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序章
束の間の平穏は崩れ去る
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ハワードに案内されるまま、トリスタン王子の待つ客室へ足を運んだ私は、室内の異様な雰囲気に首を傾げた。
今日はやけに人が多いわね……それにこの女性は誰かしら?
案内された客室には、トリスタン王子の他に三十人程度の騎士と一人の女性が居た。
その女性は綺麗な金髪とエメラルドの瞳を持っており、とても美しい。美形のトリスタン王子と並んでも、見劣りしなかった。
派手な身なりから、辛うじて貴族だと分かるが……情報に疎い私では、どこの誰なのか特定できない。
この前の仕返しに来たんでしょうけど、この状況は一体……?
「ごきげんよう、トリスタン王子。随分とお連れの方が多いようですが、本日はどういった用件でこちらに?」
客室のソファに座る気にもなれず、私は立ったまま王子に話し掛けた。すると、彼はフッと笑みを漏らす。
こちらを見下すような態度に、若干の怒りと一抹の不安を覚えた。
トリスタン王子のことだから、顔を合わせた途端、暴言を吐いてくると思ったのに……その余裕そうな態度は一体……?
「よぉ、メイヴィス。束の間の平穏は、楽しめたか?」
「質問の意図は分かりかねますが、聖誕祭の準備で忙しかったことを除けば、楽しい毎日だったと思いますわ」
「なら、良かった。それじゃあ────」
そこで一旦言葉を切ると、トリスタン王子はおもむろに立ち上がった。
「────楽しい日々は、今日で終わりだ!偽りの聖女メイヴィス!」
声高らかにそう宣言したトリスタン王子は、ニヤリと口元を歪める。
悪意に満ちた眼差しを前に、私は声すら出せなかった。
えっ?私が偽りの聖女……?トリスタン王子は一体、何を言っているの……?
青天の霹靂とも言うべき事態に、私は動揺を露わにする。
困惑気味に瞬きを繰り返す中、トリスタン王子は構わず言葉を続けた。
「お前は十八年という長い間、我々を欺き、聖女として君臨していた!それは到底許されることではない!よって、お前を聖女の座から引き下ろし、公開処刑に処す!そして、治癒魔法の使い手であるロゼッタ・グラーブ・ジェラルド公爵令嬢を新しい聖女に任命する!」
「えっ……?処刑……?」
突然罪人だと捲し立てられ、聖女を解任された私は呆然と立ち尽くした。
反論する気力すら湧かず、黙り込む私を────トリスタン王子は鼻で笑う。
彼の隣に居る新しい聖女ロゼッタ様も、いい気味だと嘲笑った。
私が聖女じゃないって、どういうこと……?
じゃあ、聖女として過ごした私の十八年間はどうなるの……?あれも全て無駄だったってこと……?私は一体、何のためにここまで……!
「────待って下さい!!それは幾らなんでも、横暴過ぎます!!」
そう言って、私を庇うように前に出たのは────十八年間ずっと傍に居てくれたハワードだった。
今日はやけに人が多いわね……それにこの女性は誰かしら?
案内された客室には、トリスタン王子の他に三十人程度の騎士と一人の女性が居た。
その女性は綺麗な金髪とエメラルドの瞳を持っており、とても美しい。美形のトリスタン王子と並んでも、見劣りしなかった。
派手な身なりから、辛うじて貴族だと分かるが……情報に疎い私では、どこの誰なのか特定できない。
この前の仕返しに来たんでしょうけど、この状況は一体……?
「ごきげんよう、トリスタン王子。随分とお連れの方が多いようですが、本日はどういった用件でこちらに?」
客室のソファに座る気にもなれず、私は立ったまま王子に話し掛けた。すると、彼はフッと笑みを漏らす。
こちらを見下すような態度に、若干の怒りと一抹の不安を覚えた。
トリスタン王子のことだから、顔を合わせた途端、暴言を吐いてくると思ったのに……その余裕そうな態度は一体……?
「よぉ、メイヴィス。束の間の平穏は、楽しめたか?」
「質問の意図は分かりかねますが、聖誕祭の準備で忙しかったことを除けば、楽しい毎日だったと思いますわ」
「なら、良かった。それじゃあ────」
そこで一旦言葉を切ると、トリスタン王子はおもむろに立ち上がった。
「────楽しい日々は、今日で終わりだ!偽りの聖女メイヴィス!」
声高らかにそう宣言したトリスタン王子は、ニヤリと口元を歪める。
悪意に満ちた眼差しを前に、私は声すら出せなかった。
えっ?私が偽りの聖女……?トリスタン王子は一体、何を言っているの……?
青天の霹靂とも言うべき事態に、私は動揺を露わにする。
困惑気味に瞬きを繰り返す中、トリスタン王子は構わず言葉を続けた。
「お前は十八年という長い間、我々を欺き、聖女として君臨していた!それは到底許されることではない!よって、お前を聖女の座から引き下ろし、公開処刑に処す!そして、治癒魔法の使い手であるロゼッタ・グラーブ・ジェラルド公爵令嬢を新しい聖女に任命する!」
「えっ……?処刑……?」
突然罪人だと捲し立てられ、聖女を解任された私は呆然と立ち尽くした。
反論する気力すら湧かず、黙り込む私を────トリスタン王子は鼻で笑う。
彼の隣に居る新しい聖女ロゼッタ様も、いい気味だと嘲笑った。
私が聖女じゃないって、どういうこと……?
じゃあ、聖女として過ごした私の十八年間はどうなるの……?あれも全て無駄だったってこと……?私は一体、何のためにここまで……!
「────待って下さい!!それは幾らなんでも、横暴過ぎます!!」
そう言って、私を庇うように前に出たのは────十八年間ずっと傍に居てくれたハワードだった。
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