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第六章
第282話『危機一髪』
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「ブラックホールを何発撃ってこようと、私達の勝利は揺らぎません。このまま、押し切りましょう」
神龍に動揺を悟られぬよう、私は毅然とした態度でそう言い放つ。
勝利を確信する私に、他のメンバーは『了解!』と元気よく返事した。
一致団結する私達を前に、神龍は『ぐぬぬぬぬ……』と悔しげに顔を歪める。
こちらの動揺を誘って、仲間割れでもさせるつもりだったんだろう。
残念だけど、そう簡単にはいかないよ?私達の結束力は固いんだから。そもそも、神龍に大ダメージを与えた状態で焦りまくるほど、私達は馬鹿じゃないって。こっちは無傷だし。
『比べるまでもなく、こっちが優勢だ』と苦笑し、私は肩を竦めた。
余裕綽々とまでは言わないが、きちんと警戒して戦えば、確実に勝てるだろう。
『あっちはもう手札を出し切ったみたいだし……』と呟き、私は僅かに目を細めた。
「リーダー達は引き続き、攻撃をお願いします。そして、ブラックホールの発動を始めた際は即座に離脱してください」
「分かった」
ブラックホールの予備動作はきちんと覚えているようで、リーダーはコクリと頷いた。
前線メンバーに声を掛けると、軽い身のこなしで足場に飛び乗る。そして、タイミングを見計らい────一斉にジャンプした。
神龍の必死の抵抗も虚しく……全員背中に着地する。
『やめなさい!』と叫ぶ神龍を他所に、リーダー達は攻撃を始めた。
流れ作業のようにブスブスと剣を突き刺す彼らに、慈悲はない。
クールタイムのせいか、神龍は直ぐに抵抗できず……痛みに耐えるしかなかった。
一方的に嬲られる光景は正直あまり好きじゃないが、『これも勝利のためだ』と自分に言い聞かせる。
心を鬼にして、ダンジョンボスの討伐に挑む中────神龍は再び口を開けた。どうやら、ブラックホールのクールタイムがようやく終わったらしい。
「皆さん、直ぐに退避してください!」
『ブラックホールの発動』を知らせる私は、男性陣に離脱するよう呼び掛ける。
こちらの指示に素直に従う彼らは、それぞれ武器を持って地上に降り立った。
出来るだけ神龍と距離を取り、いつでも動けるよう身構える。
そうこうしている内にブラックホールの発動準備が整ったようで、神龍は────我々女性陣に顔を向けた。
『あっ……』と思った時にはもう遅くて……私達目掛けて、黒い球体が放たれる。
う、嘘……!?どうしよう!?逃げようにも、私達には重力操作に耐えられる筋力がない……!結界の外に出たところで、ブラックホールを回避することは難しい……!
迫り来る脅威を前に、私は逃げられない事実を噛み締める。
下手に動けない現状で、どう対応するべきか頭を悩ませた────が、もう時間が無い。
「ど、どうしよう……!?このままじゃ、ブラックホールに飲み込まれちゃう!」
焦るあまり、半狂乱に陥る私は涙目で頭を抱え込んだ。
『何故、こうなることを予想しなかった!?』と喚き散らし、己の無力さを呪う。
最悪の結末を想像し、半泣きになる中────ヴィエラさんに優しく頭を撫でられた。
「落ち着いて、ラミエルちゃん。ここは私が何とかするから」
緊張した面持ちで、前に出るヴィエラさんは頼もしかった。
でも、小刻みに震える彼女の手を見て、泣きそうになる。
『ヴィエラさんだって、怖いんだ』と気づき、凄く申し訳ない気持ちになった。
でも、自力でどうにかできる状況ではないため、ヴィエラさんに対応を任せる。
緊張を解すように深呼吸する彼女は、右手を前に突き出した。
「《プロテクション》」
詠唱を口にするヴィエラさんは、元々ある結界の他にもう一枚結界を展開する。
少し離れた場所に発現した半透明の壁は、黒い球体に衝突した────かと思えば、一瞬にして吹き飛ぶ。
音を立てて砕け散る結界は、跡形もなく消え去った。
なっ……!?嘘でしょう!?中級魔法の結界を意図も簡単に破壊するだなんて……!信じられない!
