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第五章
第201話『新メンバー《アヤ side》』
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────イーストダンジョン攻略から一週間が経過したある日。
我々攻略メンバーは再び黒曜の洞窟に集まっていた。
各ギルド・パーティーの代表者達がそれぞれ椅子に腰を下ろす中、私はヘスティアさんと共にホワイトボードの前に現れる。
すると、騒がしかった空間が嘘のように静まり返った。
「うむ!皆、揃っているな!では、早速会議を始め────」
「────ヘスティアさん、会議を始める前に皆さんにあの方を紹介してください。会議はそれからです」
「む……?ああ!あいつのことか!そういえば、今日紹介するんだったな!」
頭をガシガシ掻きながら『すっかり忘れていた!』と零すヘスティアさんに、私は思わず苦笑を浮かべる。
こういう忘れっぽいところは昔から変わらないな、と思いながら。
「コホンッ!では、気を取り直して……今日は皆に紹介したい奴が居る。新しく、この同盟に参加するメンバーと考えてもらっていい」
「突然の新メンバー加入に不満を抱いている方も居るかと思いますが、その方とその方がトップを張るギルドは実力・知名度共にトップクラスのため、皆さんも直ぐに納得すると思います」
『諸手を挙げて賛成する』と確信している私に、同盟メンバーは小首を傾げるものの、一先ずこちらからのアクションを待つ。
じっと様子を窺う彼らの前で、ヘスティアさんは両腕を組んだ。
「とりあえず前置きはこれくらいにして、本人に登場してもらおうか────おーい!ニール!」
奥の部屋へ繋がる廊下を振り返り、ヘスティアさんは名前を叫ぶ。
すると、廊下の奥からある一人の男性が現れた。
海に似た真っ青な短髪を揺らし、ホワイトボードの前に立った彼────ニールさんは、カチャッと黒縁メガネを押し上げる。
レンズの向こうで輝く瑠璃色の瞳は、宝石のラピスラズリのようで美しかった。
「なっ……う、嘘だろ……?ニールさんが同盟に加わるなんて……」
「“戦場の支配者”が何でここに……?」
「お、俺、実物初めて見たわ……」
「この人が新メンバーなら、むしろ大歓迎だね……」
ニールさんの姿を見て、ざわつく同盟メンバー達は期待に満ち溢れた表情を浮かべる。
案の定とでも言うべきか、彼の加入に好意的だった。
まあ、当然ですね。だって、彼は────『紅蓮の夜叉』に匹敵する大型ギルドのトップなんですから。
「ヘスティアの紹介に預かり、はせ参じた。私は『蒼天のソレーユ』のギルドマスター ニールだ。これからは私もこの同盟に参加し、皆と協力してゲーム攻略に挑む所存。同じ目標を掲げる同志として、よろしく頼む」
そう言って頭を下げるニールさんに、同盟メンバーは興奮気味に拍手を送った。
まあ、喜ぶのも仕方ありませんね。だって、彼はそれほど凄い人物なんですから。
『蒼天のソレーユ』という大型ギルドのギルドマスターを務めるニールさんの職業は指揮者。
一見なんて事ないような職業に思えるが、これを上手く使いこなせれば集団戦闘がかなり楽になる。
だって、指揮者は演奏者同士の息を合わせ、一つの音楽を作り上げる職業だから。
つまり仲間を演奏者として見立てれば、仲間同士の息を合わせたり、集団複合技を繰り出したりすることが出来るということ。
早い話、仲間同士の連携が深まるのだ。
今の私達は初対面で連携を取らなきゃいけない状況が多いため、ニールさんの力は喉から手が出るほどほしいんですよ。
そんな彼を同盟に参加させるのは、かなり骨が折れましたが……。
だって、ニールさんって私達『紅蓮の夜叉』のことを……というか、ヘスティアさんのことを毛嫌いしているんですもん!
まあ、理知的で気難しいニールさんが脳筋のヘスティアさんを嫌うのは仕方のないことかもしれませんが……。
それに『蒼天のソレーユ』が今まで同盟に参加しなかった原因は、彼の気持ち以外にもう一つある。
それは────『蒼天のソレーユ』内のゴタゴタだ。
ゲーム世界に閉じ込められた当初、『蒼天のソレーユ』のギルド内は荒れに荒れていた。
過剰なくらいギルドメンバーが不安がったり、四方八方へ散らばるメンバーを集めたり、契約していた生産ギルドと連絡を取り合ったりなどなど……でも、ここまではまだ良かった。一番酷かったのは────巨大ゴーレム討伐イベントのときだ。
ようやくギルドメンバーも落ち着きを取り戻し、ギルド内に平穏が戻ったかと思えば、あの訳の分からないイベントが始まり……『蒼天のソレーユ』のギルドメンバーが何人も死んでしまった。
それによりギルドメンバーの不安は爆発し、ニールさんはまた彼らの精神ケアを行う羽目になったのだ。
正直、あの状態の『蒼天のソレーユ』を建て直したニールさんは凄いと思います。
私だったら、絶対途中で心が折れてますよ。
私が密かにニールさんへ尊敬の眼差しを送る中、ヘスティアさんはバンッと長テーブルに両手を置く。
「よし!これで自己紹介も終わったな!では、これより同盟会議を始める!まずはイーストダンジョン攻略の成果報告からだ!────イーストダンジョン攻略の総指揮官ファルコ、報告を頼む!」
「おう!」
『天空の覇者』の二つ名を持つファルコさんは意気揚々と席を立ち、わざとらしく咳払いをする。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「ほな、報告を始めるで~。主な報告内容は三つや。まず、一つ目────イーストダンジョンのクリア報酬は“限界突破ポーション”やった」
