『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
295 / 315
第七章

第294話『四天王《田中 side》』

しおりを挟む
◇◆◇◆

 ────時は少し遡り、妹達と別れた直後のこと。
俺はラジコンで巨大ロボットを操作しつつ、四天王のガミジンとやらと戦っていた。

「お前ら、俺を死ぬ気で守れ!」

「「「はい!」」」

 元気よく返事し、俺の周りに固まる『田中研究所』と『プタハのアトリエ』のギルドメンバー。
それぞれ自前のアイテムや習得した魔法で、ガミジンの特攻を防いでいた。

 この作戦の指揮は、俺だからな。
狙われるのは、織り込み済みだ。
まあ、倒されるつもりは微塵もねぇーけど。

「つーか────俺を狙ってきた時点で、決着はついてんだわ」

 そう言うが早いか、俺は懐からスプレー缶を取り出す。
他の奴らも同じスプレー缶を手に持ち────ガミジン目掛けて、噴射した。妹特性の毒ガスを。

「っ……!?」

 本能的に危機を察知したのか、ガミジンは後ろへ飛び退いた。
────が、もう遅い。
少しでも吸ってしまったら、体は見る見るうちに溶けていく。
そのうち、原型を留められなくなるだろう。

「テメェら、念のためもう一回解毒薬を飲んでおけよ~。効果時間を考えるにまだ大丈夫だと思うが、俺の妹の毒は恐ろしいからな~」

「「「はい!」」」

 間髪容れずに頷いた部下達は、出発前に飲んだ薬をアイテムボックスから取り出した。
かと思えば、直ぐさま一気飲み。
恐らく、目の前のガミジンを見て危機感を抱いたのだろう。
なんせ、奴の体は────早くも液体化しているから。
おかげで、そこは水溜まりになってしまった。

「な、にを……!?私に……毒は……効かない、筈……!」

 ドロドロになってもまだ喋る余裕があるのか、ガミジンは疑問を吐き出した。
困惑の滲んだ声色を前に、俺は『そういや、こいつ毒耐性持っているんだっけ?』と考える。

「なあ、お前の毒耐性ってあれだろ?FROに元々ある毒素を受け付けないってやつ。なら、意味ねぇーよ。だって、俺の妹の毒は────完全新種。本来ここにはない毒素だから」

「!!?」

 ハッと息を呑むガミジンは、『そんな馬鹿な……!』とでも言うように水面を揺らした。
顔などなくても動揺していることが分かる彼を前に、俺はニヤリと笑う。

「いや~、マジで俺の妹天才だわ。将来有望。おかげで大事なロボットを汚さずに済む」

 『これ、最近メンテナンスしたばっかなんだよ』と言い、俺はラジコンをアイテムボックスに放り込んだ。
と同時に、一体のドローンがガミジン目掛けてレーザーを放つ。

「うぎゃぁぁぁぁああああ!」

 まさかの追い討ちを受け、ガミジンは大きく水面を揺らした。
何とかこの場から逃れようと動くが、時すでに遅し────奴は光の粒子と化す。
それを見届け、俺はドローンと巨大ロボットを仕舞った。

「ったく、随分と呆気なかったな」

 ラミエルやセトから予め情報を貰っていたおかげか、大した反撃も受けずに勝ってしまった。
というのも────ガミジンは『プレイヤーに一定ダメージを与えないと、魔法を使わない』という特性があるから。
つまり、それまでずっと肉弾戦ってこと。

 ぶっちゃけ、魔法で遠距離攻撃を繰り出されていたら危なかった。
いくら巨大ロボットとドローンがあるとはいえ、苦戦を強いられていただろう。
ガミジンはゴーレムと違って的が小さいし、高い知能を持っているから。
その上、空も飛べるからな。

 『マジで妹の毒と情報がなきゃ、こんなにあっさり勝てなかった』と、俺は肩の力を抜く。

「まあ、何はともあれ俺達の役目は終わった」

 半ば自分に言い聞かせるようにして呟き、俺は部下へ光魔法を打ち上げるよう指示する。
無事、討伐完了したことを伝えるために。

 さて、他の奴らはどうなったかな?

 空へ打ち上げられた青い光を一瞥し、俺は偵察用のドローンを取り出した。
『これでちょっくら様子を見るか』と思いつつ、映画館並の巨大スクリーンを設置する。
そして、ドローンを飛ばした。

 俺達は基本ガミジンを討伐でき次第、待機を言い渡されているが……念のため、様子見くらいしておこう。
もちろん、魔王戦の方は見ない……というか、見れないけどな。
そっちはトラップだらけみたいだから。

「テメェら、周辺の警戒だけ怠るなよ」

「「「はい!」」」

 ラミエル達の話によれば、四天王と魔王以外敵は居ないらしいが……油断は出来ない。
もし万が一、死人でも出したら大問題だ。
『妹に怒られるし、指揮官を任せてくれた皆に申し訳が立たない』と考える中、偵察用のドローンはセトや『牙』の姿を捉えた。
巨大スクリーンに映った彼らは、険しい表情で四天王のウァサゴと向かい合っている。

 おっ?これはもしや、苦戦中か?

 『助太刀した方がよさげ?』と頭を捻り、俺は偵察用のドローンに取り付けたレーザー光線を準備した。
いつでも加勢出来るよう構えていると、セトは何かを呟く。

「あと……一回?」

 距離的に音声は拾えないため、口の動きから予測しただけだが……恐らく間違いないと思う。
何故なら────後ろに控えていた『牙』や他のギルドメンバーが、表情を変えたから。
もちろん、いい方向に。

 なるほど。多分、セトは敢えてウァサゴの攻撃を受け続けたんだろう。
最も、倒しやすいタイミングを狙うために。

「なら、加勢の必要はなさそうだな」

 『むしろ、邪魔になる』と判断し、俺はレーザー光線に再びロックを掛けた。
静観を決め込む俺の前で、セトは水の矢を受け止める。
と同時に、何かを叫んだ。
その瞬間、『牙』や他のギルドメンバーは一斉にウァサゴへ攻撃を仕掛ける。
当然、ウァサゴは抵抗するものの……肉弾戦を苦手としているのか、全く歯が立たなかった。

「魔法で反撃しようにも、恐らくクールタイム中……セトはこれを狙っていたのか」

 今回、セトの指揮下に入ったメンバーは魔法より腕っぷしの強さが自慢の奴らばかり。
普通に戦っても、距離を詰められなければウァサゴの独壇場となる。
だから一旦防御に徹し、クールタイムへ入るのをひたすら待った。
ラミエル曰く、ウァサゴは後先考えないタイプらしいから。

「まだまだ荒削りの部分はあるが、ガキにしてはよく考えたじゃねぇーか」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...