予想を上回る攻撃力の高さに、私は目を白黒させる。
動揺のあまり絶句する中、ヴィエラさんは慌てて次の魔法を展開した。
「《アイス・バリア》」
属性の問題だと考えているのか、ヴィエラさんは氷の壁を顕現させる。
でも、ブラックホールの威力には敵わないのか、直ぐに割れてしまった。
「っ……!なら、これはどう!?────|《ウインド・メンター》!」
風属性の魔法を展開し、ヴィエラさんは空気の流れに干渉する。
恐らく強風さえ改善出来れば、どうにかなると考えたのだろう。
でも────ブラックホールの巻き起こす風には勝てなかったようで、全く改善されなかった。
「っ……!!こうなったら、もうアレを使うしかないわね……!出し惜しみをしている場合じゃないわ!」
追い詰められたヴィエラさんは、緊張した面持ちで前を見据えた。
元々ある結界にピシッと亀裂が入る中、彼女は一つ息を吐く。
不安や恐怖を必死に抑える彼女は、意を決したように口を開いた。
「境を隔てる壁を使りたまえ────《万物遮断》」
奥の手である最上位魔法を使い、ヴィエラさんは防御を試みる。
元々ある結界が粉々に砕け散る中、純白の壁は現れた。
黒い球体を遮るように、私達の前に建つソレはとても頼もしい。でも────一分も持たずに、ブラックホールへ吸い込まれた。
「えっ……?嘘……?」
頼みの綱だった万物遮断もあっさり破られ、私は絶望に震える。
『もう私達を守るものはないのだ』と理解し、目の前が真っ暗になった。
重力操作の影響を再び受けた私達の体は、床へ押し付けられる。そして、引き摺られるようにブラックホールの元へ向かって行った。
床に爪を立てて、必死に抵抗するものの……悪足掻きにしかならない。
ど、どうしよう……?このままだと、本当に死んでしまうかもしれない……。逃げ出そうにも、重力操作の影響で上手く動けないし……やっぱり、徳正さん達に助けてもらうしかないのかな?でも、強風のせいで徳正さん達の行動範囲も大分制限されている筈……下手に動けば、私達の巻き添えになる可能性だってある。安易に『助けて』とは言えない……。
八方塞がりの状況に歯軋りしながら、私は『一体どうすればいいの?』と頭を悩ませた。
そうこうしている間にも、私達の体は引き摺られていき、黒い球体にどんどん近づいていく。
否が応でも縮まっていく距離に、私はいよいよ死を覚悟した。
もう必要な犠牲だと割り切って、死を受け入れるしかなさそう……。本当はちゃんとゲームをクリアして、現実世界に帰りたかったけど……諦めるしかないみたいね。徳正さんのおかげで、生きたいと思えたのに……結局こうなるのか。
理不尽な現実に打ちのめされ、私はキュッと唇を引き結んだ。
『助けて』の一言を必死に押し殺す中────突然、風の勢いが弱まる。
重力操作の影響は相変わらずだが、これなら何とか踏ん張れそうだ。
『一体、何が起きたのか』と混乱する私は、恐る恐る顔を上げる。
すると、そこには────ショッキングピンクの着ぐるみに身を包むラルカさんの姿があった。
神龍に動揺を悟られぬよう、私は毅然とした態度でそう言い放つ。
勝利を確信する私に、他のメンバーは『了解!』と元気よく返事した。
一致団結する私達を前に、神龍は『ぐぬぬぬぬ……』と悔しげに顔を歪める。
こちらの動揺を誘って、仲間割れでもさせるつもりだったんだろう。
残念だけど、そう簡単にはいかないよ?私達の結束力は固いんだから。そもそも、神龍に大ダメージを与えた状態で焦りまくるほど、私達は馬鹿じゃないって。こっちは無傷だし。
『比べるまでもなく、こっちが優勢だ』と苦笑し、私は肩を竦めた。
余裕綽々とまでは言わないが、きちんと警戒して戦えば、確実に勝てるだろう。
『あっちはもう手札を出し切ったみたいだし……』と呟き、私は僅かに目を細めた。
「リーダー達は引き続き、攻撃をお願いします。そして、ブラックホールの発動を始めた際は即座に離脱してください」
「分かった」
ブラックホールの予備動作はきちんと覚えているようで、リーダーはコクリと頷いた。
前線メンバーに声を掛けると、軽い身のこなしで足場に飛び乗る。そして、タイミングを見計らい────一斉にジャンプした。
神龍の必死の抵抗も虚しく……全員背中に着地する。
『やめなさい!』と叫ぶ神龍を他所に、リーダー達は攻撃を始めた。
流れ作業のようにブスブスと剣を突き刺す彼らに、慈悲はない。
クールタイムのせいか、神龍は直ぐに抵抗できず……痛みに耐えるしかなかった。
一方的に嬲られる光景は正直あまり好きじゃないが、『これも勝利のためだ』と自分に言い聞かせる。
心を鬼にして、ダンジョンボスの討伐に挑む中────神龍は再び口を開けた。どうやら、ブラックホールのクールタイムがようやく終わったらしい。
「皆さん、直ぐに退避してください!」
『ブラックホールの発動』を知らせる私は、男性陣に離脱するよう呼び掛ける。
こちらの指示に素直に従う彼らは、それぞれ武器を持って地上に降り立った。
出来るだけ神龍と距離を取り、いつでも動けるよう身構える。
そうこうしている内にブラックホールの発動準備が整ったようで、神龍は────我々女性陣に顔を向けた。
『あっ……』と思った時にはもう遅くて……私達目掛けて、黒い球体が放たれる。
う、嘘……!?どうしよう!?逃げようにも、私達には重力操作に耐えられる筋力がない……!結界の外に出たところで、ブラックホールを回避することは難しい……!
