『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第六章

第283話『素顔』

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 えっ……?はっ!?ラルカさん!?何で!?いつの間に……!?

 黒い球体から守るように立ち塞がるクマの着ぐるみに、私は目を白黒させる。
『よく立っていられるな』と感心する私は、ラルカさんの足元に目を向けた。
タコのような吸盤を張り巡らせる両足は、謎の液体でベトベトになっている。おまけにもう乾いており、しっかり固まっていた。

 これって、もしかして……瞬間接着剤か、何かかな?足元を固定するために、着ぐるみを犠牲するなんて……クマ好きのラルカさんからすれば、苦渋の決断だっただろう。

 『私達のためにそこまで……!』と感動する私は、感謝の言葉を伝えるために顔を上げる────と同時に絶句した。
ブラックホールの影響をもろに受けたせいか、ラルカさんの体……じゃなくて、着ぐるみはところどころ破損している。
引きちぎられた布は為す術もなく、黒い球体に吸い込まれていった。

「ら、ラルカさんの着ぐるみが……」

「こ、ここここここ、このままだと中身が見えちゃいます!!」

「そう言えば、ラルカの素顔って一度も見たことがないわね」

 慌てふためくアラクネさんを他所に、ヴィエラさんは呑気にそう呟く。
緊張感の欠片もない態度は、三馬鹿にそっくりだった。これぞ、『虐殺の紅月』って感じがする。

 まあ、ラルカさんの素顔は私も気になるけど……でも、今はそれどころじゃないでしょ!生きるか死ぬかの瀬戸際で、他人の素顔なんて気にしていられないよ!

 『助かることを最優先に考えて!』と心の中で叫びながら、私は強風に耐える。
────と、ここで着ぐるみの頭部が吹き飛び、ブラックホールは収まった。
『なんというタイミングで……』と絶句する中、ラルカさんの素顔は晒される。
破損した着ぐるみの隙間から見えたのは、おっとり顔の長身イケメンだった。

「えっ?あれ……?ふ、普通に格好いい……?」

「てっきり、キャラデザをミスったのかと思ったのに……非の打ち所のないイケメンね」

「わ、わわわわわわ、わざわざ隠す必要はなさそうですね!」

 口々に感想を言い合う私達は、互いに顔を見合わせる。
『隠すほどの素顔ではない』と考える中、ラルカさんは無言で空中をタップし始めた。
柔らかそうな茶髪を揺らし、大急ぎでいつもの着ぐるみを取り出す。
そして、オレンジ・ジルコンの瞳に焦りを滲ませると、クマの着ぐるみに着替えた。

「えー?もう着替えちゃうのー?別にブサイクって訳じゃないんだから、そのままで居たらー?」

 『せっかく素顔を見れたのに』とボヤくシムナさんは、残念そうに肩を落とす。
でも、着ぐるみを引っ剥がすような暴挙には出なかった。
ちゃんと我慢を覚えたシムナさんに感動する中、徳正さんはやれやれと肩を竦める。

「ラルカにはラルカなりの考えがあるんだから、横槍を入れちゃダメだよ~。イケメンとか、ブサイクとか、関係ないって~。もしかしたら、現実世界リアルの顔をそのままキャラデザに組み込んじゃったのかもしれないし~」

 『無理を言っちゃいけない』と注意し、徳正さんは不満タラタラのシムナさんを諌める。
例え話を織り交ぜた説明に、シムナさんは『それなら、しょうがないね』と理解を示した。
素直に納得する彼を他所に────ラルカさんはフイッと顔を背ける。
居心地悪そうに振る舞う彼を前に、リーダーは呆れ半分に溜め息を零した。

「徳正は変なところで勘が鋭いというか、無意識に他人の地雷を踏み抜いていくよな……」

「えっ……?それって、どういうこと~?」

 『空気の読めない奴』と酷評された徳正さんは、戸惑いを露わにする。
困惑気味に詳細を尋ねる彼に、リーダーは肩を竦めた。

「そのままの意味だ。あとは自分で考えろ。もしくはラルカに聞け」

「何でラルカに……?って、まさか────」

 事情を察した徳正さんはそこで言葉を切ると、恐る恐るラルカさんに目を向けた。

「────マジでゲームのキャラデザを現実世界リアルの顔にしたの……?」

 半信半疑といった様子で、徳正さんは核心をつく。
見事地雷を踏み抜かれたラルカさんは、ビクッと肩を揺らした。
無言のまま視線を逸らす彼は、否定も肯定もしない。でも、その沈黙こそが全ての答えだった。

 うわぁ……徳正さんってば、本当にKYじゃん。まあ、本人に悪気はないんだろうけど……。

 もはや、『ドンマイ』としか言いようがない状況を前に、私は苦笑いする。
追い剥ぎ事件を未然に防ぐつもりが、顔バレ事件に繋がるだなんて、とんだ皮肉だろう。
『空回りとは、まさにこの事だな』と達観しながら、私はどんどん青ざめていく徳正さんの姿を見守った。

「えっ……!?嘘……!?俺っちって、マジで無神経な奴じゃん!ごめん、ラルカ!」

 “影の疾走者”に相応しいハイスピードで、徳正さんはスライディング土下座を決める。
地面に額を擦り付け、きちんと謝罪する姿は立派だった。
でも、ラルカさんの気持ちはなかなか晴れないようで、両腕を組んで沈黙している。

 シリアスな雰囲気をぶち壊すようで申し訳ないけど、『着ぐるみに土下座する忍者』の図って、かなりシュールだね……気を抜いたら、笑っちゃいそう。本人達は至って、真剣なのに……。

 『申し訳ない……』と思いつつも、私は頬を緩めてしまう。
カオスな光景を前に、真顔でいられるほど、私の表情筋は優秀じゃなかった。
『コホンコホン』と何度も咳払いをしながら、笑いそうになるのを必死に堪える。
今にも爆笑しそうな私を他所に、他のメンバーは好き勝手に感想を並べた。

「ゲーム世界で素顔を晒すのは危ないけど、顔面偏差値の高さには感心しちゃうわね」

「お、お顔が大変整っていて、羨ましいです!」

「ねぇーねぇー!どうしたら、ラルカみたいな顔になれるのー?僕もラミエルに『格好いい』って、言われるような顔になりたーい!」

「まあ、とりあえず……パーティーメンバーにリアルの友達リア友が居なくて良かったな、ラルカ」

 ヴィエラさん、アラクネさん、シムナさん、リーダーの四人は仁王立ちするラルカさんをまじまじと見つめる。
既に着ぐるみを装着しているので、素顔は見えないが、気分的にそうしたかったのだろう。
嫌ってほど注目されるラルカさんは一歩後ろへ下がると、アイテムボックスの中からホワイトボードを取り出した。

『少々恥ずかしいが、容姿を褒めて貰えたことは素直に嬉しい。ありがとう。だが、今は────ミミズとの戦いに専念すべきだ。素顔の話はまた今度にしよう』

 長文の書かれたホワイトボードを掲げ、ラルカさんは神龍シェンロンに目を向けた。
現在進行形で放置プレイをくらう神龍シェンロンは、黙ってこちらを見下ろす。
ちょっと不服そうではあるものの、横槍を入れる気はなさそうだ。今のうちにクールタイムを消費してしまおうと、考えたのだろう。何ともずる賢い奴である。
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