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第一章
旦那様
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突然抱きついてきた私に、旦那様は気を悪くするでもなく、優しく抱き締めてくれた。
布越しに伝わってくると体温とラベンダーの香りに安心して、私はポロポロと大粒の涙を流す。
荒波のように激しく揺れる感情を、私は制御出来なかった。
「ごめ、んなさい……ごめんなさいっ!本当は二十歳の誕生日まで生きなきゃいけなかったのに……!!約束を破って、ごめんなさい!!」
「謝らなくて、いいよ。別に怒ってないから。きっと、何か深い事情があったんだろう?」
よしよしと優しく頭を撫でてくれる旦那様は、『大丈夫だから』と何度も言い聞かせる。
聖女とはいえ、突然泣き出した女性を宥めるのは面倒な筈なのに……彼は嫌な顔一つしなかった。
ただ穏やかに微笑み、次から次へと溢れる涙を拭ってくれる。
初対面にも拘わらず、寛大な心で接してくれる彼に、私はひたすら感謝した────と同時にとてつもなく申し訳なかった。
こんなに優しい人との約束を反故にしてしまったのかと思うと、罪悪感で押し潰されそうになる。
もっと上手く立ち回ることが出来たのではないかと自責の念に駆られる中、旦那様はポンポンッと軽く背中を叩いてくれた。
「本当に大丈夫だから、安心して。ねっ?」
「で、でも……」
不安げに瞳を揺らす私は、『本当に大丈夫なのか?』と疑問に思う。
憂いげな表情を浮かべる私に、旦那様はフッと笑いかけた。
「あのね、天界には時の流れというものがないんだ。老いもしなければ、若返りもしない。要するに僕達は天界へ来た時の姿のまま、ずっと生活しないといけないってこと。だから、下界で……えっと、人間達の生活している世界で、ある程度成長してもらう必要があったんだ。子供の姿のままだと、何かと不便だからね」
二十歳という条件を出した理由について、旦那様は丁寧に説明してくれた。
「その点、君はもうある程度成長しているようだし、問題ないだろう。むしろ、予定より早く会えて嬉しいくらいだよ」
『だから、本当に気にしないで』と語り、旦那様はニッコリと微笑んだ。
大丈夫の意味を理解した私は、ホッと胸を撫で下ろす。
それなら、良かった……。
約束を破ったことで、旦那様に迷惑を掛けてしまったら、どうしようかと思ったから……。
布越しに伝わってくると体温とラベンダーの香りに安心して、私はポロポロと大粒の涙を流す。
荒波のように激しく揺れる感情を、私は制御出来なかった。
「ごめ、んなさい……ごめんなさいっ!本当は二十歳の誕生日まで生きなきゃいけなかったのに……!!約束を破って、ごめんなさい!!」
「謝らなくて、いいよ。別に怒ってないから。きっと、何か深い事情があったんだろう?」
よしよしと優しく頭を撫でてくれる旦那様は、『大丈夫だから』と何度も言い聞かせる。
聖女とはいえ、突然泣き出した女性を宥めるのは面倒な筈なのに……彼は嫌な顔一つしなかった。
ただ穏やかに微笑み、次から次へと溢れる涙を拭ってくれる。
初対面にも拘わらず、寛大な心で接してくれる彼に、私はひたすら感謝した────と同時にとてつもなく申し訳なかった。
こんなに優しい人との約束を反故にしてしまったのかと思うと、罪悪感で押し潰されそうになる。
もっと上手く立ち回ることが出来たのではないかと自責の念に駆られる中、旦那様はポンポンッと軽く背中を叩いてくれた。
「本当に大丈夫だから、安心して。ねっ?」
「で、でも……」
不安げに瞳を揺らす私は、『本当に大丈夫なのか?』と疑問に思う。
憂いげな表情を浮かべる私に、旦那様はフッと笑いかけた。
「あのね、天界には時の流れというものがないんだ。老いもしなければ、若返りもしない。要するに僕達は天界へ来た時の姿のまま、ずっと生活しないといけないってこと。だから、下界で……えっと、人間達の生活している世界で、ある程度成長してもらう必要があったんだ。子供の姿のままだと、何かと不便だからね」
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「その点、君はもうある程度成長しているようだし、問題ないだろう。むしろ、予定より早く会えて嬉しいくらいだよ」
『だから、本当に気にしないで』と語り、旦那様はニッコリと微笑んだ。
大丈夫の意味を理解した私は、ホッと胸を撫で下ろす。
それなら、良かった……。
約束を破ったことで、旦那様に迷惑を掛けてしまったら、どうしようかと思ったから……。
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