい?」
「転移は初めてなのでよく分かりませんが、恐らく大丈夫です!」
「そっか。じゃあ、何かあったら遠慮なく言ってね」
「はい、分かりました!」
こちらを気遣ってくれる旦那様に一つ頷き、私はニッコリと微笑む。
転移での移動にもちろん恐怖心はあったが、それ以上に好奇心が勝っていた。
『転移って、どういう感じなのだろう?』とワクワクする中、旦那様は再度こちらに手を差し出す。
「では、手を握ってくれるかな?転移する際は、対象と接触していないとダメなんだ。まあ、転移のことがなくても、僕はメイヴィスと手を繋ぎたいけどね」
茶化すような口調でそう言ってのける旦那様は、悪戯っ子のように微笑んだ。
瞬く間に頬を紅潮させる私は、『冗談でも嬉しいわね』と目を細める。
満ち足りた気分になりながら、私は差し出された手に自身の手をそっと重ねた。
旦那様の手は私よりずっと大きくて、暖かくて……何より、とても綺麗である。
手の甲には美しい紋章があり、太陽の形を象っていた。
「それじゃあ、転移するから絶対に手を離さないでね」
繋いだ手をギュッと握り締め、旦那様はこちらに注意を促す。
『分かった』と頷く私に、満足気に微笑むと────旦那様はじわりと力を高めた。
神の力に不慣れな私でも分かるほど多くの力を引き出し、彼は意識を集中させる。
手の甲に刻まれた太陽の紋章が力の高まりに応じて、光り輝いた。
「────飛ぶよ」
そう言うが早いか、私達は白い光に包み込まれる。
反射的に目を瞑る私は、『転移って、眩しいものなのね』と驚いた。
旦那様の存在を確認するように繋いだ手をギュッと握り締める中、白い光は十秒ほどで消え去る。
好奇心に促されるまま目を開けると、そこには美しい光景が広がっていた。
25
お気に入りに追加
1,393
あなたにおすすめの小説

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。


妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~
サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる