『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第七章

第302話『復活《リアム side》』

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◇◆◇◆

 フッと急に意識が浮上し、僕はおもむろに目を開ける。
そして復活を悟る・・・・・と、直ぐさま周囲を見回した。

 あれから、どのくらい経った!?いや、それよりもラミエルは!?まだ消えてないよね!?

 懸念と疑問でいっぱいになりながら、僕は何とか茶髪の彼女を視界に捉える。
『死者蘇生』を使ってからそれほど時間が経っていないのか、ラミエルの体は光にこそ包まれているものの、まだ無事。
HPバーも、まだ満タンからそれほど減っていなかった。
とはいえ、悠長にしていられる暇はない。

『ごめん、リアム!ラミエルの方・・・・・・に集中してたら、魔王が……!』

 脳内に聞き覚えのある……僕の仲間の声が響き、慌てて視線をさまよわせる。
すると────システム・・・・からの妨害を潜り抜け、ラミエルの元へ走る魔王が目に入った。

 ダメだ……!今、ラミエルに危害を加えられたら……!

「魔王を止めてくれ……!このままだと、ラミエルが……!」

 愛用の鞭を手に持ちながら、僕は必死に叫んだ。
その瞬間────ブォンッと風を切る音が響き、魔王の転倒する姿を捉える。
『一体、何が……?』と驚く中、僕はラミエルの前に座り込む黒衣の忍びを目にした。

 ま、まさか……今の一瞬で魔王を蹴り飛ばし、ラミエルに駆け寄ったと言うのかい……?

「規格外にも程がある……」

 畏怖の籠った声でそう言い、僕はタラリと冷や汗を流した。
と同時に────徳正を除く、『虐殺の紅月』のメンバーに取り囲まれる。
それぞれ剣や斧を僕の首筋に突き立て、僅かな殺気を放っていた。

「状況を説明しろ」

 『さもなければ殺す』と言わんばかりに、無名はこちらを睨みつける。
僕が明らかに不審な行動ばかり取っているので、警戒心を抱いているようだ。
『まあ、当然だよね』と思いつつ、僕はそっと両手を挙げる。
君達を害するつもりはない、とでも言うように。

「時間がないから、簡単に言うね。僕達はラミエルによって……回復師ヒーラー限界突破オーバーラインすることで習得出来る『死者蘇生』というスキルによって、復活した」

「「『!?』」」

「それでラミエルは全てのHPを奪われ、あの状態に陥っている」

 出来るだけ簡潔に状況を説明すると、無名達はたじろいだ。
自分達のために命を投げ打ったラミエルに、衝撃を受けているらしい。
カタカタと剣先を震わせながら、彼らはこれでもかというほど青ざめる。

「じゃあ、ラミエルちゃんはもう……」

 ヴィエラは今にも泣きそうな顔で、下を向いた。
その可能性を認めたくないのか、彼女はそっと口を閉じる。
他の者達も一様に押し黙った────ただ一人、無名を除いて。

「リアム、まだ希望はあるんだよな?」

 そう言って、無名は真っ直ぐこちらを見据えた。
首筋にあてがった聖剣を下ろし、『早く言え』と促す。
恐らく、死の間際に放ったあのセリフを覚えているのだろう。

「ああ、もちろん」

 自信ありげに笑う僕は、信用されていることを嬉しく思った。
『まあ、僕の正体を知ったら失望されるだろうけど』と思いつつ、口を開く。

「結論から、言おう。ラミエルは────まだ生きている。現実世界リアルの方も含めてね」

「「『!!』」」

 『本当か!?』と言わんばかりに身を乗り出す彼らに、僕は大きく頷いた。
ようやく目に光が戻った無名以外のメンバーを見つめ、少しばかりホッとする。
と同時に、表情を引き締めた。

「ただ、このままだといずれ死んでしまう。というのも、現在ラミエルの死は誤魔化されている状態なんだ。要するにシステム上はまだ生きていることになっている、という訳。だから、まだ電気ショック……殺害は行われていない」

 君達のときと違って、ラミエルに復活措置はない。
『死者蘇生』を使える、もしくはその可能性があるプレイヤーが傍に居ないから。
きっと死亡判定をされれば、間違いなく殺害される。一度、保留されることもなく……。

