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第五章
第208話『昼食会』
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わぁ……!『蒼天のソレーユ』のギルドマスターであるニールさんが、目の前に……!
実物を間近で見たのは、初めてだ!
アイドルでも見たかのように目を輝かせる私は、ニールさんに尊敬の眼差しを送る。
そんな私を置いて、双方のトップは話を始めた。
「昨日ぶりだな、ニール。俺達が酒好きだって、一体誰に聞いたんだ?」
「脳筋ゴリラ……じゃなくて、ヘスティアから聞いた。『うまい酒を飲ませておけば、機嫌が良くなる』とな」
「なるほど、ヘスティアからか……それで、俺達の機嫌を取ろうとする目的は何だ?」
ゆらゆらとグラスを揺らしてワインを眺めるリーダーは、直球で質問を投げかける。
駆け引きもクソもない質問に、ニールさんは少しだけ目を見開いた後、拍子抜けだと言わんばかりに苦笑を浮かべた。
「特に深い意味はない。ただ高レベルプレイヤーの多い『虐殺の紅月』に、媚びを売ったに過ぎん。もし、お前達の実力が本物ならサウスダンジョン攻略で絶対世話になるからな」
「フッ……ということは、この酒は賄賂か」
「もう少し言葉を選んでほしいものだな。せめて、貢ぎ物と言ってくれ」
わざとらしく肩を竦めて答えるニールさんに対し、リーダーは笑みを深める。
と同時に、肩を震わせた。
「クククッ……ヘスティアが認めるだけあって、面白い奴だ。気に入った。もし、『蒼天のソレーユ』のギルドマスターを辞めたくなったらウチに来い。いつでも歓迎してやる」
「そっちこそ、『虐殺の紅月』のパーティーリーダーを辞めたくなったら是非ウチに来てくれ。私の右腕として迎え入れよう」
互いのパーティーやギルドに勧誘し合うリーダーとニールさんは楽しげに笑うと、どちらとでもなく握手を交わした。
女の私にはよく分からないが、二人の間で男の友情が芽生えたらしい。
まあ、とにかく仲良くなったみたいで良かった。
「それじゃあ、私はこれで失礼する。まだ挨拶回りの途中なんでな」
「そうか。それは残念だ。もし、また機会があったらゆっくり話そう」
「ああ、もちろん」
お世辞ではなく本気の対話を望んでいる様子のニールさんは、軽くお辞儀してこの場を離れる。
あっという間に人混みの中へ消えた彼を前に、私は顔を上げた。
「リーダーが初対面の方をパーティーに勧誘する場面なんて、初めて見ました……」
「よっぽど、あの人のことが気に入ったみたいだね~」
『お頭があそこまで誰かと楽しそうに喋っているところなんて、久々に見たな』
「フッ……そうだな、今日は久々に楽しい夜を過ごせそうだ」
鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌なリーダーは、『ちょっと、つまみを取ってくる』と言って身を翻す。
そんな彼の背中を見送り、私達は互いに顔を見合わせた。
『あの様子だと、多分しばらく戻ってこないな』
「まあ、一緒に行動する必要はありませんし、リーダーのことは放っておきましょうか」
「んじゃ、俺っち達も俺っち達で昼食会を楽しもっか~」
────という徳正さんの発言の元、私達はひたすらお酒と料理を楽しんだ。
そのせいか、私は珍しくベロンベロンに酔っ払ってしまう。
アルコールでクラクラする頭を押さえ、壁に寄り掛かった。
体が焼けるみたいに熱い……それにすっごくダルい。
今すぐ、布団に潜り込んで眠りたいなぁ……。
なんて考えていると、こちらへ近づいてくる人影を捉える。
「ラーちゃんってば、見事なまでに酔ってるね~。大丈夫~?歩けそ~?」
グラス片手に歩み寄ってきた徳正さんは、心配そうにこちらを見つめている。
つい先程、ラルカさんと一緒に料理を取りに行った筈なのに……もう戻ってきたらしい。