我々攻略メンバーは再び黒曜の洞窟に集まっていた。
各ギルド・パーティーの代表者達がそれぞれ椅子に腰を下ろす中、私はヘスティアさんと共にホワイトボードの前に現れる。
すると、騒がしかった空間が嘘のように静まり返った。
「うむ!皆、揃っているな!では、早速会議を始め────」
「────ヘスティアさん、会議を始める前に皆さんにあの方を紹介してください。会議はそれからです」
「む……?ああ!あいつのことか!そういえば、今日紹介するんだったな!」
頭をガシガシ掻きながら『すっかり忘れていた!』と零すヘスティアさんに、私は思わず苦笑を浮かべる。
こういう忘れっぽいところは昔から変わらないな、と思いながら。
「コホンッ!では、気を取り直して……今日は皆に紹介したい奴が居る。新しく、この同盟に参加するメンバーと考えてもらっていい」
「突然の新メンバー加入に不満を抱いている方も居るかと思いますが、その方とその方がトップを張るギルドは実力・知名度共にトップクラスのため、皆さんも直ぐに納得すると思います」
『諸手を挙げて賛成する』と確信している私に、同盟メンバーは小首を傾げるものの、一先ずこちらからのアクションを待つ。
じっと様子を窺う彼らの前で、ヘスティアさんは両腕を組んだ。
「とりあえず前置きはこれくらいにして、本人に登場してもらおうか────おーい!ニール!」
奥の部屋へ繋がる廊下を振り返り、ヘスティアさんは名前を叫ぶ。
すると、廊下の奥からある一人の男性が現れた。
海に似た真っ青な短髪を揺らし、ホワイトボードの前に立った彼────ニールさんは、カチャッと黒縁メガネを押し上げる。
レンズの向こうで輝く瑠璃色の瞳は、宝石のラピスラズリのようで美しかった。
「なっ……う、嘘だろ……?ニールさんが同盟に加わるなんて……」
「“戦場の支配者”が何でここに……?」
「お、俺、実物初めて見たわ……」
「この人が新メンバーなら、むしろ大歓迎だね……」
ニールさんの姿を見て、ざわつく同盟メンバー達は期待に満ち溢れた表情を浮かべる。
案の定とでも言うべきか、彼の加入に好意的だった。
まあ、当然ですね。だって、彼は────『紅蓮の夜叉』に匹敵する大型ギルドのトップなんですから。
「ヘスティアの紹介に預かり、はせ参じた。私は『蒼天のソレーユ』のギルドマスター ニールだ。これからは私もこの同盟に参加し、皆と協力してゲーム攻略に挑む所存。同じ目標を掲げる同志として、よろしく頼む」
そう言って頭を下げるニールさんに、同盟メンバーは興奮気味に拍手を送った。
まあ、喜ぶのも仕方ありませんね。だって、彼はそれほど凄い人物なんですから。
『蒼天のソレーユ』という大型ギルドのギルドマスターを務めるニールさんの職業は指揮者。
一見なんて事ないような職業に思えるが、これを上手く使いこなせれば集団戦闘がかなり楽になる。
だって、指揮者は演奏者同士の息を合わせ、一つの音楽を作り上げる職業だから。
つまり仲間を演奏者として見立てれば、仲間同士の息を合わせたり、集団複合技を繰り出したりすることが出来るということ。
早い話、仲間同士の連携が深まるのだ。
今の私達は初対面で連携を取らなきゃいけない状況が多いため、ニールさんの力は喉から手が出るほどほしいんですよ。
そんな彼を同盟に参加させるのは、かなり骨が折れましたが……。
だって、ニールさんって私達『紅蓮の夜叉』のことを……というか、ヘスティアさんのことを毛嫌いしているんですもん!
まあ、理知的で気難しいニールさんが脳筋のヘスティアさんを嫌うのは仕方のないことかもしれませんが……。
それに『蒼天のソレーユ』が今まで同盟に参加しなかった原因は、彼の気持ち以外にもう一つある。
それは────『蒼天のソレーユ』内のゴタゴタだ。
ゲーム世界に閉じ込められた当初、『蒼天のソレーユ』のギルド内は荒れに荒れていた。
過剰なくらいギルドメンバーが不安がったり、四方八方へ散らばるメンバーを集めたり、契約していた生産ギルドと連絡を取り合ったりなどなど……でも、ここまではまだ良かった。一番酷かったのは────巨大ゴーレム討伐イベントのときだ。
ようやくギルドメンバーも落ち着きを取り戻し、ギルド内に平穏が戻ったかと思えば、あの訳の分からないイベントが始まり……『蒼天のソレーユ』のギルドメンバーが何人も死んでしまった。
それによりギルドメンバーの不安は爆発し、ニールさんはまた彼らの精神ケアを行う羽目になったのだ。
正直、あの状態の『蒼天のソレーユ』を建て直したニールさんは凄いと思います。
私だったら、絶対途中で心が折れてますよ。
私が密かにニールさんへ尊敬の眼差しを送る中、ヘスティアさんはバンッと長テーブルに両手を置く。
「よし!これで自己紹介も終わったな!では、これより同盟会議を始める!まずはイーストダンジョン攻略の成果報告からだ!────イーストダンジョン攻略の総指揮官ファルコ、報告を頼む!」
「おう!」
『天空の覇者』の二つ名を持つファルコさんは意気揚々と席を立ち、わざとらしく咳払いをする。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「ほな、報告を始めるで~。主な報告内容は三つや。まず、一つ目────イーストダンジョンのクリア報酬は“限界突破ポーション”やった」
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