『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
上 下
207 / 315
第五章

第206話『予想外の再会』

しおりを挟む
 ────翌日。
ダンジョン攻略に参加することになった私、リーダー、徳正さん、ラルカさんの四人は顔合わせのため、『蒼天のソレーユ』の本拠地まで来ていた。
案内された待合室にて羽を伸ばし、約束の時間を待つ。

 時刻は十時四十七分か……顔合わせという名の昼食会まで、まだまだ時間があるな。
時間に厳しい『蒼天のソレーユ』ギルドマスターのニールさんを怒らせてはいけない、と思って早めに出発したけど……リーダー達の移動速度が速すぎて、予定より早く着いてしまった。

「いやぁ、暇だね~。ここって、娯楽とかないの~?」

『娯楽か……この世界自体がゲーム娯楽だから、ないんじゃないか?』

「え~!暇すぎて、死にそうなんだけど~!」

『まあ、そう言うな。ほら、このクッキー美味しいぞ』

「いや、別にクッキーとか興味な……んぐっ!?」

 ラルカさんに無理やりクッキーをねじ込まれ、徳正さんは一瞬涙目になる。
『んー!』とくぐもった声で何か叫び、何とかクッキーを飲み込むと、急いでティーカップに手を伸ばした。

「ちょ、俺っちのこと殺す気~!?そんな大きいクッキー、一口で食べられる訳ないじゃ~ん!」

『僕は問題なく食べられたぞ?』

「え?ラルカの口、大きすぎな~い!?」

 紅茶を飲んでお口直しをする徳正さんは、一人でバクバクとクッキーを食べるラルカさんに冷ややかな目を向ける。
が、ラルカさんはそんなのお構い無しで用意されたクッキーをあっという間に平らげてしまった。
そして、汚れた口元をパーフェクトクリーンで綺麗にする。

 何か食べる度にパーフェクトクリーンを使うくらいだったら、着ぐるみを脱げば良いのに……まあ、着ぐるみが本体だと言い張るラルカさんは、絶対にそんなことしないだろうけど。

 もはや存在自体がネタとしか思えないクマの着ぐるみを尻目に、私は紅茶を頂く。
────と、ここで突然部屋の扉を開け放たれた。

「────やあ!久しぶりだね!『虐殺の紅月』の皆!」

「ちょっ、リアム!勝手に扉を開けるな!」

 ノックもなしに扉の向こうから現れたのは、白髪アシメの美男子と茶髪の美丈夫だった。
巨大ゴーレム討伐イベントでお世話になった……いや、お世話した(?)二人の美青年の姿に、私は頬を緩める。

 リアムさんとレオンさんは良くも悪くも、以前と全然変わらないね。

「お久しぶりです、リアムさん、レオンさん。お元気そうで何よりです」

「猛獣使いの姫君も、思いのほか元気そうで安心したよ。イーストダンジョン攻略で倒れたと聞いた時は、驚いたからね」

「いや、お前はそれよりも先に言うことがあるだろ!勝手に入ってきてわりぃな、ラミエル……それに他の奴らも。こいつには後できっちり言い聞かせておく」

 マイペースなリアムさんに代わり、謝罪を口にするレオンさんは部下の頭を掴むと無理やり頭を下げさせた。
力任せなレオンさんの対応に慣れているのか、白髪アシメの美男子は『はっはっはっはっ!』と楽しげに笑う。
反省もクソもないリアムさんの態度に、私達は苦笑を浮かべるしかなかった。

 なんか、この光景……妙に既視感を感じるなぁ。確か、前にもこんなことあったよね?

「いえいえ、大丈夫ですよ。別に気にしていないので……それより、お二人もサウスダンジョン攻略チームに加わることになったんですか?私はてっきり、ウエストダンジョン攻略チームに入るのかと……」

 だって、リアムさんもレオンさんも『紅蓮の夜叉』のギルドメンバーだし。
ヘスティアさんがウエストダンジョン攻略の指揮を執るなら、ギルドメンバーの彼らもそっちのチームに入る筈でしょう?
なのに、何故こっちに?

「サウスダンジョン攻略チームの火力が足りないから、こっちに派遣されてきたんだ。『蒼天のソレーユ』はウチと違って、バランスタイプのギルドだからな。他にも、何人かこっちに来ている筈だぞ」

「でも、『虐殺の紅月』のメンバーが四人も居るなら、必要なかったかもしれないね☆」

「なるほど、火力補充のために……ん?ということは、ニールさんがリーダーに参加をお願いした理由って……」

 私はゆっくりと後ろを振り返り、ソファで寛ぐ銀髪の美丈夫へ目を向ける。
すると、こちらの視線に気づいたリーダーが身を起こした。

「俺がニールに参加をお願いされた理由は、そいつらと同じだ。火力が足りないから力を貸してくれ、ってな」

「やはり、そうでしたか」

 予想通りの返答に、私は納得したように頷いた。

 同盟内で『虐殺の紅月』の株が上がって来ているとはいえ、新参者のニールさんがリーダーに参加をお願いするなんておかしいと思ったんだよ。
何も知らないニールさんからすれば、私達は危険人物でしかないからね。

 と、一人考え込んでいると────開いたままの扉から、紺髪こんぱつの美丈夫が駆け込んできた。
『はぁはぁ』と肩で息をする彼には、見覚えがある。
だって、彼は……。

「ちょっ、レオンさん、リアムさん!置いて行かないでくださいよ!俺がどれだけ探し回ったと思って……」

「────あれれ~?誰かと思えば、恩知らずのセト・・くんじゃ~ん。久しぶりだね~?」

「!?」

 皮肉めいた言い回しで挨拶をする徳正さんに、紺髪の美丈夫────改め、セトはこれでもかってくらい目を剥く。
あちらもまさか、私達『虐殺の紅月』がサウスダンジョン攻略に参加するとは思わなかったのだろう。

 『紅蓮の夜叉』の派遣メンバーにセトも混ざっていたとは……これはちょっと予想外だなぁ。
まあ、いつかは再会するだろうと思っていたけど……でも、それにしたってタイミングが悪すぎる。神様は本当に意地悪だ。

 ピリピリとした空気がこの場を支配する中、徳正さんとラルカさんは席を立つ。
そして、私を庇うように前へ出た。

『どの面下げて、ラミエルに会いに来た?殺人未遂の罪人よ』

「……」

「都合の悪いことには答えられないってことか~。セトくんは本当に卑怯だね~。ラーちゃんを突き飛ばした時だって、後ろからだったし~?」

「っ……!!」

 声にならない声を上げるセトは、苦虫を噛み潰したような顔で俯いた。
その子供っぽい反応に、徳正さんとラルカさんは失笑してしまう。
早くも雲行きが怪しくなってきた再会に、私は『はぁ……』と溜め息を零した。
────と、ここでずっと傍観していたリアムさんとレオンさんが口を挟む。

「いまいち状況が掴めないんだが……セトがお前達に何かしたのか?ラミエルを後ろから突き飛ばしたとか、言っていたけど……」

「殺人未遂の罪人とも言っていたね☆本当に何があったんだい?」

 不思議そうに首を傾げるリアムさんとレオンさんに、私は返答を躊躇う。

 あまり仲間割れに繋がりそうなことは、したくないんだけど……『殺人未遂の罪人』とか言っている時点で、もう手遅れか。
今、出来るのはあらぬ誤解を生まないよう正直に話すことだけ。

「分かりました。全てお話します。実は以前、ウエストダンジョンでセトと会った時────」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...