近くのボーイにグラスを手渡し、徳正さんは私の頬にそっと手を添えた。
徳正さんの手、冷たい……気持ちいい……。
「暑そうだね~。酔い醒ましついでに、バルコニーへ行ってきたら~?風が気持ちいいと思うよ~」
「徳正さんは……?」
「ん~?もちろん、俺っちも後で行くよ~。ボーイさんがお水を持って来てくれたらね~。だから、ラーちゃんは先に行ってて~」
「……ん。分かりました」
徳正さんの言葉にコクンと頷けば、彼は『良い子だね~』と言って頭を撫でてくれる。
それがとても心地よかった。
「バルコニーはここから真っ直ぐ行けば、あるからね~」
「……はい」
扉の反対方向を示す徳正さんの指示に従い、私は覚束無い足取りで歩き出した。
他の人にぶつからないよう気をつけながら、ゆっくり歩を進めていく。
すると、一瞬……視界の端に物凄い早さでテーブルの料理を平らげるクマの着ぐるみが見えた。
が、私は気にせず足を動かす。
────と、ここでゴール地点であるバルコニーが見えてきた。
歩いたせいか、さっきよりずっと体が熱い……早くバルコニーに出て、冷たい風に当たらなくては……。
そんな思いに押されるまま、私は大きな窓からバルコニーへと出た。
サァーッと静かに吹く冷たい風が、私の頬を優しく撫でる。
時刻はもう十八時を回っているというのに、空は相変わらずの青空だった。
ここがもし現実世界だったら、赤く染まっていたのかな……?
きっと凄く綺麗な夕焼けを見れたんだろうなぁ……。
木で出来た手すりに触れ、私はボーッと空を眺める。
『徳正さん、まだかな?』と頭の片隅で考える中、
「────な、何でラミエルがここに……!?」
聞き覚えのある声が、耳を掠めた。
かと思えば、屋根から何かが降ってくる。
その何かは人の形をしており、黒に近い紺色の髪を風に靡かせていた。
と同時に、私は一気に意識が覚醒する。
な、何でセトがここに……!?レオンさんと一緒に居た筈じゃ……!?
────一体これは何の巡り合わせか……私達は再び対面することになった。
実物を間近で見たのは、初めてだ!
アイドルでも見たかのように目を輝かせる私は、ニールさんに尊敬の眼差しを送る。
そんな私を置いて、双方のトップは話を始めた。
「昨日ぶりだな、ニール。俺達が酒好きだって、一体誰に聞いたんだ?」
「脳筋ゴリラ……じゃなくて、ヘスティアから聞いた。『うまい酒を飲ませておけば、機嫌が良くなる』とな」
「なるほど、ヘスティアからか……それで、俺達の機嫌を取ろうとする目的は何だ?」
ゆらゆらとグラスを揺らしてワインを眺めるリーダーは、直球で質問を投げかける。
駆け引きもクソもない質問に、ニールさんは少しだけ目を見開いた後、拍子抜けだと言わんばかりに苦笑を浮かべた。
「特に深い意味はない。ただ高レベルプレイヤーの多い『虐殺の紅月』に、媚びを売ったに過ぎん。もし、お前達の実力が本物ならサウスダンジョン攻略で絶対世話になるからな」
「フッ……ということは、この酒は賄賂か」
「もう少し言葉を選んでほしいものだな。せめて、貢ぎ物と言ってくれ」
わざとらしく肩を竦めて答えるニールさんに対し、リーダーは笑みを深める。
と同時に、肩を震わせた。
「クククッ……ヘスティアが認めるだけあって、面白い奴だ。気に入った。もし、『蒼天のソレーユ』のギルドマスターを辞めたくなったらウチに来い。いつでも歓迎してやる」
「そっちこそ、『虐殺の紅月』のパーティーリーダーを辞めたくなったら是非ウチに来てくれ。私の右腕として迎え入れよう」
互いのパーティーやギルドに勧誘し合うリーダーとニールさんは楽しげに笑うと、どちらとでもなく握手を交わした。
女の私にはよく分からないが、二人の間で男の友情が芽生えたらしい。
まあ、とにかく仲良くなったみたいで良かった。
「それじゃあ、私はこれで失礼する。まだ挨拶回りの途中なんでな」