 僕達が直ぐに殺害されなかった理由を思い浮かべ、そっと眉尻を下げる。
思った以上に悪すぎる現状を憂いて。

「ラミエルが完全に光の粒子と化し、この場から消えてしまえば誤魔化しは効かなくなる。仮想世界ゲームではもちろん、現実世界リアルでも死ぬことになるだろう」

 延命しているに過ぎないことを告げ、僕は光に包まれるラミエルを見つめた。
────と、ここで徳正が重い腰を上げる。

「で、そうならないためにはどうすればいいの?」

 『まだ手があるんだよね?』と言い、彼は漆黒の瞳をこちらに向けた。
闇より黒く夜より暗いソレを前に、僕は一瞬息が詰まる。
悪寒を覚えるほど大きい感情が、垣間見えたような気がして。
『あれが……ラミエルに向けている気持ち』と心の中で呟き、僕は大きく息を吸い込んだ。

「ラミエルを助ける方法はただ一つ────彼女がこの場から消える前に魔王を倒し、ゲームをクリアすること」

 『ゲームをクリアした時点で殺害システムは停止するから』と説明し、一つ息を吐く。

 本当はデスゲームのために組み込まれたシステムや魔王のAIを停止出来れば、いいんだけど……幾十にも保護プログラが施されてて、間に合わない。
きっと、解読が終わる頃にはラミエルは死んでいるだろう。
だから、多少リスクはあれど魔王を討伐するしかなかった。

 とはいえ、無茶ぶりであることに変わりはない。
『徳正達が嫌がるなら、僕一人でやるしかないね』と考える中、無名達は魔王へ向き直った。
と同時に、

「「『分かった』」」

 と、返事した。本当に一瞬の躊躇いもなく。
それぞれリセットされた復活した武器を手に持ち、魔王討伐に全神経を集中させる。
早くも交戦準備へ入る彼らを前に、僕は目を見開いた。

「えっ?う、疑わないのかい……?」

 『かなり突拍子もないことを言っているのに……』と零す僕に、無名はすかさず

「ああ、どっち道こいつには借りを返さなきゃいけないしな。それに────そんな必死な表情かおで言われたら、疑う気も失せる」

 と、答えた。
フッと笑みを漏らす彼の前で、僕は思わず自身の頬に触れる。
『僕、今どんな表情かおを……』と思案する中、ヴィエラが少し乱暴に髪を掻き上げた。

「それはそれとして────魔王をどうやって倒すか、が問題よね。一応攻略法はあるけど、それだと時間が掛かっちゃうし……」

 『ラミエルちゃんが消滅する前に何とかなるかしら?』と懸念を零し、ヴィエラは唇に力を入れる。
他の者達も、同様に難しい表情を浮かべた。
『どうする?』と視線だけで問い掛け合う彼らを前に、僕は慌てて声を上げる。

「あっ、それなら問題ない!今、僕の仲間が────魔王を弱体化させているから!少なくとも、以前のような大技はもう使えなくなっている筈だ!だから……」

「とにかく、ボコボコにしろってことねー!」

 いち早く状況を理解したシムナは、こちらの話を最後まで聞くことなく動き出した。
元々せっかちな性格であることもあり、我慢出来なかったのだろう。
今回、懸かっているのは他の誰でもないラミエルの命だから。

「あ、ああ!君達のステータスなら、恐らく一発KOはないから全力で叩き潰してほしい!」

「「『了解』」」

 低く硬い声で了承の意を示し、無名達も少し遅れて行動を開始した。
と同時に、風を切る音が木霊する。

 相変わらず、凄いスピードだな……!

 風圧で吹き飛ばされそうになりながら、僕は目を凝らした。
すると、

限界突破オーバーラインスキル────|《魔力無限》発動」

限界突破オーバーラインスキル────|《未来眼》発動」

 ヴィエラとシムナは迷わず、貴重なスキルを発動した。
かと思えば、範囲魔法やスキルを込めた弾丸を躊躇なく放つ。
おかげで、魔王のHPはゴッソリ削れた。
────と、ここで無名も

限界突破オーバーラインスキル────《絶対理性》発動」

 狂戦士バーサーカーにとって、最強のスキルを使用する。
何故なら、このスキルが発動している間は絶対に理性を失わないから。
つまり破壊衝動に呑み込まれ、仲間を傷つける心配がないということ。

狂戦士バーサーカー化、100%・・・・……|《狂剣の舞》」
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