迫り来る脅威を前に、私は逃げられない事実を噛み締める。
下手に動けない現状で、どう対応するべきか頭を悩ませた────が、もう時間が無い。
「ど、どうしよう……!?このままじゃ、ブラックホールに飲み込まれちゃう!」
焦るあまり、半狂乱に陥る私は涙目で頭を抱え込んだ。
『何故、こうなることを予想しなかった!?』と喚き散らし、己の無力さを呪う。
最悪の結末を想像し、半泣きになる中────ヴィエラさんに優しく頭を撫でられた。
「落ち着いて、ラミエルちゃん。ここは私が何とかするから」
緊張した面持ちで、前に出るヴィエラさんは頼もしかった。
でも、小刻みに震える彼女の手を見て、泣きそうになる。
『ヴィエラさんだって、怖いんだ』と気づき、凄く申し訳ない気持ちになった。
でも、自力でどうにかできる状況ではないため、ヴィエラさんに対応を任せる。
緊張を解すように深呼吸する彼女は、右手を前に突き出した。
「《プロテクション》」
詠唱を口にするヴィエラさんは、元々ある結界の他にもう一枚結界を展開する。
少し離れた場所に発現した半透明の壁は、黒い球体に衝突した────かと思えば、一瞬にして吹き飛ぶ。
音を立てて砕け散る結界は、跡形もなく消え去った。
なっ……!?嘘でしょう!?中級魔法の結界を意図も簡単に破壊するだなんて……!信じられない!
予想を上回る攻撃力の高さに、私は目を白黒させる。
動揺のあまり絶句する中、ヴィエラさんは慌てて次の魔法を展開した。
「《アイス・バリア》」
属性の問題だと考えているのか、ヴィエラさんは氷の壁を顕現させる。
でも、ブラックホールの威力には敵わないのか、直ぐに割れてしまった。
「っ……!なら、これはどう!?────|《ウインド・メンター》!」
風属性の魔法を展開し、ヴィエラさんは空気の流れに干渉する。
恐らく強風さえ改善出来れば、どうにかなると考えたのだろう。
でも────ブラックホールの巻き起こす風には勝てなかったようで、全く改善されなかった。
「っ……!!こうなったら、もうアレを使うしかないわね……!出し惜しみをしている場合じゃないわ!」
追い詰められたヴィエラさんは、緊張した面持ちで前を見据えた。
元々ある結界にピシッと亀裂が入る中、彼女は一つ息を吐く。
不安や恐怖を必死に抑える彼女は、意を決したように口を開いた。
「境を隔てる壁を使りたまえ────《万物遮断》」
奥の手である最上位魔法を使い、ヴィエラさんは防御を試みる。
元々ある結界が粉々に砕け散る中、純白の壁は現れた。
黒い球体を遮るように、私達の前に建つソレはとても頼もしい。でも────一分も持たずに、ブラックホールへ吸い込まれた。
「えっ……?嘘……?」
頼みの綱だった万物遮断もあっさり破られ、私は絶望に震える。
『もう私達を守るものはないのだ』と理解し、目の前が真っ暗になった。
重力操作の影響を再び受けた私達の体は、床へ押し付けられる。そして、引き摺られるようにブラックホールの元へ向かって行った。
床に爪を立てて、必死に抵抗するものの……悪足掻きにしかならない。
ど、どうしよう……?このままだと、本当に死んでしまうかもしれない……。逃げ出そうにも、重力操作の影響で上手く動けないし……やっぱり、徳正さん達に助けてもらうしかないのかな?でも、強風のせいで徳正さん達の行動範囲も大分制限されている筈……下手に動けば、私達の巻き添えになる可能性だってある。安易に『助けて』とは言えない……。
八方塞がりの状況に歯軋りしながら、私は『一体どうすればいいの?』と頭を悩ませた。
そうこうしている間にも、私達の体は引き摺られていき、黒い球体にどんどん近づいていく。
否が応でも縮まっていく距離に、私はいよいよ死を覚悟した。
もう必要な犠牲だと割り切って、死を受け入れるしかなさそう……。本当はちゃんとゲームをクリアして、現実世界に帰りたかったけど……諦めるしかないみたいね。徳正さんのおかげで、生きたいと思えたのに……結局こうなるのか。
理不尽な現実に打ちのめされ、私はキュッと唇を引き結んだ。
『助けて』の一言を必死に押し殺す中────突然、風の勢いが弱まる。
重力操作の影響は相変わらずだが、これなら何とか踏ん張れそうだ。
『一体、何が起きたのか』と混乱する私は、恐る恐る顔を上げる。
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