『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第六章

第251話『それぞれの気持ち』

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「────ということがあり、アヤ達は命を落とした。守れなくて、本当に……本当にすまない」

 一度席を立ち、深々と頭を下げたヘスティアさんは決して言い訳をしなかった。
自分の判断ミスと実力不足が招いた結果だと語り、責任の所在を明らかにする。
我々の罵声も嘆きも悲しみも甘んじて受け入れるつもりなんだろう。

 辛いのはヘスティアさんだって、同じ筈なのに……決して弱音を吐こうとしない。自分の感情を押し殺して、矢面に立つ彼女は見ていて痛々しかった。

 頭を下げたまま動こうとしないヘスティアさんに心を痛める中、同盟メンバーは勇者の暴挙に憤りと恐怖を覚える。
諸刃の剣同然のカインをどう扱えばいいのか、分からない様子だった。

「平気で人を殺す勇者と手を組むなんて、俺は絶対に嫌だぞ……!」

「でも、勇者が居ないとゲーム攻略が……サウスダンジョンで手に入った聖剣エクスカリバーって、勇者しか使えないんでしょう?」

「だからって、人殺しと一緒に行動なんて出来ないわよ!!」

「じゃあ、このまま一生ゲーム世界に閉じ込められてもいいのか!?」

 勇者容認派と勇者排除派の二つに分かれて、同盟メンバーはギャーギャーと言い合いを繰り広げる。
押し問答に近いやり取りを繰り返す彼らは徐々にヒートアップしていった。
このままでは、ゲーム攻略同盟がパックリ二つに割れてしまうかもしれない……。

 人手も物資も少ない状況で仲違いするのはかなり不味い……いや、分裂するのはまだいい。一番不味いのは────プレイヤー同士の抗争が始まること。今回は死者も出ているから、仇討ちだと言って戦争を吹っ掛けてくる可能性があった。
しかも、殺されたプレイヤーには『プタハのアトリエ』や『牙』のギルドマスターが居る。有名人だからという訳じゃないが、カインに激しい怒りを抱く者も少なくないだろう。

 運命の歯車が狂っていく感覚に陥りながら、眉尻を下げる。
未来への不安でいっぱいになる私は『こんな時にアヤさんやアスタルテさんが居れば……』と考えてしまった。
希望を託してくれた彼らに失礼だと分かりつつも、縋らずにはいられない……。
彼らの死を惜しむ分だけ、カインへの憎しみは増していく一方だった。
『私まで冷静さを失う訳にはいかない』と拳を強く握り締めていると、不意に肩を抱き寄せられる。

「いきなり友人や元パーティーメンバーの訃報を聞いて、驚いたよね。辛いなら、このまま帰ろうか?俺っち達の役割はもう終わったようなもんだし」

 無理をしてまで会議に参加する必要はないと言い、徳正さんは私の腕を摩ってくれる。
心配そうにこちらを見つめるセレンディバイトの瞳は優しげだった。

「いえ、大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます。確かにアスタルテさん達の訃報はショックですが、こういう時こそしっかりしませんと。彼らが託してくれた願いを叶えるためにも」

 いつまでも落ち込んでいられないと言い切り、私は明るい笑みを浮かべる。
きっと徳正さんにはただの強がりだと見抜かれているだろうが、ここから逃げ出す気はなかった。
現実から目を逸らさないと宣言した私に、彼はどこか悲しそうに目を伏せる。

「……ラーちゃんはこんな時でも、強くあろうとするんだね。泣いて縋ってくれれば、幾らでも甘やかしてあげるのに……ラーちゃんって、本当に茨の道が大好きだね」

 嫌味とも皮肉とも取れる言葉を言い放ち、黒衣の忍びは私の肩から手を離した。
寂しそうに笑う彼はちょっと不満そうで……いつもより、幼く見える。

「でも、ラーちゃんの選んだ道なら喜んでお供するよ。ラーちゃんは俺っちの全てで、俺っちの全てはラーちゃんのものだから。だから、遠慮なく俺っちを頼ってね」

 ふわりと柔らかい笑みを浮かべる徳正さんは優しく私の頭を撫でてくれた。
胸焼けしそうなほど甘い雰囲気を漂わせる彼に、私はタジタジになってしまう。
溺愛と呼んで差し支えない対応に、私は頷くので精一杯だった。

 と、徳正さんが甘すぎる……砂糖の塊をそのまま食べた時みたい。まあ、実際に砂糖の塊を食べたことはないけど。

 ドッドッドッドッ!と心臓が激しく脈打つ中、進行役のニールさんがわざとらしく咳払いをした。未だに言い合いを続ける同盟メンバーと甘い雰囲気を放つ私達に抗議するかのように……。

「勇者カインの対応については、またおいおい考えるとしよう。それより、今はノースダンジョンの攻略について話し合うべきだ。ここまで来て振り出しに戻れば、それこそファルコ達に申し訳が立たない」

 こんな事をしている場合ではないとニールさんに一喝され、同盟メンバーは口を噤んだ。
ようやく頭が冷えたのか、小さく頭を下げ、謝罪する。
シュンと肩を落とす彼らを前に、ニールさんはヘスティアさんに着席するよう促した。
おずおずといった様子で椅子に腰掛けるヘスティアさんは借りてきた猫のように大人しい。

 何はともあれ、これでようやくノースダンジョン攻略の話が出来る────と安堵していれば、不意にレオンさんの声が聞こえた。

「なあ、ヘスティア────勇者は今、どこにいるんだ?」

 普段の明るい声とは掛け離れた平坦な声に、私は妙な危機感を抱く。
焦燥感にも似た何かを感じながら、レオンさんに目を向ければ────別人のように無表情な彼が居た。
感情の起伏が感じられない彼はまるで人形のようで……心底恐ろしい。