「そうか。それは残念だ。もし、また機会があったらゆっくり話そう」
「ああ、もちろん」
お世辞ではなく本気の対話を望んでいる様子のニールさんは、軽くお辞儀してこの場を離れる。
あっという間に人混みの中へ消えた彼を前に、私は顔を上げた。
「リーダーが初対面の方をパーティーに勧誘する場面なんて、初めて見ました……」
「よっぽど、あの人のことが気に入ったみたいだね~」
『お頭があそこまで誰かと楽しそうに喋っているところなんて、久々に見たな』
「フッ……そうだな、今日は久々に楽しい夜を過ごせそうだ」
鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌なリーダーは、『ちょっと、つまみを取ってくる』と言って身を翻す。
そんな彼の背中を見送り、私達は互いに顔を見合わせた。
『あの様子だと、多分しばらく戻ってこないな』
「まあ、一緒に行動する必要はありませんし、リーダーのことは放っておきましょうか」
「んじゃ、俺っち達も俺っち達で昼食会を楽しもっか~」
────という徳正さんの発言の元、私達はひたすらお酒と料理を楽しんだ。
そのせいか、私は珍しくベロンベロンに酔っ払ってしまう。
アルコールでクラクラする頭を押さえ、壁に寄り掛かった。
体が焼けるみたいに熱い……それにすっごくダルい。
今すぐ、布団に潜り込んで眠りたいなぁ……。
なんて考えていると、こちらへ近づいてくる人影を捉える。
「ラーちゃんってば、見事なまでに酔ってるね~。大丈夫~?歩けそ~?」
グラス片手に歩み寄ってきた徳正さんは、心配そうにこちらを見つめている。
つい先程、ラルカさんと一緒に料理を取りに行った筈なのに……もう戻ってきたらしい。
近くのボーイにグラスを手渡し、徳正さんは私の頬にそっと手を添えた。
徳正さんの手、冷たい……気持ちいい……。
「暑そうだね~。酔い醒ましついでに、バルコニーへ行ってきたら~?風が気持ちいいと思うよ~」
「徳正さんは……?」
「ん~?もちろん、俺っちも後で行くよ~。ボーイさんがお水を持って来てくれたらね~。だから、ラーちゃんは先に行ってて~」
「……ん。分かりました」
徳正さんの言葉にコクンと頷けば、彼は『良い子だね~』と言って頭を撫でてくれる。
それがとても心地よかった。
「バルコニーはここから真っ直ぐ行けば、あるからね~」
「……はい」
扉の反対方向を示す徳正さんの指示に従い、私は覚束無い足取りで歩き出した。
他の人にぶつからないよう気をつけながら、ゆっくり歩を進めていく。
すると、一瞬……視界の端に物凄い早さでテーブルの料理を平らげるクマの着ぐるみが見えた。
が、私は気にせず足を動かす。
────と、ここでゴール地点であるバルコニーが見えてきた。
歩いたせいか、さっきよりずっと体が熱い……早くバルコニーに出て、冷たい風に当たらなくては……。
そんな思いに押されるまま、私は大きな窓からバルコニーへと出た。
サァーッと静かに吹く冷たい風が、私の頬を優しく撫でる。
時刻はもう十八時を回っているというのに、空は相変わらずの青空だった。
ここがもし現実世界だったら、赤く染まっていたのかな……?
きっと凄く綺麗な夕焼けを見れたんだろうなぁ……。
木で出来た手すりに触れ、私はボーッと空を眺める。
『徳正さん、まだかな?』と頭の片隅で考える中、
「────な、何でラミエルがここに……!?」
聞き覚えのある声が、耳を掠めた。
かと思えば、屋根から何かが降ってくる。
その何かは人の形をしており、黒に近い紺色の髪を風に靡かせていた。
と同時に、私は一気に意識が覚醒する。
な、何でセトがここに……!?レオンさんと一緒に居た筈じゃ……!?
────一体これは何の巡り合わせか……私達は再び対面することになった。
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