「勇者なら、奥の部屋に閉じ込めてある。身柄もしっかり拘束しているから、逃げる心配もない。殺す訳にはいかないから、危害は加えていないが……」

 軟禁状態だと語るヘスティアさんに、『まあ、それが妥当な判断だよな』と誰もが頷く中、レオンさんは不意に席を立った。

「そうか。それじゃあ────勇者を殺してくる」

 至極当然のようにそう言ってのけたレオンさんは腰にぶら下げた剣を引き抜き、身を翻す。
一瞬冗談かと思ったが、彼の目は本気だった。明確な殺意と狂気がレモンイエローの瞳に宿っている。
それは身の毛もよだつほど恐ろしいものだった。

「ま、待て!レオン!早まるな!」

 ヘスティアさんの悲鳴のような声が木霊し、同盟メンバーは騒然とする。
ギルドマスターの声にも耳を傾けないレオンさんはそのまま足を進めた。
────と、ここで真っ先に正気を取り戻したセトが慌てて彼の前に立ち塞がる。
両手を広げて、通せんぼするセトは今にも泣き出しそうだった。

「レオンさん!落ち着いてください!こんなことをしても、アヤさんは喜びません!」

「っ……!」

「一旦冷静になりましょう!?あのクズと同じレベルに成り下がるつもりですか!?」

 たとえ、仇討ちであってもやっていることはカインと変わらないと、セトは必死に訴える。
思い止まるよう説得する彼の声に、レオンさんはクシャリと顔を歪めた。

「っ……!!お前には分かんないんだ!!最愛の女を失った俺の気持ちが……!!だから、そんなことが言えるんだ!!」

「確かにレオンさんの気持ちを完璧に理解することは出来ません!でも、俺だって……皆だってアヤさんの死は辛いんです!出来ることなら、夢であって欲しいと思っています!」

「ならっ!勇者を殺したい俺の気持ちだって、分かる筈だ!いいから、そこをどけ!」

「嫌です!!絶対にどきません!!」

 平静を失ったレオンさんを目の当たりにしても、セトは一歩も引かなかった。本当は怖くてしょうがないくせに……。
産まれたての子鹿のようにガクガク震え上がる彼はお世辞にも格好いいとは言えない。でも、その心意気だけは実に男らしかった。

 自己中で、自分勝手なセトはもう居ない。仲間のために反論出来るほど、大きく成長した。臆病なのは相変わらずだけど。

「アヤさんの仇を討ちたい気持ちは分かります!でも、そしたら────俺の気持ちはどうなんですか!?憧れの先輩が過ちを犯すところを黙って見ていろって言うんですか!?」

「っ……!!」

「俺はカインのクズっぷりをよく知っています!だからこそ、あいつと同じ過ちは犯して欲しくない!そう願うのはいけないことですか!?」

 真っ直ぐに純粋な気持ちを伝えるセトに、レオンさんは唇を噛み締めた。
何かを堪えるように震える拳をグッと強く握り締める。
激しく揺れる彼の心が透けて見え、何か言おうかと思ったが……やめておいた。

 アヤさんとそっくりの顔をしている私に慰められても辛いだけだろう。変に刺激して、殺意が高まっても困るし、ここは静かにしておいた方がいい。

 黙ってレオンさんの動向を見守っていると、彼はドンッとセトの肩を押した。
踏ん張りきれずに尻もちをついたセトは呆然とした様子で、レオンさんを見上げる。
眉間に深い皺を刻む茶髪の美丈夫は明らかに不機嫌なのに……何故だか泣いているように見えた。

「……チッ!それじゃあ、俺はどうすればいいんだよ……!」

 声色に苛立ちを滲ませるレオンさんは自身の髪の毛を掴み、顔を顰める。
そして、後ろに倒れたセトを跨いで歩みを進めた。この場を立ち去ろうとする彼に、ヘスティアさんはすかさず声を掛ける。

「お、おい!どこへ行く……!?」

「休憩室だ。ちょっと頭を冷やしてくる」

 そう言って、会議室を出て行ったレオンさんは洞窟の出口の方へ足を向けた。
とりあえず、奥の部屋に監禁されているカインを殺しに行くつもりはないようだ。
ホッと胸を撫で下ろす私達は、レオンさんに勇敢に立ち向かったセトに『助かった』と口々にお礼を言う。
気恥しそうにポリポリと頬を掻く紺髪の美丈夫はもそもそと立ち上がった。
席に戻った彼を一瞥し、進行役のニールさんに目を向ける。

「はぁ……今日はもう解散して、明日の朝また集まろう。各自きちんと休養を取り、気持ちの整理をするように」

 このまま話し合いをしても意味が無いと判断したのか、ニールさんは解散を宣言した。
喪にふくすという意味も込めた休養に、誰も反論しない。

「では、今日はここに泊まっていくといい。移動に時間のかかる奴らも居るだろうからな。部屋と食事は用意しよう」

 気を利かせたヘスティアさんの申し出に、同盟メンバーは『ありがとう』と礼を言う。
部屋割について話し合う彼らを一瞥し、私はレオンさんの去っていった方向にチラリと目を向けた。

 レオンさん、大丈夫かな……?かなり思い詰めていたようだけど……。

「セトの気持ちがきちんと届いていれば、いいけど……」

 不安を拭い切れない私はフラグとも言えるセリフをボソッと呟くのだった。
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